奥田瑛二 オクダエイジ

  • 出身地:愛知県春日井市
  • 生年月日:1950/03/18

略歴 / Brief history

愛知県春日井市の生まれ。本名・安藤豊明。春日井市議会議員だった父の関係から、明治学院大学法学部在学中より丹羽兵助代議士の秘書をつとめ、その後、高校の先輩で同郷の俳優・天知茂の付き人になる。1976年、日本テレビの子供向け特撮番組『円盤戦争バンキッド』で主人公・天馬昇に抜擢され、テレビドラマにデビュー。当時の芸名は“奥田英二”だった。その後はしばらく役に恵まれず、さまざまな職を転々。家賃が払えずにアパートから夜逃げし、3カ月間、代々木公園で野宿生活をしたこともあったという。転機となったのは79年、映画デビュー作となった藤田敏八監督「もっとしなやかにもっとしたたかに」で、ヒロインの森下愛子に翻弄される男を好演。続く東陽一監督「もう頬づえはつかない」では、桃井かおりと同棲する大学生を気負わずに演じて注目を浴びる。以後、多くの映画で役がつくようになり、芸名を“瑛二”に改名。本格的にテレビドラマにも進出し、81年のNHK銀河テレビ小説『愛・信じたく候』に始まって、『憤激の恋』82、『とおりゃんせ』82、『宵待草』83、さらには大河ドラマ『徳川家康』83の松平勝隆役、大型時代劇『宮本武蔵』84の本位田又八役など、NHKのドラマに立て続けに出演して全国的に知名度を高める。その後は、TBS『金曜日の妻たちへⅢ・恋におちて』85、『男女7人夏物語』『金曜日には花を買って』86といったヒットドラマに出演し、トレンディ俳優のはしりとして女性ファンを獲得する。だが、本人は映画へのこだわりが強く、86年には、熊井啓監督が遠藤周作の同名小説を映画化した「海と毒薬」に主演。太平洋戦争末期、米軍捕虜の生体実験を行なったふたりの医学研究生を通して、戦争の名の下に人間性が失われていく恐怖を描いた問題作で、奥田は良心の呵責に苦しむ医学生・勝呂を見事に演じた。同作で毎日映画コンクール男優主演賞を受賞。熊井監督とはさらに「千利休・本覺坊遺文」89、「式部物語」90、「ひかりごけ」92、「深い河」95、「海は見ていた」02で連続してコンビを組み、「千利休」では日刊スポーツ映画大賞主演男優賞、「深い河」では日本映画批評家大賞男優賞を受賞している。また、94年には神代辰巳監督の遺作となった「棒の哀しみ」に主演し、平凡な中年やくざの狂気と哀しみをリアルに演じて、キネマ旬報賞、ブルーリボン賞、毎日映画コンクール、ヨコハマ映画祭など多数の主演男優賞に輝いた。90年代の奥田は、ほかにも「極道記者」シリーズ93~96や「恋極道」97、「皆月」99などの望月六郎監督作品で、さまざまなタイプのアウトロー中年を表現していった。一方で榎戸耕史監督「ありふれた愛に関する調査」92では企画も兼ね、映画製作へ意欲を燃やし始める。自ら映画監督になろうと一念発起して基礎から映画作りを学び、48歳で助監督を経験。2001年、50歳で念願の監督デビュー作「少女/an adolescent」を発表する。第2作「るにん」04を経て、緒形拳を主演に迎えた第3作「長い散歩」06は、モントリオール世界映画祭でグランプリ、国際批評家連盟賞、エキュメニック賞の三冠に輝いた。俳優業も、伊藤俊也監督の「ロストクライム・閃光」10で三億円事件の真相を追うベテラン刑事を演じるなど、近年は大人の渋みを増した演技者として円熟を迎えている。テレビドラマの出演作はほかに、NHK『独眼竜政宗』87、『花の乱』94、『ひまわり』96、『北条時宗』01、『慶次郎縁側日記』04~06、『どんど晴れ』07、『白洲次郎』09、『チェイス・国税査察官』10、『テンペスト』11、TBS『海岸物語・昔みたいに…』88、フジテレビ『拝啓、父上様』07、『風のガーデン』08、『魔術はささやく』11、テレビ朝日『警官の血』09、『宿命1969 ─ 2010/ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京』10、WOWOW『ビート』11など多数がある。79年に結婚したエッセイストの妻・安藤和津との間に二女があり、長女の安藤モモ子は奥田の監督作で助監督を経験したのち、10年に奥田も出演した「カケラ」で映画監督デビュー。次女・安藤サクラは奥田の監督作「風の外側」07に主演したのをきっかけに、園子温監督「愛のむきだし」09、大森立嗣監督「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」10などで個性派若手女優として活躍している。

