最後の決闘裁判の映画専門家レビュー一覧

最後の決闘裁判

リドリー・スコット監督が、14世紀末のフランスを舞台に、実際に行われた史上最後の合法的な“決闘裁判”の行方を描く歴史ミステリー。騎士カルージュの妻マルグリットは夫の旧友ル・グリに乱暴されたと訴える。だが、ル・グリは無実を主張。真実は“決闘裁判”に委ねられる。権力が全てだった時代に、国家に逆らい、勇気をもって立ち上がった女性マルグリット、その妻の誇りを守るために地位や名誉、命まで賭けて決闘裁判に挑む夫カルージュ、他方、無実を主張して自らの正義を示すために裁判を受け入れるル・グリ。彼らの壮絶な闘いが壮大なスケールで展開する。原作はエリック・ジェイガーの『決闘裁判 世界を変えた法廷スキャンダル』。脚本は「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」でアカデミー賞脚本賞を受賞したマット・デイモンとベン・アフレックが約25年ぶりに再タッグを組んだ。600年以上も前、世論を二分したこの“決闘裁判”における判決は、今もなお歴史家たちの間で物議を醸している。マルグリットを「フリー・ガイ」のジョディ・カマー、カルージュをマット・デイモン、ル・グリにアダム・ドライバー、カルージュとル・グリの運命を揺さぶる主君ピエール伯をベン・アフレックが演じる。
  • 映画評論家

    上島春彦

    様々な証言の並立からなるレイプ裁判映画。とは言いつつも証言それぞれの「異なり」を強調していないのでじれったい部分がある。マルグリットが何故ホントのことを夫に告げてしまったのか、すらよく分からない。とは言え決闘に至る経緯、問題の決闘場面の念入りさは画面の密度も含めて凄い。馬上槍試合がこういう風に決着する映画は初めて見た。ブ男で無学ですぐキレるマット・デイモンというのも斬新。脚本も自分で書いている(共同)。CG感がほとんどないのに驚く。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    唯一の掌握者である女のもとから離れ、「真実」は男たちの闘いの勝敗に委ねられるが、さらにそれは形骸化し、やがて人々の快楽のためのスペクタクルな道具に過ぎなくなってしまう。時代劇として設定されているからこそ、「真実」など最早どうでもよくなってしまったこの現代社会において、それが現代の問題としてより鮮明に浮かび上がっている。性暴力の被害者女性のパートに移り変わるや、物語の地盤が不安定に揺れ動いたように感じたが、性差のある複数人による脚本と知って納得。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    「羅生門」に少しだけ戦闘シーンが加わっているといえば、おおよそどのような映画かは想像がつくだろう。メイン・キャラクターたちの造形はうまくいっているとは言い難く、章を重ねるごとに浮き彫りにされるのは、それぞれの複雑性ではなく野蛮さだけだ。それでもこの映画からひと時も目を離せないのは、豪奢な衣裳と美術、ヘア・メイクはもちろん、光と影、火と水、煙と風でたえまなく満たされ、偏執的に作り込まれた「画」が映画芸術の絶頂付近にまで達しているからである。

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