渡辺謙 ワタナベケン

  • 出身地:新潟県北魚沼郡小出町(現・魚沼市)
  • 生年月日:1959/10/21

略歴 / Brief history

新潟県北魚沼郡小出町(現・魚沼市)の生まれ。県立小出高校を卒業後の1978年に上京。アルバイトなどで1年間を過ごし、79年に演劇集団円の研究所に入所する。劇団員に昇格したのは82年だが、研究生時代の81年にすでに、蜷川幸雄演出『下谷万年町物語』のオーディションで主演を勝ち取り、以降も『冬のライオン』『バジャゼ』『ピサロ』などの舞台で大役を演じていく。83年、TBS『未知なる反乱』でテレビドラマ初出演を果たし、翌84年にはNHK大河ドラマ『山河燃ゆ』にも出演。同年、篠田正浩監督「瀬戸内少年野球団」で、義姉の夏目雅子に惚れ彼女の体を強引に奪ってしまう網元の息子・鉄夫に扮して映画デビューする。85年には、松永好訓監督「結婚案内ミステリー」、伊丹十三監督「タンポポ」に助演し、強い印象を残した。明けて86年、NHK連続テレビ小説『はね駒』でヒロイン・斉藤由貴の相手役に抜擢され、お茶の間での認知度が高まる。さらに、熊井啓監督の力作「海と毒薬」86に準主演。第二次世界大戦末期に行なわれた日本軍の米兵捕虜生体解剖実験をモチーフとしたこの作品で、何事にも動じないニヒルな医学生・戸田役を好演して、一躍脚光を浴びる。87年、NHK大河ドラマ『独眼竜政宗』の主役に抜擢され、大ブレイク。戦国武将・伊達政宗の生涯を描いた同作は、歴代大河ドラマの中でも最高の平均視聴率39.7%を記録し、“東北の暴れん坊”政宗の青年期から晩年までを堂々と演じきった渡辺は、若き時代劇の担い手として高く評価された。続いて、角川春樹監督の大作「天と地と」の上杉謙信役に決まるが、この映画のカナダロケ中の89年9月、急性骨髄性白血病を発病して降板を余儀なくされる、入院治療を経て経過が良好になったため、翌90年5月には仕事に復帰し、コミカルな坂本龍馬像をエネルギッシュに演じた薬師寺光明監督「幕末純情伝」91や、フジテレビ『仕掛人藤枝梅安』91・93、日本テレビ『わが町』92、フジテレビ『鍵師』93、NHK『炎(ほむら)立つ』93などのテレビドラマに出演を重ねる。病気から完全に立ち直ったかに見えたが、フジテレビ『御家人斬九郎』を撮影中の94年8月に白血病が再発。同年10月から予定されていたTBS『お兄ちゃんの選択』の主役をまたしても降板することになってしまう。再度の休業、治療を続けた結果、再びカムバックを果たし、95年5月のフジテレビ『鍵師Ⅲ』の撮影から現場に復帰した。以降は、闘病前から出演していた『わが町』92~98、『鍵師』93~97、『御家人斬九郎』95~02のシリーズ3作を中心に仕事を続けるが、俳優としてのイメージが固定するのを嫌った渡辺は、30代の終わりを機にこれらの人気シリーズをすべて終了させ、それまでのイメージにはなかった悪役や不格好な役柄なども積極的に演じるようになる。この転換期の代表作としては、宮藤官九郎脚本のTBS『池袋ウエストゲートパーク』00での警察署長、堤幸彦監督「溺れる魚」01の悪徳警察キャリア、橋本一監督「新・仁義なき戦い/謀殺」03の粗暴な武闘派やくざなどが挙げられる。2001年、『永遠Part2』で久々に舞台に出演するが、これを最後に“円”を退団。翌03年には、エドワード・ズウィック監督のハリウッド映画「ラストサムライ」の準主役にキャスティングされ、海外進出を果たす。明治維新直後の日本を舞台にしたこの米国製時代劇で、政府軍に反旗を翻し武士道に殉じていく誇り高い男・勝元盛次を熱演。米国アカデミー賞とゴールデングローブ賞の助演男優賞にノミネートされるなど高い評価を得る。この成功を機にロサンゼルスに居を構え、ハリウッド映画に相次いで出演。当初は通訳を要していた英会話も、ほとんど自らこなせるまでに習得した。06年、第二次世界大戦中の日本軍の姿を描いたクリント・イーストウッド監督「硫黄島からの手紙」に主演。さらなる国際的な知名度を高め、以後も日米を横断しての海外作品出演が続く。日本国内では06年、若年性アルツハイマー病を題材にした荻原浩の原作小説に惚れ込み、渡辺自らの執念の企画で映画化にこぎつけた、堤監督「明日の記憶」に主演する。白血病で倒れてから、闘病生活を連想させるような役柄や作品は避けてきた渡辺だったが、原作に深く共感したその想いを貫き、病に冒されていく主人公を熱演。キネマ旬報賞、ブルーリボン賞、日本アカデミー賞などで主演男優賞を多数獲得する。さらに09年の山崎豊子原作、若松節朗監督の大作「沈まぬ太陽」でも、報知映画賞、日本アカデミー賞の主演男優賞を受賞。日本を代表する名優として、まさに脂の乗り切った仕事ぶりを見せている。ドラマはほかに、フジテレビ『果つる底なき』00、『星ひとつの夜』07、NHK『北条時宗』01、TBS『こちら第三社会部』01、『沈黙のアリバイ』02、『砂の器』04、『塀の中の中学校』10、テレビ朝日『刑事一代・平塚八兵衛の昭和事件史』09、日本テレビ『遠まわりの雨』10など。83年に結婚した前妻との間に一男一女があり、長男は俳優の渡辺大、長女はファッションモデルで女優の杏。05年3月の離婚後は、ふたりとも母方に引き取られた。同年12月、テレビ東京『異端の夏』03で共演した南果歩と再婚。

