クリード 過去の逆襲の映画専門家レビュー一覧

クリード 過去の逆襲

「ロッキー」のスピンオフとしてスタートしたボクシング映画「クリード」シリーズ第3弾。世界チャンピオンとなったアドニス・クリード。その前に、彼自身の過去の過ちによって18年の刑務所生活を強いられた幼馴染デイムが現れ、復讐の戦いを挑んでくる。主演のマイケル・B・ジョーダンが、本作で監督に初挑戦している。共演は「アントマン&ワスプ:クアントマニア」のジョナサン・メジャース。
  • 映画評論家

    上島春彦

    主人公の友人があれしきのことで18年も懲役刑を食らうのはヘンだ。ひょっとすると物語設定が変更されたのではないか。例えば邦画「淵に立つ」のような血なまぐさい何か事情があったのでは? その後の虐待養父が出てこないのも不自然だし、そう考えると説明がつくのだが。主人公があそこまで過去を隠したがり、友人に負い目を感じるのもそのせいじゃないのか。また友人がドラゴに行ったのは許されない犯罪で、あれを水に流す主人公も同罪である。生ぬるいハッピー映画で呆れる。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    父に憧れボクシングの魅力に嵌るろう者の娘と過去の罪で服役したのち出所しボクシングで再起を賭けようとする男が一時代を築いたマイケル・B・ジョーダンの傍らに並置され、社会的弱者がいかに闘いうるのかのほうに光を当てるのかと思いきや、鏡に向かって王者は誰かと問いかける描写が象徴するように、最終的には男たちのナルシシズムとマチズモに回帰してゆく。打撃に伴う過剰な鈍い音、スローモーションによって遅延されるアクションが彼らにとっての一発一発の重みを背負う。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    「ロッキー」シリーズと言えばボクシングのリアリズム云々というよりもトレーニング・シーケンスの終わりに訪れるカタルシスがすべてだ。「クリード」シリーズはそこへ新たに黒人音楽の快楽という柱を導入することに成功したと言えるだろう。本作も、ともするとただの八つ当たりの連鎖に見えなくもなく、なかばでバラバラと瓦解していきそうになる稚拙な物語をその二本柱がどうにかつなぎとめている。ボクシングがカンフーアクションっぽくリズムで演出されている点にも現代性が覗く。

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