ジャズ・ロフトの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
上島春彦
ユージン・スミスが宅録マニアだったとは意外。セロニアス・モンクのジャズをオーケストラ化したホール・オーヴァトンの意義は製作者コロンビーがらみで語られることが多いが、彼らのリハーサル音源の存在は貴重きわまる。実況アルバムよりも面白いほどだ。モンクは黒人だが、本作はむしろ当時の白人たちのジャズの方向性を読むのに最適。またズート・シムズの演奏、デイヴィッド・アムラム、カーラ・ブレイといった一流ジャズメンの若き日の回想をたっぷり堪能できる稀有な作品だ。
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映画執筆家
児玉美月
「MINAMATA」でジョニー・デップが演じたユージン・スミスは、正義感が強く粗暴な側面もあるが人間味に溢れた人物として描かれていたように見えたが、このドキュメンタリー映画において垣間見えるユージンの顔は、偏執的で孤高ないかにも芸術家風情の男そのものだった。コラージュされていく白黒写真の数々と大量の録音音声で綴られていく画面の埃っぽさも妙味で、ユージンとミュージシャンたちの逸話の乱れ打ちはジャズ的なセッションの様相も帯びており、引き込まれる。
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映画監督
宮崎大祐
決して不快ではない、NHKのドキュメンタリーのような見やすさ、通俗性を心から楽しめるかどうか。少なくともわたしはこのドキュメンタリーを通じて、どうにも興味が持てなかったユージン・スミスという写真家にわずかばかりの興味を抱くようになった。とはいえそろそろユージン・スミスに関してはお腹がいっぱいかなというタイミングで唐突に現れるセロニアス・モンクの逸話がまるで豪華なデザートのようで、このセッションの様子だけをいつまでも見ていたいとも思った。
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