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一晩で全てが見える。夫婦のことも見えるし、彼女の人生も見えてくる 原作の映画化について「小説は完璧なもの、完結したものですからあえて映画にするならば、自分が読んだ時に心に残るエッセンスを大事にしたいと考えています。そこから膨らむイメージを描きたい」と語る三島有紀子監督。島本理生原作の「Red」は8本目の長篇劇映画だ。 大阪に生まれ、神戸女学院大学時代から8ミリ映画を撮り、NHKに入社してドキュメンタリーを手がけるが、劇映画を作りたいと独立。オリジナル脚本で「しあわせのパン」(12)を発表。重松清原作の「幼な子われらに生まれ」(17)ではモントリオール世界映画祭審査員特別大賞、報知映画賞監督賞を受賞するなど、高い評価を受ける。 「Red」では原作と映画の関係がスリリングだ。「真夏の熟した日差しが降り注ぐ」結婚披露宴から始まる小説。映画は雪上を走るトラックの車輪と、後部につけられた赤い布、そして雪のなかの電話ボックスの塔子(夏帆)の顔のクロースアップと少し離れて彼女を見守る鞍田(妻夫木聡)から始まる。 三島:原作を読んだ時、非常に映像的なくだりだと思ったんですね。金沢から東京までの一夜の雪のドライブが。そこを撮りたいなと思ったのと人間の真の独立を描いた現代版『人形の家』(イプセン)になるのではないかと思ったのが、この映画を撮った一番大きな理由です。 夫の真(間宮祥太朗)と幼い娘、姑と時々出張から戻る舅と共に邸宅に暮らす塔子は、かつて関係のあった建築家の鞍田と再会し、彼のいる会社に勤めはじめ、関係が復活する。塔子は出張した新潟で雪のため帰宅困難となるが、夫の真は激しく彼女を責め、塔子はあてもなく雪の中を歩き始める。と、病院から抜け出した鞍田が車で塔子を迎えに来る。2人が車で移動し続ける時間のなかに過去のさまざまなエピソードが入ってくる。 三島:2人がどこかに向かう一晩の中で、夜明けまでに塔子が自分の人生を選択する話にしたいと思いました。一晩で大きく人生を変える物語を映画でつくりたいという企画が自分の中にもともと強くあったからかもしれません。ママ友の娘を殺した事件-音羽幼児殺害事件を調べていた時に、奥さんが自首をする前に一晩、皇居の周りを夫(僧侶)と何周も何周もしながら会話をしたそうなんですね。そして夜明けが来た時に彼女が警視庁に向かって行って、夫が送り出した。事実なんです。それをいつかやりたいと思っていますしね。一晩で全てが見える。夫婦のことも見えるし、彼女の人生も見えてくる、という。 興味を持ったきっかけは、事件の性質です。周りの空気を読まなければいけない者同士の息苦しさが非常に日本的。まずは他人の意見を見聞きしたり、それによって自分の意見も左右されてしまうというように、物事を考える上での尺度が外にある人たちが多いように感じていました。塔子もそうだと思うんです。もしかしたら、もしかしたらですが、塔子は鞍田と出会っていなかったら、息苦しくなってこんな事件を起こしていたのかもしれません。小説で塔子は夫の電話に出なかったことがない、という地の文がありますが、それは、いつも夫につながれていて自分の主体的な時間がないってことじゃないかなと。言いたいことを言えない。まわりの反応を見ながら自分が我慢すればうまくいくと思い込んできた。自分のなかに尺度を押し込んでいる人が、自分で尺度を持てるところまで行動できるプロセスが映画でできたら、今、皆さんに発信する意味があると思いました。 世間が正しくないと思っていても、愛に走っていく高揚感、純潔さ、愚かという徳 車の2人は文楽(人形浄瑠璃)や歌舞伎の心中に向かう男女のよう。 〽此の世のなごり。夜もなごり。死にに行く身をたとふれば、あだちが原の道の霜。 三島:私が生まれたのは曽根崎新地というところで『曾根崎心中』の舞台となった場所から近く、お初天神という神社でお習字を習っていたくらいですから、おそらく(近松門左衛門の)なんらかの影響は受けていると思います。世間が正しくないと思っていても、愛に走っていく高揚感や、ある種の純潔さ、愚かという徳については、小さいころから聞かされていましたね。小・中・高では、3カ月に1度、文楽や歌舞伎、映画や演劇の授業もあって、果たしてそんな相手に出会うのか? と皆で話していたのを覚えています。 