Style Warsの映画専門家レビュー一覧

Style Wars

1970~80年代初頭、ニューヨークのサウスブロンクスを舞台に、ヒップホップ黎明期の様子を記録した貴重なドキュメンタリー。ラップやブレイキンなどのカルチャーが生まれ落ちる瞬間をフィルムに収めた。製作から約40年を経て日本国内で劇場初公開。「ワイルド・スタイル」と共に、ヒップホップヘッズのバイブルとして語り継がれてきた作品。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    1982年はグラフィティの最盛期でもあり、MTVが誕生したのが1981年であることも興味深い。グラフィティは書き言葉によるもので、ラップミュージックは話し言葉。そしてブレイキングはボディランゲージ。これは音楽が視覚表現や身体表現と結びつき連動していることを示している。背景にある社会的文脈から自然発生的に生じた文化は必然的で力強く、アートとしての一表現を超越している。当局との鼬ごっこは微笑ましく、どちらも街をこよなく愛していることが伝わる。

  • フリーライター

    藤木TDC

    83年に製作されたヒップホップ・ドキュメントの古典的名作。05年に日本版DVDが発売され数百円でレンタルできるが、若者がたむろする不道徳にまみれた街の映画館でストリートカルチャーを肌に感じながら観賞するなら入場料の価値はあろう。ただし行儀よく対価を払うのでなく、何らかの海賊的行為を模索しつつ見るほうが絶対に楽しい。紀伊國屋書店の広報誌『scripta』20年夏号の都築響一連載の中に本作の背景に関する優れた解説が載っており必読だ。無料だし、電子書籍版もある。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    スプレーアートのグラフィティを中心に取り上げたドキュメンタリーで、黎明期の生々しい現場感がある。側面に勢いあるグラフィティが描かれた電車が通り過ぎていく、圧巻の眺め。オリジンでありつつすでにスタイルは出来上がっていて、貴重な映像資料だ。もちろん上手ければ良くて、下手なのは見苦しいからだめ、バンクシーなら高額といった差別化はおかしい。もう本作の時点で画廊が介入し、グラフィティを将来高値になるからと売買を始めている場面は、気まずさを覚えてしまった。

1 - 3件表示/全3件