少女(2017)の映画専門家レビュー一覧

少女(2017)

一人の少女の失踪を発端に、罪を問われたもう一人の少女にスポットを当て、自殺願望やセクシャリティの問題、いじめや同調圧力など、彼らを取り巻く厳しい現実に正面から向き合う姿を映し出す。主演のヨンヒを務めるのは、ドラマ『ヴィンチェンツォ』のチョン・ヨビン。本作で第56回大鐘賞映画祭をはじめ、数々の新人女優賞を獲得した。また、失踪した少女ギョンミンの母親役に「あなたの顔の前に」などのホン・サンス監督作品でお馴染みのソ・ヨンファ。ヨンヒの交際相手、ハンソル役に「京城学校:消えた少女たち」のコ・ウォニ。原題は「罪深き少女」。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    保身ありきで行動する教師や警察、同様に教室内での立場を敏感に感じ取って立ち回る生徒たちをめぐる、かつての少女漫画やメロドラマを思わせる過剰な演出は、所々くどいと感じなくもないが、規範を何よりも重んじる彼らにとって性的指向のブレがどう映るかを強調する点で決して悪くない。また、あえてしつこく葬式やリハビリの詳細を見せることにも、尺が延びるリスクと見合うだけの意義は感じられる。台詞に頼らず孤独や怒りを表現したヨンヒ役チョン・ヨビンの面構えも印象深い。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    女子生徒が失踪した。川へ身投げした可能性が高いが、遺体は見つかっていない。どうやらその生徒と惹かれあっていたもう一人の女子生徒が何かを知っているらしい。その女生徒を追いながら、学内の集団いじめや親や先生たちの無関心を描き出す。途中で生徒の死亡すらあっさりと認めはするが、最後までなにがどうして起こったのかを明確にすることはない。描かれたことすべてが彼女が死んだ理由でもあり、すべてが見当違いでもあるかのような本作の描く「わからなさ」が印象深い。

  • 文筆業

    八幡橙

    露悪的とも言えるほどに一切の綺麗事を許さない重たい空気が全篇を貫く。一人の少女の失踪を巡り、学校、家庭、警察がどう動き、どう捜索が進んでゆくかの描写が妙にリアルで生々しい。さらに、描かれる女子校の生態には、「女校怪談」シリーズ以上の恐怖を感じた。自分の罪悪感を人に擦り付けて生きる人間の醜悪さをひたすら抉る本作、女子校に置き換えた監督自身の体験が基と知り、未だ自ら昇華し切れぬ思いが鑑賞後のもやもやを生んだのではと推測。チョン・ヨビンの目に震えた。

1 - 3件表示/全3件