夏八木勲 ナツヤギイサオ

  • 出身地:東京市足立区(現・東京都足立区)
  • 生年月日:1940/12/25
  • 没年月日:2013/05/11

略歴 / Brief history

東京市足立区(現・東京都足立区)の生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科在学中に友人の勧めで文学座付属演劇研究所に入るが長続きせず、1960年に大学も中退。63年に改めて俳優座養成所に第15期生として入り、66年、地井武男、原田芳雄、林隆三、赤座美代子、栗原小巻ら“花の15期”と言われた錚々たるメンバーと一緒に卒業する。男臭くて荒々しい雰囲気を買われ、東映と契約。同年の加藤泰監督「骨までしゃぶる」で映画デビューする。遊廓の娼婦たちを描いたこの作品で、女を足抜きさせるために体を張る大工を演じて注目を浴びたのち、五社英雄監督「牙狼之介」66・67で一匹狼の剣豪に扮し、早くも主演。その豪快な殺陣が大評判となる。工藤栄一監督「十一人の侍」67、鈴木則文監督「忍びの卍」68などの主演が続き、新たな時代劇スターとして期待されるが、その後フリーとなり、時代劇はもちろん戦争映画、現代劇からアクションまで、幅広い作品に助演を続ける。74年、NHK連続テレビ小説『鳩子の海』でヒロインの少女と仲良くなる脱走兵を演じ、茶の間にもその存在が知られるようになる。以降は、野村芳太郎監督「八つ墓村」77の怨念の塊のような落武者役、壮絶な死にざまを見せた深作欣二監督「柳生一族の陰謀」78の別所庄左衛門役など、大作映画でも印象的な役柄を演じる。中でも、佐藤純彌監督「人間の証明」77、「野性の証明」78、齋藤光正監督「悪魔が来りて笛を吹く」79といった角川映画の常連俳優となり、79年の村川透監督「白昼の死角」では天才詐欺師・鶴岡七郎役で久しぶりに主演。遅咲きの花とも言えるが、映画スターの仲間入りを果たした。角川映画ではほかにも、豪快な長尾景虎を演じた齋藤監督「戦国自衛隊」79、南極日本隊の隊長に扮した深作監督「復活の日」80なども印象深い。並行して「雲霧仁左衛門」78、「闇の狩人」79、「鬼龍院花子の生涯」82、「北の螢」84といった五社監督の作品には出演シーンの多少にかかわらず顔を出し、中原俊監督の児童映画「ぼくのオヤジとぼく」83では気の好い頑固親父を演じるなど、年齢を重ねて役の間口が広がっていった。この間、78年の「野性の証明」から“夏木勲”に改名していたが、86年に再び芸名を本名の“夏八木勲”に戻す。活躍ぶりは衰えるところを知らず、神代辰巳監督「離婚しない女」86では倍賞千恵子のヒロインと冷え切った結婚生活を送る町の実力者に扮して、深みのある演技を見せた。テレビドラマの出演も多く、NHK『竜馬がゆく』68、『花神』『もしもあの時…』77、『真田太平記』85、『花の乱』94、『毛利元就』97、TBS『お登勢』71、『新選組始末記』77、テレビ朝日『ザ★ゴリラ7』『燃える捜査網』75、『影の軍団Ⅳ』85、フジテレビ『鬼平犯科帳』89~01、『十三人の刺客』90、『将太の寿司』96、日本テレビ『金田一少年の事件簿』95などで活躍。近年の映画では政財界の大物役や、木村大作監督「劒岳・点の記」09の登山ルートのヒントを主人公に与える行者など、作品の要となる重鎮の役どころが増えている。ドラマの出演作はほかに、フジテレビ『眠れる森』98、『リップスティック』99、『東京湾景』04、『プロポーズ大作戦』07、NHK『葵・徳川三代』00、『武蔵/MUSASHI』『緋色の記憶・美しき愛の秘密』03、『どんど晴れ』07、『だんだん』『トップセールス』08、『龍馬伝』10、日本テレビ『シンデレラは眠らない』00、『ヤスコとケンジ』08、TBS『大江戸を駈ける!』00、『ショコラ』03、『砂の器』04、テレビ朝日『エースをねらえ!』04、『富豪刑事』05・06など多数。2013年3月芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2013年5月11日死去。