鞍田と塔子が向かうのは曾根崎の森ではなく東京である。病に侵された鞍田に代わり、いつしか塔子が車のハンドルを握る。塔子は会社の同僚、小鷹(柄本佑)と宴会を抜け出た夜、デートまがいの戯れで、自転車に2人乗りしてはしゃぐ場面があるが、この時も塔子がハンドルを握っている。助走は始まっていたのかもしれない。 雪のシーンについてはどうだろう。 三島:雪はすべてを覆い隠しています。自分だけしかいない。相手が現れた時、この人と向き合うしかない。受け入れるか拒否するか。そのことが視覚的に見えてくる。本人たちには雪は寒くて厳しいけれど、見ている側からは夢のような美しさ。それはとても面白いな、と。鞍田は病状からして、もう死んでいるかもしれないわけです。妻夫木さんには、鞍田は亡霊かもしれない、そこにいるのは魂だけかもしれない、という感じでやってもらえますかとお願いしました。そして、雪がすべてとけた春、鞍田もいなくなって、夢のような世界から現実の世界になったとき、塔子は何を選択するのか? 決断のシーンは雪で全てが覆い隠されていたところからすべてがあらわになった現実の世界である必要があったんです。 撮影中も黒い服を着ていることが多いイメージで、インタビューにも黒い服で現れた三島有紀子監督。理由を聞くと、「裏方だから」とのこと。 文=田中千世子[映画評論家・映画監督]撮影=朝岡英輔/制作:キネマ旬報社(キネマ旬報10月上旬号より転載) 三島有紀子(みしま・ゆきこ)/1969年生まれ、大阪府出身。18歳からインディーズ映画を撮り始め、大学卒業後、NHKに入局。『NHKスペシャル』『トップランナー』など市井の人々を追う人間ドキュメンタリーを数多く企画・監督。03年に劇映画を撮るために独立。フリーの助監督として活動後、「刺青 匂ひ月のごとく」(09)で映画監督デビュー。「幼な子われらに生まれ」(17)では第41回モントリオール世界映画祭で最高賞に次ぐ審査員特別大賞に加え、第41回山路ふみ子賞作品賞、第42回報知映画賞監督賞を受賞した。主な監督映画作品に「しあわせのパン」(12年)「ぶどうのなみだ」(14)「繕い裁つ人」(15)「少女」(16)「ビブリア古書堂の事件手帖」(18)など。小説『しあわせのパン』(ポプラ社)『ぶどうのなみだ』(PARCO出版)を上梓。 『Red』 ●10月2日発売 ●BD 5800円+税、DVD 3800円+税 ●2020年・日本・カラー・本篇123分+特典映像 [DVD]①オリジナル(日本語)ドルビーデジタル5.1chサラウンド②オリジナル(日本語)ドルビーデジタル2.0chステレオ③バリアフリー音声ガイド(日本語)ドルビーデジタル2.0chステレオ・16:9シネマスコープ・片面2層/[BD]①オリジナル(日本語)DTS-HD Master Audio5.1chサラウンド②オリジナル(日本語)リニアPCM 2.0chステレオ③バリアフリー音声ガイド(日本語)リニアPCM 2.0chステレオ・1080p High Definition・16:9シネマスコープ・2層 ●監督/三島有紀子 脚本/池田千尋、三島有紀子 原作/島本理生 音楽/田中拓人 ●出演/夏帆、妻夫木聡、柄本佑、間宮祥太朗、片岡礼子、酒向芳、山本郁子、浅野和之、余貴美子 ●特典映像(BDのみ) 予告編集(60秒予告/30秒予告/15秒予告)、メイキング映像、イベント映像集(完成披露プレミア上映会/公開直前女性限定試写会/公開記念舞台挨拶) ●封入特典(BDのみ) リーフレット ●発売・販売元:ポニーキャニオン ©2020『Red』製作委員会
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巻頭特集【追悼 映画俳優 渡哲也】のお知らせ