渡辺謙の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 盤上の向日葵

    制作年: 2025
    『孤狼の血』の柚月裕子による同名小説『盤上の向日葵』を熊澤尚人監督・脚本で映像化。将棋の駒を胸に抱いた白骨死体が発見され、ひとりの天才棋士の哀しい過去が暴かれる。主演は坂口健太郎と渡辺謙。
  • 国宝

    制作年: 2025
    歌舞伎の世界を舞台にした吉田修一の同名小説を李相日が映画化、「悪人」「怒り」に続いて三度目のタッグを組んで贈る、壮絶な人間ドラマ。ヤクザ同士の抗争で父を亡くした喜久雄は、上方歌舞伎の名門・花井半二郎に引き取られる。そこで、将来を約束された半二郎の実子・俊介と出会い、互いにライバルとして芸に青春を捧げていく。血筋と才能、歓喜と絶望、信頼と裏切りのはざまで、人生をもがき苦しみながら歩んだ男が掴んだものとは……。出演は「ぼくが生きてる、ふたつの世界」の吉沢亮、「正体」の横浜流星、「ザ・クリエイター/創造者」の渡辺謙。
  • ライオン・キング:ムファサ

    制作年: 2024
    壮大なアフリカの大地を舞台に“生命”をテーマに描き、映画、演劇、音楽で親しまれる「ライオン・キング」の最新作。息子シンバを命がけで守ったムファサ王と、ムファサの命を奪ったスカーの若き日の姿を描く「ライオン・キング」はじまりの物語。新天地を目指し旅に出るムファサと弟タカ(後のスカー)。そこには、血のつながりを超えた兄弟の絆に隠された驚くべき秘密があった。監督は「ムーンライト」のバリー・ジェンキンス。声の出演はNetflix『レベル・リッジ』のアーロン・ピエール、「ルース・エドガー」のケルヴィン・ハリソン・Jr.、「アナザーラウンド」のマッツ・ミケルセン。前作に続き、シンバの声をドナルド・グローヴァー、プンバァをセス・ローゲン、ナラをビヨンセことビヨンセ・ノウルズ=カーターが続投、シンバとナラの娘・キアラ役をビヨンセの愛娘ブルー・アイビー・カーターが演じる。
  • ザ・クリエイター 創造者

    制作年: 2023
    「GODZILLA ゴジラ」のギャレス・エドワーズが、「TENET テネット」のジョン・デヴィッド・ワシントン主演で贈るSFアクション。A.I.との戦争が続く未来。退役軍人ジョシュアに、A.I.兵器の創造主“クリエイター”暗殺指令が下る。共演は「Fukushima 50」の渡辺謙、「エターナルズ」のジェンマ・チャン。
  • ただいま、つなかん

      制作年: 2023
      仙台市唐桑半島にある民宿の女将を10年以上にわたり取材したテレビ報道発のドキュメンタリー。東日本大震災当時、自宅を学生ボランティアの拠点として開放した菅野夫妻は、その場所を民宿として開業。テレビで放送された映像に新たなシーンを加えて映画化。監督は、本作が映画初監督となるテレビディレクターの風間研一。ナレーションは、「Fukushima 50」の渡辺謙。
    • TOKYO VICE

      制作年: 2022
      「インサイダー」のマイケル・マンが全編オール日本ロケで描く日米共同制作ドラマの第1話を期間限定で劇場公開。1990年代の東京。日本の大手新聞社に就職したアメリカ人ジェイクは、特ダネを追いかけるうちにヤクザ絡みの事件に強い刑事・片桐と出会う。出演は、「ウエスト・サイド・ストーリー」のアンセル・エルゴート、「Fukushima 50」の渡辺謙、「パシフィック・リム:アップライジング」の菊地凛子

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