解説
2004年の新潟県中越地震から復興をとげ、11年の東日本大震災発生時には被災者をいち早く受け入れた新潟・長岡市を舞台に、ひとりの女性新聞記者がさまざまな人と出会い、不思議な体験を重ねていく姿を大林宣彦監督が描く。出演は「沈まぬ太陽」の松雪泰子、「明日に架ける愛」の高嶋政宏。2012年4月7日より新潟県・長岡にて先行ロードショーされた。
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この作品のレビュー
ユーザーレビュー
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ミャーノフ大佐
いやあ、レビュータイトル通り、大林の頭の中でこの映画はどう構成されていったのだろうか。よくもまあ、こんな複雑な映画を作れたものだ。ストーリーは先の戦争、特に長岡大空襲を中心に、中越大地震、東日本大震災、そして長岡の花火を盛り込んで描いている。繋げ方はかなり強引かな、とも思う。このストーリーを大林特有の画面を加工したり、短いフラッシュバック、カットバックをしながら、しかも各シーンも短い。これを頭の中で構成して映画を作っていっているのだからすごい。もう映画の最初の頃からウルウルしてしまう。長尺の映画だが、それを感じさせないくらい詰め込んでいる映画だ。
ライムスター宇多丸がこの映画を変わった映画(良い意味で)と言っていたので、それなりに心して観たのだが、確かに通常の映画手法とは全く違っているけど、まさしく大林映画になっていた。
死んだ子供が少女になって会いに来るのは「鉄道員 ぽっぽや」でも描かれている。もうちょっと遡れば、同じ大林の「あした」でも死んだ人にあう映画だ。映画と関係ない山下清を度々画面に登場させたり、学生達を一輪車で演技せたり、これは大林の頭の中でしかわからないことだけど、この映画がファンタジー映画と捉えれば、良いのかな。
で役者の話。髙嶋政宏と松雪泰子はこの映画の前に「スマグラー おまえの未来を運べ」で共演してますね。高島は変態殺し屋、松雪は裏社会の金貸しの役。なんか合っているんだけど。
「この空の花 長岡花火物語」のストーリー
天草の地方紙記者・遠藤玲子(松雪泰子)が長岡を訪れたことには幾つかの理由があった。ひとつは中越地震の体験を経て、2011年3月11日に起きた東日本大震災に於いていち早く被災者を受け入れた長岡市を新聞記者として見詰めること。そしてもうひとつは、何年も音信が途絶えていたかつての恋人・片山健一(高嶋政宏)からふいに届いた手紙に心惹かれたこと。山古志から届いた片山の手紙には、自分が教師を勤める高校で女子学生・元木花(猪股南)が書いた『まだ戦争には間に合う』という舞台を上演するので玲子に観て欲しいと書いてあり、更にはなによりも「長岡の花火を見て欲しい、長岡の花火はお祭りじゃない、空襲や地震で亡くなった人たちへの追悼の花火、復興への祈りの花火なんだ」という結びの言葉が強く胸に染み、導かれるように訪れたのだ。こうして2011年夏。長岡を旅する玲子は行く先々で出逢う人々と、数々の不思議な体験を重ねてゆく。そしてその不思議な体験のほとんどが、実際に起きた長岡の歴史と織り合わさっているのだと理解したとき、物語は過去、現在、未来へと時をまたぎ、誰も体験したことのない世界へと紡がれてゆく。
「この空の花 長岡花火物語」のスタッフ・キャスト
スタッフ |
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キャスト | 役名 |
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「この空の花 長岡花火物語」のスペック
基本情報 | |
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ジャンル | ドラマ |
製作国 | 日本 |
製作年 | 2012 |
公開年月日 | 2012年5月12日 |
上映時間 | 160分 |
製作会社 | 「長岡映画」製作委員会(NST新潟総合テレビ=長岡映画を応援する会=ナミックス=皆既日食を元気で見る会=北越紀州製紙=軽井沢 天空カフェ・アウラ) |
配給 | PSC=TMエンタテインメント |
レイティング | 一般映画 |
アスペクト比 | アメリカンビスタ(1:1.85) |
カラー/サイズ | カラー/ビスタ |
音量 | DTS |
コピーライト | (C)「長岡映画」製作委員会・PSC All rights reserved. |
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