ダ・ヴィンチは誰に微笑むの映画専門家レビュー一覧
ダ・ヴィンチは誰に微笑む
レオナルド・ダ・ヴィンチの最後の傑作とされる『サルバトール・ムンディ』、通称“男性版モナ・リザ”にまつわる謎を紐解くドキュメンタリー。2017年、史上最高額となる510億円で落札されたこの名画を巡るアート界のからくり、闇の金銭取引の実態までも暴き出す。監督は、フランス放送局で様々なドキュメンタリー作品を手がけてきたアントワーヌ・ヴィトキーヌ。
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映画評論家
上島春彦
この一件はTVドキュメンタリーで見て知っていたがさらに面目一新した面白さ。見たら誰もがあっけにとられる。ネタバレじゃないから書いてしまうと、何でもない数十万円程度の絵が510億円に化ける、そのカラクリを暴き出す。有名なオークション会社サザビーズとクリスティーズの社風の違いも分かって有意義かも。誠実な美術史家が最初下した鑑定には「ダ・ヴィンチ工房の作」とする見解も暗に含意されているのだが、そこが意図的に抹消され、こういうことになったと分かった。
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映画執筆家
児玉美月
レオナルド・ダ・ヴィンチが実際に描いたかどうかも判然とせぬまま、絵画「サルヴァトール・ムンディ」を巡って美術界の裏側が明かされていくドキュメンタリー映画だが、予め答えのない作品であることがわかっていてもなお、単調な構成と演出のためか、ミステリーの快楽よりも虚空を?むようなモヤモヤ感が強く残ってしまう。親指が二本描かれているなど芸術品が実証的に検証されていく要素には興味をそそられたが、一方で人間同士の醜い利害関係が絡む要素には辟易するばかりだった。
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映画監督
宮崎大祐
取材対象がみなひとくせもふたくせもあり、サスペンス映画といっても差し支えないほどしっかりと練られた構成の上でユーモアたっぷりの映画的演出が冴える。ヨーロッパが時代を重ね築き上げた排他的で自己中心的な「芸術」なるものを、歴史を持たない虚構の帝国アメリカが例の紙片で買い叩き、根こそぎフェイクなジョークとしてしまったのが現代美術史だとするならば、そのスポンサーが有史以来反ヨーロッパとして唾棄されてきた中東やロシアだったというのは当然の話である。
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