先生の白い嘘の映画専門家レビュー一覧

先生の白い嘘

男女の性の格差に切り込んだ鳥飼茜の漫画を「恋わずらいのエリー」の三木康一郎監督が実写化した人間ドラマ。女であることの不平等さから目を背ける教師の美鈴。ある日、親友の美奈子から美鈴を餌食にした早藤と婚約したと聞かされる。そんなある日、衝撃的な性の悩みを打ち明けられ……。ドラマ『透明なゆりかご』『きのう何食べた?』などを手がけてきた安達奈緒子が脚本を担当。男女の性差に対峙する原美鈴を奈緒が、トラウマを抱えた男子生徒・新妻祐希を男性アイドルグループ『HiHi Jets』のメンバー、猪狩蒼弥が、美鈴の親友・美奈子を三吉彩花が、暴力的な裏の顔を持つエリートサラリーマン・早藤を風間俊介が演じる。
  • 文筆家

    和泉萌香 |先生の白い嘘

    強姦のシーンの悪趣味なスローモーション。しょっちゅう流れる音楽もひどいし、夫婦でのセックスシーンも撮り方や演出といい、性加害を扱う話であるのに、プレスの言葉を借りれば「センセーショナルさ」に注力してないか。配給宣伝側からもレビューの際のNGワードやらここはネタバレ注意やらの指定をされていて、もう、配給側もこういったテーマをまっすぐ扱う覚悟がないならやらない方がいい。原作者、鳥飼氏の「性被害を無くしたくてこの漫画を書いた」というコメントに★一つ。

  • フランス文学者

    谷昌親 |先生の白い嘘

    問題作と言われる漫画の映画化であり、むずかしいテーマに逃げずに取り組むその姿勢には敬意を表したいのだが、作品としてどうも咀嚼しきれない。性にかかわる問題を扱っているにもかかわらず、妙に観念的に感じられてしまうのだ。性が人間にとって重要であるのは言うまでもないが、同時に、それだけが人間を形づくっているわけではないだろう。どんな人間にも日常生活があるはずなのに、この映画の作中人物の場合、ひとりひとりの背景が一切見えず、薄っぺらな存在になっている。

  • 映画評論家

    吉田広明 |先生の白い嘘

    自分が現在置かれた弱い立場は女であるせいと思い込んできた主人公が、同様の性被害に遭っていた男子生徒によって、男女問わない権力性こそ悪と気づき、同志として連帯する。衝撃的な題材を扱っているからこそ注目度も高くなるのではあろうが、性差別、権力性への眼差しは、より日常的で繊細なものに精度を上げる時期ではないか(「はちどり」がその方向性を示している)。女性性の肯定にしても、娼婦と聖女の同居という紋切り型イメージに帰着することで果たされるのは疑問だ。 

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