2020年9月25日映画雑誌『キネマ旬報』10月下旬特別号(10月5日発売)の 巻頭特集は、今年8月10日に惜しくも逝去された俳優の渡哲也さんの 「映画俳優」の側面にスポットを当て、映画俳優 渡哲也の残した沢山のものごと、 その色彩と熱へと踏み込み、心からのリスペクトを捧げた追悼特集となります。 ◆特集内容◆ 【甦る、若き渡哲也の肉声】 1976年(34歳当時)に収録されたロングインタビューを掲載。生い立ちから、若 き日々の出来事、映画デビューの頃、弟渡瀬恒彦のこと、映画への想いなど、肉 声が甦る(『みんな不良少年だった ディープ・インタビュー』(77年、白河書院) より転載)。 【貴重フォト満載のグラビア&誌面】 65年、デビュー記者会見写真や、深作欣二監督「仁義の墓場」(75年)の撮 影現場など、貴重な写真が誌面を彩る。 。 【論考とイラストレーションでオマージュ&リスペクト】 作家・詩人・評論家の松浦寿輝、詩人・映画監督の福間健二、気鋭の映画学 者・久保豊などによる多彩な執筆陣の論考に加え、雑誌『POPEYE』などで活躍 する気鋭のイラストレーター岡田成生、渡辺一美が描く渡哲也像を掲載。 【亡くなる数日前の電話で渡哲也が語ったこととは?】 長きにわたって交友のあった東映京都撮影所の殺陣師、菅原俊夫を映画史家の 伊藤彰彦が取材。深作欣二監督「やくざの墓場 くちなしの花」(76年)に始ま る長き交流を伺っています。そして、渡が亡くなる数日前に、菅原と交わした電話 で発した言葉とは? ご予約はこちらより承っております。 渡哲也 (わたり・てつや/俳優) 1941年12月28日生まれ、島根県安来市出身。弟は俳優の渡瀬恒彦。65年「あばれ騎士道」でデビュー。日活で 「紅の流れ星」(67年)、「無頼より 大幹部」(68年)などに主演。71年、石原プロモーション入社。「日本俠花伝」「 ゴキブリ刑事」(73年)「仁義の墓場」(75年)などに主演。以後、活動の主舞台をテレビに移す。87年、石原プロモ ーション社長に就任。96年には「わが心の銀河鉄道 宮沢賢治物語」(大森一樹監督)でキネマ旬報ベスト・テン助演 男優賞他を受賞。05年、「男たちの大和 YAMATO」(佐藤純彌監督)が最後の映画となった。05年、紫綬褒章受 章。2020年8月10日、肺炎のため死去。78歳。 -
池田エライザ原案・初監督作品『夏、至るころ』、日本公開決定!
2020年9月17日すでに韓国、中国の国際映画祭で高い評価を得ている映画 『夏、至るころ』(池田エライザ原案・初監督)が、12月4日(金)より渋谷ホワイトシネクイント、ユナイテッド・シネマキャナルシティ 13 他で公開されることが決定した。 池田エライザ、鮮烈なる監督デビュー! <永遠の故郷>への想いを込めた半自伝的作品 池田エライザが、福岡県田川市を訪れ、そこに暮らす人びとの温かさと緑あふれる景色に魅せられ、ひとつの物語を紡いだ。それは、すぐ傍らにあったのに気づかなかった大切な日常とかけがえのない人たちのこと……。 10代で東京に出た監督自身のエピソードを原案に、オリジナル・ストーリーとして脚本化。夢をもつことが難しい現代の若者の、言葉にならない不安や葛藤、生きる力をリアルに描き出し、みずみずしい映画を誕生させた。その新人らしからぬ演出力は、全州国際映画祭、上海国際映画祭にて高く評価され、海を越えて評判が届くにつれ、日本公開を待ち望む声が高まっていた。 日本公開に寄せて 池田エライザからのコメント 無邪気に夢を抱くことが、難しくなってきている昨今。時間が過ぎるたびに正体不明の焦りを感じるこのご時世を生きる若者に、深く共感しながらも、何かささやかな手助けは出来ないだろうかと考え、この作品をつくりました。私は諦めてしまっていた青春を、素敵な役者陣が見せてくれました。生まれてはじめての感情に触れた瞬間に立ち会わせてもらえたことがなによりも幸せでした。この機会に感謝しています。たくさんの方々のお力添えのもと、穏やかで希望が湧いてくる映画ができました。12月、世界がどうなっているかまだ想定はつきませんが、皆様にお届けできる日が楽しみです。 オーディションを勝ち抜いた新人と、リリー・フランキー、原日出子ら豪華俳優陣が共演! 翔を演じるのは映画初主演の倉悠貴、泰我役には全国2012人のオーディションから選ばれた今作がデビュー作となる新人・石内呂依、謎の少女・都を数々のCMで人気沸騰中のさいとうなりが演じている。また、主人公の父親役に『ガチ☆星』の主演を務めた安部賢一、母親役に『マンガ肉と僕』『雪女』など、自身もプロデューサーや監督として評価の高い杉野希妃、祖父役に『万引き家族』など是枝作品常連のリリー・フランキー、祖母役に『鈴木家の嘘』『生きちゃった』など、話題作目白押しの原日出子、主人公に影響を与える教師役に、大河ドラマ「青天を衝け」で期待を集める高良健吾、ペットショップの店長役に1970年代の名曲「プカプカ」のミュージシャン・大塚まさじなど、豪華俳優陣が脇を固めている。 