ピーター・グリーナウェイ

  • 出身地:イギリス、ウェールズ州ニューポート
  • 生年月日:1942年4月5日

略歴 / Brief history

【90年代にブームを引き起こした異才】イギリス、ウェールズ州ニューポート出身。幼年期に両親の地元であるロンドンへ移り住み、少年時代は画家を志す。ウォルサムストン美術大学で絵画を学び、22歳でロンドンのローズ・ギャラリーで個展を開く。1965年に中央情報局へ入社し、多くのドキュメンタリーを手がける。翌年、5分間の実験映画“Train”を完成。数字やアルファベットを組み込んだ実験的な短編映画を自主製作するかたわら、絵を描き、小説や絵本を執筆する。1978年、“A Walk Through H”でシカゴ映画祭シルヴァー・ヒューゴー賞を受賞。80年に“The Falls”でBFI(ブリティッシュ・フィルム・インスティテュート)最優秀作品賞を獲得。BFIとチャンネル4より資金提供を受け、初の長編劇映画「英国式庭園殺人事件」(82)を発表。続いて「ZOO」(85)、「建築家の腹」(87)と意欲作を連発し、「数に溺れて」(88)でカンヌ国際映画祭の芸術貢献賞を受賞。翌89年の「コックと泥棒、その妻と愛人」が映画界に強烈な衝撃を与え、一大センセーションを巻き起こす。以後、シェイクスピアの戯曲を材にした「プロスペローの本」(91)、劇中劇の二重構造をとった宗教劇「ベイビー・オブ・マコン」(93)、清少納言の『枕草子』を独自に解釈した「ピーター・グリーナウェイの枕草子」(96)、フェリーニの「8 1/2」にオマージュを捧げた「8 1/2の女たち」(99) を発表し、90年代の芸術映画の世界に“グリーナウェイ・ブーム”を生み出す。【ナイマンの曲とともに独自の映画世界を確立】左右対称のシンメトリーな画面づくりへのこだわり、数字や言葉遊びを駆使した脚本、横溢するグロテスク趣味、食欲・性欲・暴力に充ちた物語などで、他に類をみない独自の映画世界を確立。また、デザイナーのジャン= ポール・ゴルチエやワダエミ、モダン・バレエの舞踏家カリーヌ・サポルタや書家の屋良有希など、幅広い分野で活躍する芸術家と組むことが多い。とりわけ作曲家のマイケル・ナイマンとは初期の実験映画時代からの仲で、“A Walk~”をはじめ、91年の「プロスペローの本」までほとんどの作品をナイマンが担当。グリーナウェイ人気とともにナイマンもまた注目を集め、映画音楽界の重鎮となる。しかしグリーナウェイはナイマンとのコンビ解消後はかつての勢いが失速し、2000年代に入ってからは日本未公開作が続き、「レンブラントの夜警」(07)で8年ぶりに新作が日本で劇場公開された。近年は空間芸術のインスタレーション作品や新作オペラ『フェルメールへの手紙』『コロンブス』を発表するなど、映画以外の分野でも旺盛に活動している。

ピーター・グリーナウェイの関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • レンブラントの夜警

    制作年: 2007
    肖像画家レンブラントはなぜ転落の人生を歩んだのか。その謎を解く鍵は『夜警』という絵画に隠れていた。監督・脚本は「コックと泥棒、その妻と愛人」のピーター・グリーナウェイ。出演は「銀河ヒッチハイク・ガイド」のマーティン・フリーマン、「プルートで朝食を」のエヴァ・バーシッスル、「ラスト・オブ・モヒカン」のジョディ・メイ。
  • ピーター・グリーナウェイ 8 1/2の女たち

