ウォン・カーウァイ ウォン・カーウァイ

  • 出身地:上海
  • 生年月日:1958/07/17

略歴 / Brief history

【香港返還後も独自の映像美学を貫き通すオンリーワン】中国、上海の生まれ。5歳の時に香港に移住し、香港理工学院に進学してグラフィック・デザインを学ぶ。テレビ界で脚本家・助監督として活動したのち、1982年に脚本家として映画界入り。88年の「いますぐ抱きしめたい」で監督デビューを果たし、香港ノワールというジャンル映画に新鮮な映像美学を開花させた同作は、カンヌ映画祭の批評家週間でも上映された。90年の「欲望の翼」では60年代の香港を詩情豊かに描き、香港電影金像奬でグランプリ・監督賞を含む5部門を受賞、国際的な評価も得る。続いて92年に異色武侠映画「楽園の瑕」の製作に入るが幾度となく撮影が中断され、94年にようやく完成。一部に称賛されるも興行的には惨敗した。その「楽園の瑕」の仕上げ作業の間に撮り上げた「恋する惑星」(94)は日本でも大ヒット。姉妹篇「天使の涙」(95)では、前作から連続登板の金城武をスターダムに押し上げた。香港返還前最後の作品「ブエノスアイレス」(97)では、アルゼンチンに流れ着いたふたりの男同士の愛と葛藤を描き、カンヌ映画祭監督賞を受賞。名実ともに巨匠の領域に。00年の「花様年華」は「『欲望の翼』の続篇とみなすことも可能」とカーウァイ自身語っているが、同じく60年代を舞台に既婚男女のやるせない愛を描き、トニー・レオンにアジア人初のカンヌ映画祭主演男優賞をもたらした。日本では木村拓哉の出演が話題となった「2046」(04)は、過去にとらわれた作家が現在と未来を行き来する集大成的ラブストーリーである。次なる一手が、初の英語作品「マイ・ブルーベリー・ナイツ」(07)。長編映画のほかにも、BMW社のショート・フィルムや、DJ ShadowのPV、オムニバス映画「愛の神、エロス」(04)の一編を手がけるなど、その活動は多岐にわたる。【即興演出と独特の映像世界】香港ニューウェーヴの第二世代に位置し、香港返還後は拠点を海外に移す監督も目立つなか、ペースを崩さず我が道を突き進む異才。現場でたびたび台詞に変更を加える即興的演出で知られ、大幅に延びる撮影のため、出演者ですら完成までは概要がわからないことも多々あるという。2年がかりで完成した「楽園の瑕」は、大量の未使用フィルムを用いた再編集バージョンが08年のカンヌでお披露目され、好評を博した。映像面では、美術・衣裳・編集などを担ってきたウィリアム・チョンと、「欲望の翼」以降、撮影監督をつとめるクリストファー・ドイルと共同で、独特の世界を形成。浮遊しつつ疾走する手持ちカメラは自在に時空を飛び越え、時間や記憶、距離などカーウァイ好みのモチーフを巧みに映像に変換する。しかし、香港返還後最初の作品「花様年華」ではフィックス撮影が増え、画作りにも微妙な変化が見られた。完成まで5年を要した「2046」を挟んで「マイ・ブルーベリー・ナイツ」をアメリカで撮影したが、ブルース・リーの師匠をトニー・レオンが演じる企画も浮上、これをいわゆるハリウッド進出と捉えるのは早計だろう。

ウォン・カーウァイの関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 若き仕立屋の恋 Long version

    制作年: 2004
    2004年ヴェネチア国際映画祭で上映されたオムニバス映画「愛の神、エロス」の一編としてウォン・カーウァイ監督が手掛けた短編の拡張版。1960年代の香港。仕立屋見習いのチャンは、美しい高級娼婦ホアと出会い、何年にもわたり彼女の服を作り上げる。出演は、「西遊記 孫悟空vs白骨夫人」のコン・リー、「雪暴 白頭山の死闘」のチャン・チェン。2018年北京国際映画祭上映作品。
  • モリコーネ 映画が恋した音楽家

    制作年: 2021
    2020年に逝去した映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネの軌跡をたどるドキュメンタリー。彼が手掛けた数々の作品の名場面やワールドコンサートツアーの模様を交え、モリコーネ本人ほか70人以上の著名人のインタビューによって、彼の仕事術の秘密が明かされてゆく。モリコーネの弟子であり親友でもある、「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督が5年以上にわたる密着取材を敢行し完成させた。
  • プアン 友だちと呼ばせて

    制作年: 2021
    タイ映画史上歴代興収1位を奪取した「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」のバズ・プーンピリヤが監督を担当し、「花様年華」「恋する惑星」のウォン・カーウァイが製作総指揮を務め、サンダンス映画祭のワールドシネマドラマティック部門で審査員特別賞に輝いた青春映画。余命宣告を受けた男がNYにいるバーテンダーの友人をタイに呼び戻し、元恋人たちに会いに行くロードムービー。監督のオリジナル脚本で、若くして亡くなった親友に捧げる半自伝的な物語。タイトルの「プアン」はタイ語の「友だち」を、英題の“one for the road”は「別れの一杯」を意味する。出演はドラマ『Hormones』で人気が爆発し、「ゴースト・ラボ:禁断の実験」にも出演しているトー・タナポップと、ドラマ『VOICE』のアイス・ナッタラットがタッグを組んだ。タイの各地域の美しい景色や、ウォン・カーウァイ作品を彷彿とさせるネオン下のロマンティックな場面など、おしゃれでエモーショナルな雰囲気が漂う。タイ最旬の音楽やファッションを取り入れてヒットを生み出し続けてきた映画会社GDH559が製作した。
  • メットガラ ドレスをまとった美術館

    制作年: 2016
    NYメトロポリタン美術館で開催されるファッション界最大のイベント“メットガラ”に迫るドキュメンタリー。主催者であるVOGUE編集長アナ・ウィンターに密着、ゴージャスな一夜を生み出すまでの8か月と、セレブがレッドカーペットを彩る当日の模様を映し出す。監督は『学歴の値段 集金マシーン化した米大学の真実』のアンドリュー・ロッシ。出演は、アナ・ウィンター、キュレーターのアンドリュー・ボルトン、アーティスティック・ディレクターを担当したウォン・カーウァイ、ファッションデザイナーのジョン・ガリアーノ、ジャン=ポール・ゴルチエ、カール・ラガーフェルド、「華麗なるギャツビー」などの監督を務めたバズ・ラーマン、ポップスターのリアーナほか。
    90
  • 大英雄

    制作年: 1993
    金輪国を舞台に、王位を狙う男女とそれを阻止しようとする一団との対峙をスピーディーに描く香港スターが共演したアクションコメディ。2013年7月下旬より、東京・シネマート六本木、大阪・シネマート心斎橋にて開催される「王家衛(ウォン・カーウァイ)監督 スペシャル上映」にて広東語版をデジタル上映。
  • 楽園の瑕 終極版

    制作年: 2008
    ウォン・カーウァイ監督、クリストファー・ドイルが撮影を担当し、レスリー・チャンやトニー・レオンら豪華キャストが出演したアクションドラマ。伝説として語り継がれる剣士たちの壮絶な戦いと青春群像を鮮烈な映像で描く。1994年公開の『楽園の瑕』をカーウァイ監督自身が修正・再編集した<終極版>。2013年7月下旬より、東京・シネマート六本木、大阪・シネマート心斎橋にて開催される「王家衛(ウォン・カーウァイ)監督 スペシャル上映」にて上映。

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