夏八木勲の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • ソ満国境 15歳の夏

    制作年: 2015
    田原和夫が自らの体験を綴った著書『ソ満国境15歳の夏』を原作に、終戦後、ソ連・満州国境付近を彷徨った少年たちの過酷な逃避行を描いたドラマ。3000キロに及ぶロケハンを経て中国ロケを実施。出演は「るろうに剣心 京都大火編」の田中泯、これが遺作となった夏八木勲(「そして父になる」)、「東京家族」の柴田龍一郎。
    50
  • そして父になる

    制作年: 2013
    「奇跡」「誰も知らない」の是枝裕和監督が、子どもを取り違えられた二組の家族を通して、家族とは何か掘り下げるヒューマン・ドラマ。自らの手で人生を切り拓いてきたエリート会社員の子が取り違えられていたことが発覚、取り違えられた先の家族と交流するうちに彼の価値観が変わっていく。エリート会社員を「真夏の方程式」「容疑者Xの献身」の福山雅治が、その妻を「トロッコ」「萌の朱雀」の尾野真千子が、子どもを取り違えられたもう一組の夫婦を「ぐるりのこと。」のリリー・フランキーと「さよなら渓谷」の真木よう子が演じている。第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門審査委員賞受賞およびエキュメニカル賞特別表彰作品。2013年9月24日より先行公開。
    70
  • ひまわりと子犬の7日間

    制作年: 2013
    保健所に連れてこられた母犬と子犬たちの命を守ろうとする職員の必死の奮闘を描いた感動作。2007年に宮崎県の保健所で実際に起きた出来事を綴った山下由美の『奇跡の母子犬』(PHP研究所・刊)をもとにしている。監督・脚本は「母べえ」や「武士の一分」「十五才 学校IV」で山田洋次監督とともに脚本を手がけ、日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞した平松恵美子。本作が初監督作品となる。「ツレがうつになりまして。」「アフタースクール」の堺雅人が、殺処分寸前の母犬と子犬たちを助けるために奔走する職員を演じる。ほか、「阪急電車 片道15分の奇跡」の中谷美紀、「冷たい熱帯魚」のでんでん、「人生、いろどり」の吉行和子らが出演。
    90
  • 脳男

    制作年: 2013
    並外れた知能や肉体を持ちながら、人間らしい感情に欠け、正義のために犯罪者の殺戮を繰り返す“脳男”を中心に、“正義と悪”、“愛と心”を問うバイオレンス・ミステリー。出演は「僕等がいた (前篇・後篇)」の生田斗真、「この空の花 長岡花火物語」の松雪泰子、「るろうに剣心」の江口洋介。監督は「星守る犬」の瀧本智行。
    70
  • サンゴレンジャー

    制作年: 2013
    世界有数のサンゴ礁が広がる沖縄県石垣島を舞台に、環境省自然保護官がサンゴを守ろうと奮闘する姿を描く人間ドラマ。原作は著書『Little DJ~小さな恋の物語』などが映画化された鬼塚忠と演劇ユニット『マシンガンデニーロ』の主宰・足立拓也によるユニット・さかいたまきの同名小説。監督はテレビドラマ『とんび』や『ROOKIES』の演出を手がけた中前勇児。本作が映画初監督作品となる。正義感が強く時には公務員という立場を忘れて暴走しながらもサンゴ保全に奔走する男を、「渾身 KON-SHIN」「メンゲキ!」に主演した劇団EXILEの青柳翔が演じる。また、男の同僚を「相棒シリーズ X DAY」の田中圭が、地元の小学校教師を「アフロ田中」の佐々木希が演じている。
    80
  • 永遠の0

    制作年: 2013
    累計発行部数280万部を超える百田尚樹の大ベストセラーを「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや「BALLAD 名もなき恋のうた」を手がける山崎貴監督が映画化。実の祖父の存在を知った青年が、零戦パイロットだった彼がどんな思いで特攻出撃をしたのか、真の姿を探る。山崎貴監督とともに「うさぎドロップ」「ゴールデンスランバー」の林民夫が脚本を担当。家族を大事に思う零戦パイロットを「図書館戦争」「フライ,ダディ,フライ」の岡田准一が、彼の妻を「八日目の蝉」「ダーリンは外国人」の井上真央が、わずかな手がかりから祖父の姿を追う青年を「東京公園」「君に届け」の三浦春馬が演じている。主題歌は「稲村ジェーン」のサザンオールスターズ。
    80