擬音 A FOLEY ARTISTの映画専門家レビュー一覧

擬音 A FOLEY ARTIST

台湾の伝説的音響効果技師、フー・ディンイーの半生に迫るドキュメンタリー。様々な道具と技を駆使してあらゆる生の音を作り出す職人、フォーリーアーティストのフーが70本を超える担当作品へ言及。それは、ひとりのスタッフの目を通して見た台湾映画史でもある。劇場公開に先がけ、第30回東京国際映画祭にて『フォーリー・アーティスト』のタイトルで上映。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    フー・ディンイーというおっさんが終始穏やかで好感が持てる。おっさんの生き様を追いながら台湾の映画史も知っていく面白さがある。仕事場は物が溢れてゴミ屋敷のようだ。このゴミを巧みに操りながら音を作っていく様子が、もう職人!って感じでワクワクする。教えるのがヘタと息子にも言われてしまうほど不器用。時代の流れでだんだん仕事が減っていく哀愁がある。途中出てきた映画評論家の家がめちゃくちゃゴミ屋敷で驚いた。彼のゴミはきっと仕事とは関係ないと思う。

  • 文筆家/俳優

    唾蓮みどり

    音が素晴らしい映画はそれだけで十分にいい映画だと思う。映画の音が生まれる瞬間を垣間見ることのできる喜びと興奮に満ち溢れた快作。フォーリーアーティストは職人であると同時に芸術家でもあるのだ。現場で録音された音ではなく、全く別の音を組み合わせてより一層リアルな音を作りあげていく。嘘の方がずっとリアルであるという面白さ。音を作るために道具を探しに行く様子や、継承の問題、歴史的な説明もなされて見応えがある。これぞ映画館で体感すべき映画だ。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    なかなか困難な課題に立ち向かったものだ。台湾映画界が誇るフォーリー・アーティストの胡定一。1975年に中影に入社した大ベテランだが、2015年に退職勧告を受ける。本作は彼の功績を称え、当局の無理解に対抗してその重要性を擁護するものなのだが、この職人の仕事の肝心の部分は門外不出にあたり、見せられるものがきわめて限られているのである。彼が何を使って何の効果音を生み出しているか。その創意や感性や妙技の実態は示されることなく、観客の想像に委ねられる。

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