    制作年: 1999
    悪女たちが男を滅ぼす様を描いた映像絵巻。監督・脚本は「ピーター・グリーナウェイの枕草子」のピーター・グリーナウェイ。美術・衣裳は「御法度」のワダ・エミ。出演は「マネートレーダー 銀行崩壊」のジョン・スタンディング、「アンダー・ザ・スキン」のマシュー・デラメェア、「ピーター・グリーナウェイの枕草子」のヴィヴィアン・ウー、「憂欝な楽園」の伊能静、「バレット・バレエ」の真野きりな、「シックス・センス」のトニー・コレット、「バタフライ・キス」のアマンダ・プラマー、「硝子の塔」のポリー・ウォーカーほか。
  • ピーター・グリーナウェイの枕草子

    制作年: 1996
    日本の平安時代の古典、清少納言の随筆『枕草子』をモチーフに織りなされる、異色の映像絵巻。監督・脚本は「プロスペローの本」「ベイビー・オブ・マコン」などの鬼才ピーター・グリーナウェイで、本作では書・カリグラフィーを全編に導入し、独特の映像表現を展開している。製作はグリーナウェイと「ZOO」以降コンビを組むキース・カサンダー。製作総指揮はテリー・グリンウッド、デニス・ウィッグマン、ジャン=ルイ・ピエル。撮影は「ZOO」以降のパートナー、サッシャ・ヴィエルニー。音楽は前作「ベイビー・オブ・マコン」に続き、グリーナウェイが自由に選曲、日本の場面で雅楽や中国歌謡、軍歌などが流れるのをはじめ、アフガニスタン・トラッド、ゲッシュ・パティ、U2ほか、種々雑多な曲が使用される。美術・衣裳デザインは「プロスペローの本」でグリーナウェイと組んだワダ・エミ。編集はグリーナウェイとクリス・ワイアット、衣裳は「ダメージ」に参加した立野浩二、近未来デザインはタナカノリユキ、インテリア・コーディネイトはアンドレ・プットマン、書・カリグラフィーはブロディ・ノイエンシュヴァンダーと屋良由希。主演は「ラスト・エンペラー」「ジョイ・ラック・クラブ」などのヴィヴィアン・ウー。共演は「GONIN2」の緒形拳、ピーター・ブルック劇団の常連である舞台の名優オイダ・ヨシ、「上海バンスキング」の吉田日出子、「Emma エマ」のユアン・マクレガー、「800 TWO LAP RUNNERS」の河合みわこほか。
  • ベイビー・オブ・マコン

    制作年: 1993
    バロック最盛期の一七世紀イタリアを舞台に、ルネサンス時代の名家・メディチ家の末裔が、目前で演じられる宗教劇の舞台に乱入し、虚構(演劇)と現実(観客席)の間を往復するさまをつづった作品。監督・脚本は「プロスペローの本」のピーター・グリーナウェイ。製作は「ルーバ」のキース・カサンダー。撮影はグリーナウェイとは「ZOO」以来の全作品を手がけているサッシャ・ヴィエルニー。音楽監修はダニエル・ロイスが務め、ヘンリー・パーセル、ジローラモ・フレスコバルディなど、当時の作曲家による既成曲が使用されている。主演は「ヤング・シャーロック ピラミッドの謎」のジョナサン・レイシー。共演は「嵐が丘(1992)」のレイフ・ファインズ、「シャイニング」のフィリップ・ストーン、ジュリア・オーモンドら。
    40
  • プロスペローの本

    制作年: 1991
    17世紀、ミラノ大公プロスペローの復讐譚を描く、ウィリアム・シェークスピア最後の戯曲『テンペスト(あらし)』の映画化。脚色・監督は「コックと泥棒、その妻と愛人」のピーター・グリーナウェイ、撮影はサッシャ・ヴィエルニー、音楽はマイケル・ナイマンが担当。出演はジョン・ギールグッド、マイケル・クラークほか。
    80
  • コックと泥棒、その妻と愛人

    制作年: 1989
    あるレストランを舞台に、4人の男女の10日間の出来事をアイロニカルに描く人間ドラマ。製作はキース・カサンダー、監督、脚本は「数に溺れて」のピーター・グリーナウェイ、撮影はサッシャ・ヴィエルニー、音楽はマイケル・ナイマンが担当。出演はリシャール・ボーランジェ、ヘレン・ミレンほか。