日常対話の映画専門家レビュー一覧
日常対話
台湾の女性監督が自ら家族を撮影したドキュメンタリー。葬式陣頭を営むアヌは夫の暴力から身を守るため、幼いチェンとその妹を連れて家を飛び出した。チェンは「女性が好きな女性」として奔放に振る舞うアヌへの不信感を募らせ、母娘関係は冷え切ってしまう。製作総指揮は、「黒衣の刺客」のホウ・シャオシェン。第67回ベルリン国際映画祭パノラマ部門テディ賞受賞、第19回台北映画祭最優秀ドキュメンタリー賞受賞、第90回アカデミー賞外国映画賞台湾代表作品。
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非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト
ヴィヴィアン佐藤
カメラは現代の魔術だ。死者の魂を鎮めたり過去を救済するまるで修験道士の役割を果たす。娘はカメラを携え、母親の過去を尋問か取り調べをするように追い詰めていく。敢えて語らなかったこと、衝撃的な内容はさることながら、カメラが映し出すその語り口や態度、沈黙こそが語り得なかったことを雄弁に語り出す。監督による詩情溢れるモノローグは、一個人たちの生き様を超えて、見るもの全てに共感を誘う。そしてかつて住んでいた家屋もまた写真と同等な記憶を喚起する装置となる。
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フリーライター
藤木TDC
製作総指揮・侯孝賢の趣味っぽい台湾の田舎町の風景や大衆演芸にウットリできる人か、自分の家族にカメラを向ける私的記録映画に強い興味がある人、入場対価に満足するのはその2タイプだけでは。レスビアンの母を持った運命や、ほかにもある監督の暗い事情は充分に映画的な重みだが、退屈なアングルとスローテンポで88分は長すぎ。間延びさせたフジテレビ日曜午後ドキュメントの台湾版てな印象。私の場合だいぶ前に両親とも死んで親がテーマの作品に関心薄いせいもあるけれど。
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映画評論家
真魚八重子
夫からのDV被害に耐えかねた母とともに逃げ、貧乏を余儀なくされた逸話に対し、その母が同性愛者で多数の女性と享楽的に過ごす姿は、本作の世界観において気まずさが漂う。実の娘らをないがしろにした動機に、母が自分自身の出産する性=女である部分を否定したかった本能があるのは仕方ない。そういった同情すべき点はあるが、内縁の妻を泣かせ、とある秘密の生贄を差し出した母の行動は和解すべき相手と思えない。作り手である娘の願望に基づいた編集でなければいいが。
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