大林宣彦 オオバヤシノブヒコ

  • 出身地:広島県尾道市
  • 生年月日:1938/01/09
  • 没年月日:2020/04/10

略歴 / Brief history

【大ヒット作から個人映画まで、多彩な“映像の魔術師”】広島県尾道市の生まれ。幼少の頃から家庭用映写機をおもちゃにして育ち、18歳で16ミリカメラを手にするなど映像漬けの少年時代を送った。1956年に成城大学文芸学部に入学。大学は60年に中退するが、その間に8ミリで自主製作映画を何本も監督した。62年に結婚、以降、恭子夫人がプロデューサーとして現在に至るまでほとんどの作品で共同作業を続けている。以後も16ミリの自主映画を手がけて注目を集める傍ら、64年から始めたテレビCMの演出でもディレクターとして脚光を浴びた。77年、東宝で「HOUSE/ハウス」を撮り、商業映画に進出。80年代後半から顕著になる異業種監督のはしりであり、同時期に相次いでデビューした大森一樹、石井聰亙らとともに、自主映画出身の先駆者ともなった。その後、恭子夫人を代表に独立プロP・S・Cを設立。以降のあらゆる創作活動の拠点とする。その後も順調に作品を重ね、82年、故郷の尾道を舞台とした「転校生」を発表。お互いの体が入れ替わってしまった中学生の男女の恋と友情をセンチメンタルに描き、批評面でも高い評価を受けた。続いて、角川春樹から「尾道で原田知世の映画を撮って下さい」と託された筒井康隆原作のジュヴナイル「時をかける少女」(83)では、合成やコマ落としなどの映像テクニックを最大限に駆使して幻想的な作品世界を描出。のちに定着する“映像の魔術師”“大林ワールド”といった代名詞はここから始まった。【一作ごとに映画界に新風を】以後も、一転して純文学に挑んだ福永武彦原作の「廃市」(84)、「転校生」に始まる“尾道三部作”の完結編「さびしんぼう」(85)、ガラッとテイストを変えた大人の物語「異人たちとの夏」(88)、演出・撮影・録音の大胆な実験を試みた「北京的西瓜」(89)、その実験をさらに押し進めた青春映画の傑作「青春デンデケデケデケ」(92)、“新・尾道三部作”の「ふたり」(91)、「あした」(95)、「あの、夏の日~とんでろじいちゃん」(99)など、その都度、映画界に新風を吹き込む野心作を連打した。これが2000年代に入ると、それまであたかも疾走するかのようだった大林の歩みが不意に落ち着き始める。伊勢正三の名曲をモチーフにした青春の惜別の2作「なごり雪」(02)、「22才の別れLycoris葉見ず花見ず物語」(07)、自作のリメイクに挑んだ「転校生・さよならあなた」(07)、“死”というテーマに真正面から向き合った「その日のまえに」(08)と、今の大林は一作一作を規則正しいリズムのように映画史に刻んでいる。2020年4月10日、東京都内の自宅で闘病中だった肺がんにより逝去。享年82歳。

大林宣彦の関連作品 / Related Work

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  • 海辺の映画館 キネマの玉手箱

    制作年: 2019
    大林宣彦監督が20年ぶりに出身地である広島県尾道でメインロケを敢行、戦争や映画の歴史を辿るファンタジー劇。尾道の海辺にある映画館が閉館の日を迎え、日本の戦争映画大特集のオールナイト興行を見ていた3人の若者がスクリーンの世界へタイムリープする。大林作品に多数出演する厚木拓郎と細山田隆人、「武蔵 -むさし-」に主演した細田善彦が銀幕の世界にタイムリープし移動劇団『桜隊』の運命を変えようとする3人の若者を、『桜隊』の看板女優を「野のなななのか」「花筐/HANAGATAMI」と近年の大林作品を支える常盤貴子が演じる。第32回東京国際映画祭Japan Now部門にてワールドプレミア上映、大林監督に特別功労賞が授与された。
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  • エキストロ

    制作年: 2019
    茨城県つくばみらい市の巨大ロケ施設を舞台にエキストラの世界を描くフェイク・ドキュメンタリー。歯科技工士の荻野谷は、エキストラとして映像作品に出演することに情熱を燃やしている。ある日、彼が所属する事務所のエキストラが、刑事事件の容疑者となる。出演は、映画初出演の萩野谷幸三、「スタートアップ・ガールズ」の山本耕史、「最初の晩餐」の斉藤由貴、「決算!忠臣蔵」の寺脇康文。監督は、ドラマ『透明なゆりかご』の村橋直樹。脚本は、「Diner ダイナー」の後藤ひろひと。高雄映画祭、タリン・ブラックナイツ映画祭、ハイナン国際映画祭、沖縄国際映画祭、京都国際映画祭正式出品作品。
  • 花筐/HANAGATAMI

    制作年: 2017
    檀一雄による同名短編小説を大林宣彦監督が映画化。「この空の花 長岡花火物語」「野のなななのか」に続く“戦争三部作”の最終章。1941年の佐賀県唐津市を舞台に、戦禍の中に生きる若者たちの心が火傷するような凄まじい青春群像劇を、圧倒的な映像力で綴る。出演は「野のなななのか」の窪塚俊介、「三度目の殺人」の満島真之介、「マイ・バック・ページ」の長塚圭史、「彼女の人生は間違いじゃない」の柄本時生、「クレヴァニ、愛のトンネル」の矢作穂香、「チア・ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話」の山崎紘菜、「世界は今日から君のもの」の門脇麦、「だれかの木琴」の常盤貴子。脚本は大林宣彦と「HOUSE ハウス」「ふたり」の桂千穂。音楽の山下康介、撮影・編集の三本木久城、美術の竹内公一、録音の内田誠ら「野のなななのか」スタッフが引き続き参加。2017年12月7日より唐津先行上映。2017年第91回キネマ旬報ベスト・テン日本映画2位、日本映画監督賞(大林宣彦)。
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  • OYAKO ~present to the Future~

      制作年: 2014
      写真家ブルース・オズボーンがライフワークとしている“親子”をテーマにしたシリーズをモチーフに、インタビュー、ドキュメンタリー、ドラマの3パートで構成した作品。親子という誰にとっても身近でありながら奥深い関係を美しい映像とともに綴り、子供が感じた空気感、親になってわかる愛情など、様々な親子の情感を詰め込んだ。
    • 野のなななのか

      制作年: 2014
      北海道芦別市を舞台に、葬儀のために集まった家族の姿と、その家族に関わる終戦の秘話を通じて、3.11以降の日本のあり方を見つめるドラマ。「この空の花 長岡花火物語」の姉妹編的位置づけとなる大林宣彦監督作品。全編、芦別市でロケ撮影を行なった。出演は「沈まぬ太陽」の品川徹、「アフタースクール」の常盤貴子。
    • この空の花 長岡花火物語

      制作年: 2012
      2004年の新潟県中越地震から復興をとげ、11年の東日本大震災発生時には被災者をいち早く受け入れた新潟・長岡市を舞台に、ひとりの女性新聞記者がさまざまな人と出会い、不思議な体験を重ねていく姿を大林宣彦監督が描く。出演は「沈まぬ太陽」の松雪泰子、「明日に架ける愛」の高嶋政宏。2012年4月7日より新潟県・長岡にて先行ロードショーされた。