奥田瑛二の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • かくしごと(2024)

    制作年: 2024
    ミステリー作家・北國浩二の小説『嘘』を映画化。認知症の父を介護するため、田舎に戻った絵本作家の千紗子は、事故で記憶を失った少年を助ける。その身体に虐待の痕を発見した千紗子は、少年を守るため、自分を母親と偽り、少年と3人で暮らし始めるが……。出演は「キングダム 運命の炎」の杏、「さかなのこ」の中須翔真、「花腐し」の奥田瑛二。「生きてるだけで、愛。」の関根光才の長編第2作。
  • 車軸

    制作年: 2023
    「パーフェクト・レボリューション」の松本准平監督が、歌人・小説家の小佐野彈による同名小説を映画化。アフターコロナの歌舞伎町を舞台に、裕福な家庭で育った女子大生・真奈美、資産家でゲイの潤、ホスト・聖也の三角関係を描く、暴力的なまでに切ない青春群像劇。出演は「劇場版 ラジエーションハウス」の矢野聖人、「衝動」の錫木うり、「黄龍の村」の水石亜飛夢。
  • 花腐し

    制作年: 2023
    松浦寿輝の第123回芥川賞受賞作を、数々の脚本を手がけ「火口のふたり」などではメガホンを取った荒井晴彦が、斜陽のピンク映画界を背景に取り込み映画化。ピンク映画業界で生きる監督・栩谷と脚本家志望だった伊関は、同じ女を愛していたことに気付き……。“花腐し”とは『万葉集』に登場する五月雨の表現で、きれいに咲いた卯木の花をも腐らせてしまうじっとりと降りしきる雨を表している。5年映画を撮っていない映画監督・栩谷を「ホムンクルス」の綾野剛が、かつてシナリオを書いていた伊関を「火口のふたり」で主演を務めた柄本佑が、二人が愛した女優・祥子をほな・いこか名義で音楽活動をするほか「愛なのに」などに出演するさとうほなみが演じ、二人の男と一人の女の愛の物語を紡ぐ。
  • クモとサルの家族

    制作年: 2022
    諏訪敦彦監督「風の電話」などのプロデューサーを務めてきた長澤佳也がメガホンを取った時代劇。元忍びの夫・サルと腕利きの忍びである妻・クモの子供たちは、ある日記憶を失った老人を助けるが、その老人の正体は椿藩藩主の貴虎で、命を狙われており……。家を守る専業主夫のサルを「罪の声」の宇野祥平が、稼ぎ頭の忍びの妻クモを「ずっと独身でいるつもり?」の徳永えりが演じるほか、「グッバイ・クルエル・ワールド」の奥田瑛二、「春待つ僕ら」の緒川たまきらが出演。35mmのフィルムで撮影された。
  • シネマスコーレを解剖する。 コロナなんかぶっ飛ばせ

    制作年: 2022
    名古屋にあるミニシアター・シネマスコーレの支配人を追ったドキュメンタリー。2021年3月に中部地区で放送し、ギャラクシー賞奨励賞を受賞した番組『メ~テレドキュメント 復館~シネマとコロナ~』に未公開シーンや継続取材した映像を加えた再編集版。ナレーションは、「菊とギロチン」の韓英恵。
  • グッバイ・クルエル・ワールド

    制作年: 2022
    「星の子」の大森立嗣監督が「死刑にいたる病」の脚本家・高田亮と組み、西島秀俊ら豪華俳優陣を迎えて描く犯罪アクション。一夜限りの強盗団はラブホテルで秘密裏に行われるヤクザの資金洗浄現場を狙い、大金強奪に成功。しかし警察やヤクザに追われ……。元ヤクザ組長の安西はじめ全員互いに素性を知らない強盗団を西島秀俊、斎藤工、玉城ティナ、宮川大輔、三浦友和が、ラブホテルの従業員を宮沢氷魚が、刑事を大森南朋が演じ、波乱の犯罪劇を繰り広げる。
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