17歳の瞳に映る世界の映画専門家レビュー一覧

17歳の瞳に映る世界

デビュー作「ブルックリンの片隅で」がサンダンス映画祭監督賞を獲得、Netflixで配信中の女性監督エリザ・ヒットマンの長篇3作目。第70回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞した、望まない妊娠をした少女の心の旅を追った青春映画。誰もが言葉に出せないままに直面している苦しみや生きづらさ、それでも支えてくれるかけがえのない友人の存在。17歳の少女の瞳を通して世界がみずみずしく活写される。監督のエリザは語る、「この映画を詩的なオデッセイにしたかった」と。主演のシドニー・フラニガンは本作が長篇映画デビューでありながら、等身大の演技が絶賛され、第86回ニューヨーク映画批評家協会主演女優賞、第41回ボストン映画批評家協会主演女優賞など数々の俳優賞を獲得した。
  • 映画評論家

    小野寺系

    ドキュメンタリータッチで描かれる少女の不安で悲痛な旅を、まるで本人になり代わったように体験できる一作。長距離バスから垣間見えるニューヨークの雑踏や、深夜のバスターミナルなどの観光的ではない風景が、まさに17歳の感覚で切り取られ、ひりひりとした痛みまでも伝わってくるような撮影が見事だ。さらに驚かされるのは、劇中で示される田舎と都会の人権感覚の違い。一人の人生の行方が生まれる場所によって決まりかねない米国内の異常な現状を訴えかけるテーマも真摯である。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    親にはもちろん、誰にも知られずに解決したいが、お金がない。17歳の女の子が抱え込んだ容易ならざる現実を核に、セリフの量、カメラの動きも抑え、画面で行われる事実に見る者の感情を最後まで集中させる脚本と演出が秀逸。ニューヨークでのヒロインとカウンセラーの、明け透けな遣りとりは劇中いちばんの見どころ。世界中の若い世代が抱える困難を映すだけでなく、カウンセラーの言う「それがあなたの選択ならどんな理由でもいい」に、やり直しを後押しする健全さをみた。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    望まぬ妊娠をした少女が堕胎手術のために従妹と共に3日間の旅をするだけの飾り気のない物語であるが、最小限のセリフと音楽、人物のクローズアップを多用した演出は彼女たちの不安定な心情を的確に捉えており、バイト先の度が過ぎたセクハラ店長、バスのナンパ青年、電車内の露出狂など、出てくる男性の多くが少女たちを性的に見ているという描写や、彼女に投げかけられるカウンセラーの言葉により、女性が抱える苦悩を静かに、しかし強く訴えている、あまりに映画的な映画である。

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