ブックセラーズの映画専門家レビュー一覧

ブックセラーズ

世界最大規模のNYブックフェアの裏側から、本を愛する人々の世界を紐解くドキュメンタリー。老舗書店員やブックディーラー、コレクターらへのインタビューを交え、オルコットが偽名で書いたパルプ小説などの希少本を多数紹介。書籍文化の現状と未来を見つめる。出演は、NY派の作家フラン・レボウィッツ。製作総指揮、及びナレーションを「カフェ・ソサエティ」などのパーカー・ポージーが務める。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    本が消失すれば歴史が消え人間が消える。多民族が住んで「文化の十字路」と呼ばれていたボスニア紛争時に、国会よりどこより最初に攻撃されたのが、国立図書館だった。オスマン時代の500年もの歴史が灰燼に帰した。ブックマーケットやオークション形態のネットによる変化や、メモやノート、エフェメラなど思考の過程など、およそ書籍やその執筆の思考過程における考察などが縦横無尽に展開していく。ボルヘス『砂の本』のように永遠に循環し増幅する世界。本とは身体論だ。

  • フリーライター

    藤木TDC

    希少古書は絵画や工芸品と違って外観だけでは骨董価値が分かりにくく、価値の丁寧な解説が必要になるが、その点を視覚化する演出を怠っており、なぜその本が数千万ドルもするのか理解が難しい。また古書籍商の世界の面白さは客の偏愛趣味と一体で成立するのに客側の描写も手薄だ。私が出版界にいて知人に収集家がいるための先入観かもしれないが、同じ業界なら日本の状況のほうが複雑かつ屈折し、広がりと多様性がある気がする。いずれにせよ大画面で見るほどでもなくテレビ向け。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    古書の売買や個人書店といえば癖が強そうなわりに、いまいち薄味で深部に辿り着かない物足りなさがある。インタビュイーの活動履歴や由来を語らないのは、ネットフリックスのドキュメントでもよく見かける手法なのだが、流行なのだろうか。作り手に欲がなく、経済的背景などの下世話な話題では立ち止まらないお上品さ。希覯本の話で思うのは、結局のところ古書店は中継地点でしかなく、とり憑かれたコレクターとは一線を画すことだ。全体にほどほどクールでありつつ凝ってはいない。

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