ランガスタラムの映画専門家レビュー一覧

ランガスタラム

「RRR」のラーム・チャラン主演作。インド南東部、田園地帯のランガスタラム村は、金貸しブーパティによって牛耳られている。難聴のチッティの兄で、ドバイで働いているクマールは、帰省した際に村の有様に心を痛め、村長選挙に立候補することを思い立つ。国内興収21億6千万ルピーで同年公開のテルグ語映画首位を記録。第66回インド国家映画賞最優秀音響賞受賞作品。ラーム・チャランはフィルムフェア賞、サウス、南インド国際映画賞などで主演男優賞を受賞。
  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    「RRR」のラーム・チャラン主演。インドの封建的村社会での民衆一揆を題材としたインド版「レ・ミゼラブル」。典型的インド映画で、大衆演劇的喜怒哀楽が激しい演出に加え、主人公が難聴のため会話がよく聞こえない設定ゆえ、周囲がやたらと大声かつ身振り手振りで説明する、過剰なまでのわかりやすいヴィジュアル・ランゲージで満たされる。インド十八番の高速ダンスは随所に展開されるが、話のシリアスさとの乖離が甚だしい。大仰な演出、わめく出演者たちと唐突なダンスで、観客が文化的難聴になりそう。

  • 俳優、映画監督、プロデューサー

    杉野希妃

    村の搾取風景や一目惚れの曲、大仰なジェスチャーなど既視感満載で前半は若干食傷気味だったが、中盤から社会派の側面が強まり、目が離せなくなる。難聴という設定が主人公の滑稽さと陽気さを際立たせつつ、それによる誤解や聞き漏らしが鍵となり、物語をスリリングにしている。煮えたぎった情念を歌と踊りで昇華させていく様はインド映画ならではで爽快。音楽もアクションもロケーションもとにかくダイナミックだが、いかんせん尺が長すぎる。てんこ盛りすぎると味がぼやけてしまう。

  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    いまどきここまで明確な善悪の対立が見られるのはインド映画だけかもしれない。それにしても殺しすぎではないかと思う一方、主人公一家はカースト下位という設定であり、このあたりのニュアンスを肌でわかっていないと、プロットに表れる対立や葛藤をほんとうの意味で理解するのは難しいのかも。ときに大胆に動き回るカメラが映画を活気づける。そして「RRR」でその上手さが周知となったラーム・チャランのダンスには、やはり圧倒的な華があり、いつまでも見ていたい気持ちになる。

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