富田靖子 トミタヤスコ

  • 出身地:福岡県糟屋郡志免町
  • 生年月日:1969/02/27

略歴 / Brief history

福岡県糟屋郡志免町の生まれ。神奈川県立港北高校卒業。1983年、史上最年少の文藝賞受賞者として話題になった堀田あけみの小説を映画化した今関あきよし監督「アイコ十六歳」のオーディションで、12万7000人の応募者の中から見事に合格し、14歳にして映画主演デビューを果たす。この時のオーディションでは松下由樹、宮崎萬純らもデビューを飾っている。弓道部に所属する平凡な女子高生・三田アイコのひと夏の青春を描いた本作で、初演技とは思えない堂々たる主演ぶりを披露すると同時に、元気いっぱいのみずみずしい魅力を発揮する。翌84年には朝間義隆監督「ときめき海岸物語」にも主演。確かな演技力も評判となり、たちまちアイドル女優の座に躍り出る。85年、「アイコ十六歳」で製作総指揮を担当した大林宣彦監督の尾道三部作第3弾「さびしんぼう」に主演。主人公が思いを寄せる古風な女子高生・橘百合子と、彼の前にピエロのような恰好で突然現れるへんてこりんな女の子“さびしんぼう”の二役を演じ分ける。思春期の恋の切なさをノスタルジックに描いた本作は、幅広い支持を獲得。富田は主題歌も担当しているが、80年代には女優と並行して歌手活動も行ない、出演作の主題歌を歌うことも多かった。なお本作以降、本名の“冨田”から芸名を“富田”に変更している。同年12月には再び大林監督の「姉妹坂」に助演しており、デビューから数年は大林の下で育てられたと言ってもいいだろう。最初の転機が訪れたのは87年。CMディレクターとして数々の話題作を手がけてきた市川準の映画監督デビュー作「BU・SU」に主演する。本作で演じたのは、屈折した性格から故郷を逃げ出した無口な芸者見習いの森下麦子役。それまでの快活でボーイッシュなイメージを覆す役柄を見事に演じ切り、女優としての懐の深さを証明した。同作でヨコハマ映画祭主演女優賞を受賞。90年代の日本映画界を支えた市川監督の船出を成功に導く。その後も就職活動中の短大生を演じた太田圭監督「ほんの5g」88や、カメラマン志望の女子大生を演じた西河克己監督「マイフェニックス」89などの主演作で、等身大の若者を伸び伸びと演じてキャリアを重ねる。94年には「釣りバカ日誌スペシャル」でレギュラーキャストの谷啓演じる佐々木課長の娘役でゲスト出演し、ドタバタ喜劇に華を添えた。90年代に入ってからは年下世代の台頭もあって、やや鳴りを潜めていたが、95年、再び世間の注目を集める。芥川龍之介の小説を原作にした香港との合作映画「南京の基督」である。香港の人気スター、レオン・カーフェイと共演した本作では、無垢な心で神の存在を信じるが病に倒れ、やがて精神が破綻してゆく娼婦・宗金花という難役を熱演。ヌードも辞さず、体当たりで官能的なシーンに挑戦して清純派のイメージから脱却した。東京国際映画祭最優秀女優賞も受賞し、演技派女優としての実力と存在感を改めてアピールする。90年代後半は、吉本ばなな原作の香港との合作映画「kitchen/キッチン」97や、乃南アサの小説を大森一樹監督が映画化したサスペンス「ジューンブライド・6月19日の花嫁」98に主演するなど活躍を続ける。30代に突入した2000年以降はやや落ち着きを見せ、「下弦の月/ラスト・クォーター」04や「君に届け」10の主人公の母親役、「ロード88・出会い路、四国へ」04の医師役など、若い世代が演じる主人公を見守る立場の役柄が増えている。私生活で、テレビのバラエティ番組で共演したダンスインストラクターの男性と07年に結婚し、一児の母になったことも、そういった変化と無関係ではないだろう。ここまで、もっぱら映画を中心に活躍してきた富田だが、テレビドラマにもデビュー直後からコンスタントに出演を重ねている。ドラマ初出演は85年のフジテレビ『一休さん』。自身の個性を活かして、男の子である“一休さん”を溌剌と演じた。その後も、石坂浩二演出の日本テレビ『なんて素敵にジャパネスク』86、同局の年末時代劇スペシャル『白虎隊』86、連ドラ初主演となったテレビ朝日『痛快!婦警候補生・やるっきゃないモン!』87、原爆投下前日の長崎の一家族の様子を描き、芸術祭作品賞を受賞した『明日/1945年8月8日・長崎』88、一色伸幸脚本のNHK『ネットワークベイビー』90、織田裕二の恋人役を演じたフジテレビ『素晴らしきかな人生』93などで活躍。97年にはNHK大河ドラマ『毛利元就』に、中村橋之助演じる元就の正室・美伊の方役で出演している。ほか、主なテレビドラマの出演作に、TBS『木曜日の食卓』92、『昔の男』01、NHK『さくら家の人々』92、『風になれ鳥になれ』97、『なごや千客万来』00、『トキオ・父への伝言』04、『チャレンジド』09、『江・姫たちの戦国』11、フジテレビ『美味(おい)しんぼ』97~99、テレビ東京『鈴木先生』11などがある。ここ最近は同年代の女優に比べて、やや目立たなくなってはいるものの、テレビ朝日『853/刑事・加茂伸之介』10では寺脇康文演じる加茂伸之介と対立する刑事・佐々木雪子を演じるなど、主演級での活躍もある。まだまだ日本映画を支える活躍を期待したい。

