アンネ・フランクと旅する日記の映画専門家レビュー一覧
アンネ・フランクと旅する日記
「戦場でワルツを」のアリ・フォルマン監督による『アンネの日記』をモチーフにしたアニメ。博物館にあるオリジナルの『アンネの日記』からアンネの空想の友達キティーが飛び出し、時空を超えたことを知らずにアンネを探して現代のアムステルダムを駆け巡る。第二次世界大戦中に空想の友達キティー宛に日記を綴ったアンネ・フランクの生涯を、キティーの視点で辿っていく。「ウーナ」のルビー・ストークス、「アナスタシア・イン・アメリカ」のエミリー・キャリーらが声優を務める。第74回カンヌ国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門出品作品。
-
米文学・文化研究
冨塚亮平
トリッキーな設定やアニメならではのスケートを用いたアクションの強調、現在パートでの象徴的な乗り物の使い方など、観光資源としてのアンネ像に抗い、苦境にあって彼女が発揮し続けた想像力を新鮮に再提示しようとする狙いはおおむね成功している。しかし、当時の彼女たちが直面した苦難と現代の難民問題を繋ごうとするあまり、作品が最終的にアンネ劇場の場面で批判したはずの説教臭さへと接近してしまったのは残念。恋愛プロットを含め、綺麗に物語をまとめようとしすぎたか。
-
日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰
降矢聡
アンネのイマジナリー・フレンドであるキティーとして日記を擬人化することで、文字通り現代に甦らせるアイデアが実に巧い。アンネ・フランクのわがままな面を含めての人となり描写や、ナチスに捕まるというような劇的な瞬間よりも日々の抑圧を丁寧に描いているところも好感が持てる。そしてなにより、『アンネの日記』というモノやアンネの痕跡よりも、書かれた言葉、つまり行いや身振りこそ守るべきものだという主張は、歴史を考える点でとても示唆的であると思う。
-
文筆業
八幡橙
傍観姿勢で眺めつつ、中盤から一気に心?まれ、揺さぶられてしまった。母に反抗し、クラーク・ゲーブルとの結婚を夢想し、恋に胸弾ませ、時に未来を悲観する。苦境にありつつ夢を捨てない少女の普遍の姿が、日記でありアンネの心の友であった“キティー”の目から、現代の難民問題をも絡め捉えられてゆく。どれだけ月日を経ても人間は変わらないという皮肉、その果てに覗くあえかな希望とキティーがもたらす密室からの解放が、凍った川に走るスケートの軌跡のように深い余韻を刻む。
1 -
3件表示/全3件