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略歴 / Brief history
【ダーティーヒーローからアメリカ映画の巨人へ】大恐慌の最中、アメリカ、サンフランシスコに生まれる。高校卒業後に朝鮮戦争に従軍、のちに演劇を学んでユニヴァーサル映画と契約を結んだ。1955年、「半漁人の逆襲」で俳優デビューするも不遇の時代を過ごす。やがて58年にスタートしたテレビ西部劇『ローハイド』とセルジオ・レオーネ監督「荒野の用心棒」(64)等のマカロニ・ウェスタンで海外に名を馳せ、「ダーティハリー」(71)などドン・シーゲル監督作品で国内でもトップスターとなった。これに前後する71年、スリラーの「恐怖のメロディ」で監督にも進出。以来、主宰するマルパソ・プロのもとで俳優兼監督として活動を続ける。70年代から80年代にかけて女優ソンドラ・ロックを私的なパートナーとし、86年から2年間はカリフォルニア州カーメルの市長を務めた。監督第2作「荒野のストレンジャー」(72)以降、専ら自身の主演作を年1~2本のペースで監督する。ジャンルとしては「ペイルライダー」(85)等の西部劇と、「ガントレット」(77)等のヒーロー・アクションを中心に、ロードムービーや軍人ドラマ、航空アクションなども手がけ、市長在職中に手がけた伝記映画「バード」(88)では監督のみに徹した。92年になって「許されざる者」がアカデミー賞作品賞・監督賞をはじめ多々の映画賞に輝き、映画作家としての地位を確立。その後は監督専念作を交えて様々なジャンルで文芸性の高い作品を手がけ、「ミリオンダラー・ベイビー」(04)は再度アカデミー賞を獲得、74歳最高齢の監督賞受賞記録を作った。【遅れてきた巨匠】「許されざる者」はセルジオ・レオーネとドン・シーゲルの二人に捧げられている。共に師と仰いだ先達であり、中期までの監督作は、彼らの系譜を受け継ぐ作品とされている。それらは一部で(特に日本やヨーロッパで) 評価され、一部で(特にアメリカで) 批判され、多くが自身の主演する小規模な娯楽作品であった点も影響し、総体として“スター俳優の余技”と見なされた。監督第16作にして各方面から絶賛された「許されざる者」は“最後の西部劇”と謳ったが、黄金期ではなくマカロニ・ウェスタン以降の西部劇の系譜にあり、イーストウッドの作家性に変化はない。多くの作品で、ダーティーなヒーローの贖罪のモチーフに貫かれることが指摘されている。日本でもその評価は近年さらに高く、「許されざる者」、「スペース・カウボーイ」(00)以降、多くの監督作品がキネマ旬報ベスト・テン1位に選出されている。
クリント・イーストウッドの関連作品 / Related Work
作品情報を見る
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クライ・マッチョ
制作年: 2021クリント・イーストウッド監督デビュー50周年記念作品。テキサスで孤独に生きるロデオ界スターだったマイクは、元雇い主に「別れた妻から息子ラフォを取り戻してほしい」と頼まれ、メキシコへ。荒れた生活を送るラフォを見つけたマイクは、共に米国を目指すが。主演のイーストウッドと共演するラフォ役に大抜擢されたのは、メキシコの新星エドゥアルド・ミネット。75点 -
モリコーネ 映画が恋した音楽家
制作年: 20212020年に逝去した映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネの軌跡をたどるドキュメンタリー。彼が手掛けた数々の作品の名場面やワールドコンサートツアーの模様を交え、モリコーネ本人ほか70人以上の著名人のインタビューによって、彼の仕事術の秘密が明かされてゆく。モリコーネの弟子であり親友でもある、「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督が5年以上にわたる密着取材を敢行し完成させた。 -
リチャード・ジュエル
制作年: 2019クリント・イーストウッドがアトランタオリンピック爆破テロ事件の真実に迫ったドラマ。1996年.オリンピック中に爆破テロが発生。容疑者として逮捕された爆弾の第一発見者リチャード・ジュエルを救うため、弁護士のワトソン・ブライアントが立ち上がる。出演は「スリー・ビルボード」のサム・ロックウェル、「ブラック・クランズマン」のポール・ウォルター・ハウザー。80点 -
運び屋
制作年: 2018「グラン・トリノ」以来、10年ぶりにクリント・イーストウッドが監督・主演を兼任した作品。90歳で孤独な生活を送る男アール・ストーンは、クルマの運転さえすればいいという仕事を持ちかけられる。だがそれは、メキシコの麻薬カルテルの運び屋だった。共演は「アリー/ スター誕生」のブラッドリー・クーパー、「30年後の同窓会」のローレンス・フィッシュバーン。82点 -
15時17分、パリ行き
制作年: 2018クリント・イーストウッドが、2005年にパリ行きの特急列車内で起きた“タリス銃乱射事件”を映画化。8月21日、高速列車内でイスラム過激派の男が突如、自動小銃を発砲。混乱の中、犯人に立ち向かったのは、旅行中のアメリカ人の若者3人だった。主人公の若者3人組を本人が演じ、事件が起きた場所で撮影を行なうというリアリティへのこだわりが見もの。68点 -
サッドヒルを掘り返せ
制作年: 2017およそ49年もの間、人知れず眠り続けていた「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」のロケ地サッドヒルを復元しようとする有志たちを追ったドキュメンタリー。スタッフやキャストによる撮影当時のエピソードを交え、奇跡的ともいえる一大プロジェクトの顛末に迫る。監督は、本作が初長編作品となるスペイン出身のギレルモ・デ・オリベイラ。出演は「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」の音楽を担当したエンニオ・モリコーネ、主人公ジョーを演じたクリント・イーストウッド、編集を務めたエウヘニオ・アラビソ、映画歴史家のクリストファー・フレイリング、映画監督のアレックス・デ・ラ・イグレシア、ジョー・ダンテ、ヘヴィメタルバンド『メタリカ』のジェイムズ・ヘットフィールド、「サンゲリア」などのキャメラマン、セルジオ・サルヴァティ。第30回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門にて上映。80点