富田靖子の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!

    制作年: 2025
    「LINEマンガ」で連載された練馬ジムの同名漫画を原作に、Z世代を中心に好評を博した深夜ドラマを映画化。世代間のギャップやジェンダーへの理解を、とまどいながらもアップデートしていく「おっさん」こと沖田誠を原田泰造が再び演じ、ドラマのキャスト・スタッフがそのまま再結集した。共演は中島颯太(FANTASTICS)、城桧吏、大原梓、東啓介、松下由樹、富田靖子。
  • シサム

    制作年: 2024
    寛一郎主演で、江戸時代前期の北海道を舞台に贈る時代劇。アイヌとの交易品を主な収入源とする松前藩藩士の息子・孝二郎は、使用人の善助に殺された兄・栄之助の敵討ちを誓い、善助を追って蝦夷地へ。その頃、蝦夷地では和人への反発の動きが強まっていた。共演は「Winny」の三浦貴大、「レジェンド&バタフライ」の和田正人。「世界は今日から君のもの」の尾崎将也が脚本を手掛け、「劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日」の中尾浩之が監督を務めた。
  • 映画 めんたいぴりり パンジーの花

    制作年: 2023
    日本で初めて明太子を売り出した『ふくや』創業者の実話を基にした人情ドラマ第2弾。福岡の下町、中洲の一角にある食料品店『ふくのや』。店主の海野俊之と妻・千代子、従業員たちが今日も忙しく働いている。そんな折、ふくのやの店先にタコ焼きの屋台が現れ……。出演は前作に続き、博多華丸、富田靖子、斉藤優。ゲストに「武士の献立」の余貴美子、HKT48の地頭江音々、「小さな恋のうた」の森永悠希を迎え、前作同様、江口カンが監督を務める。2023年6月2日より九州先行公開。
  • 線は、僕を描く

    制作年: 2022
    2019年TBS「王様のブランチ」BOOK大賞を受賞した砥上裕將の青春芸術小説を、「ちはやふる」シリーズの小泉徳宏監督ら製作チームが映画化。深い悲しみの中にあった霜介は、水墨画と出会い、巨匠・篠田湖山の元で学ぶうちに、彼の止まっていた時間が動き出す。日本を代表する水墨画家・小林東雲が水墨画監修を担当。水墨画に魅了される大学生・青山霜介を「アキラとあきら」の横浜流星が、霜介を弟子として迎え入れる篠田湖山を「葛城事件」の三浦友和が演じる他、「護られなかった者たちへ」の清原果耶、「天空の蜂」の江口洋介ら豪華出演陣が揃う。
  • 向田理髪店

    制作年: 2022
    寂れた元炭鉱町「筑沢町」にある理髪店の親子の葛藤を軸に、過疎化、少子高齢化、介護、結婚難など、どこの地方も抱える深刻な問題に直面しながら懸命に生きる人々の姿を通して、家族の絆や人とのつながりの大切さを描いたヒューマンドラマ。原作は直木賞作家の奥田英朗。奥田原作の映画「純平、考え直せ」を監督した森岡利行が脚本・監督を務めた。理髪店を営む主人公・向田康彦には、本作が映画初主演となる高橋克実。その妻・恭子に富田靖子、東京の会社を辞めて戻って来た息子・向田和昌を白洲迅、康彦の同級生役に板尾創路と近藤芳正。原作では北海道だった舞台を九州に移し、撮影は福岡県大牟田市などをメインに、地元の人びとの全面的な協力を得て行われた。
  • Fukushima 50

    制作年: 2020
    門田隆将のノンフィクションを原作に、東日本大震災時の福島第一原発事故を描いたドラマ。2011年3月11日、巨大地震が発生。大津波で原子炉が冷却できなくなった福島第一原発では、吉田所長や現場作業員の伊崎が、最悪の事態を回避しようとするが……。出演は「楽園」の佐藤浩市、「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」の渡辺謙。監督は「空母いぶき」の若松節朗。
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