映画『夏、至るころ』 <STORY> 翔と泰我は同じ学校に通う高校3年生。子どもの頃からの親友で、ずっと一緒に和太鼓の訓練をしてきた。だが夏祭りを前にしたある日、泰我が受験勉強に専念するため太鼓を辞めると言い出す。それを聞いた翔は愕然としてしまう。自分は何がしたいのか、どうしたらいいのか分からない。そんな翔の前にギターを背負った少女、都が現れる……。 <スタッフ・キャスト> 出演:倉悠貴 石内呂依 さいとうなり 安部賢一 杉野希妃 大塚まさじ 高良健吾 リリー・フランキー 原日出子 原案・監督:池田エライザ プロデューサー:三谷一夫 脚本:下田悠子 音楽:西山宏幸 撮影:今井孝博 企画:田川市シティプロモーション映画製作実行委員会 映画24区 企画協力:ABCライツビジネス 協力:田川市 たがわフィルムコミッション 製作:映画24区 配給・宣伝:キネマ旬報DD 映画24区 公式サイト (C)2020「夏、至るころ」製作委員会 -
池袋を映画の街として盛り上げていく
2020年9月4日グランドシネマサンシャイン開館一周年 地下2階地上14階建ての複合ビル 「キュープラザ池袋」内に誕生したシネコン「グランドシネマサンシャイン」が7月19日に開館1周年を迎えた。全12スクリーン、全2443席のシネコンは日本最大スクリーンサイズのIMAX(R)レーザー/GTテクノロジーシアターをはじめ、日本初の「4DX SCREEN (旧4DX with Screen X)」シアターなど映像、音響ともに最高レベルの設備が充実。多くの映画ファンが「映画を観るのなら、この劇場で」とエリアを問わず足を運んでいる。 座席 プレミアムクラス 同館が誇るIMAXシアターのスクリーンは 縦横の最大値 18.910m×25.849m。 その面積は「109シネマズ大阪エキスポシティ」(18m強×26m強) を上回り、常設の商業用映画館として日本最大となる(日本ジャイアントスクリーン協会・IMAX・佐々木興業調べ)。「IMAX はもちろん、大きな売りですが、シネマサンシャイン、オリジナルの劇場規格BESTIA(ベスティア)もSNSで広がり、認知が高まったという手応えがあります」。こう話すのは支配人の森内裕貴さんだ。 常設の映画館では日本最大の「IMAX(R)レーザー/GTテクノロジーシアター」 BESTIAは、最新のレーザープロジェクションシステムと3D音響が一体となり、観客が映画の中に入ったような一体感を味わうことができる次世代の映画館フォーマット。シアター5(346 席+車椅子席2)、シアター6 (235席+車椅子席2)に採用されている。 独自の映像・音響フォーマット「BESTIA」 1年間の成績は動員117万6653人、興収20億8589万3130円(2019年7月18日~2020年7月18日※オープン前夜祭成績を含む)。 「当初の目標は200万人、30億円。コロナ禍がなければ、目標に近づけたと思っていますので、正直悔しさはありますね」と森内さん。ここに新型コロナウイルスの影響の大きさが見て取れる。緊急事態宣言下での2カ月弱の営業自粛、解除後も公開延期作が相次ぐ中、定員を半分以下に制限しての営業。7月上旬には池袋のホストクラブでのクラスター報道もあった。「厳しい状況は続いていますが、お客さまの多数の支持を受けたことを自信に、通常営業の再開に向け、努力していきたい」と話す。同館では消毒、換気など徹底したコロナ対策を行っている。「従業員本人やその家族に感染疑いが出た時点で、出勤停止を指示しています。映画館は常時、十分な換気を行っていますので、いわゆる3密の一つ、密閉空間ではないことはお客様に知っていただきたい」。 年間の興収ベスト3は1位「天気の子」 (約2億円)、2位「ジョーカー」(1億3千万円)、3位「アナと雪の女王2」(約1億円)と、IMAXでの上映作品が強いのが特徴だ。池袋が舞台の一つとなった「天気の子」をめぐってはスタッフが歓喜する出来事もあった。新海誠監督は今年5月のDVD&ブルーレイ、デジタル配信の際に、製作時になかった同館を描き足したことを Twitterで明かしたのだ。これは、新海監督が同館を気に入った証だろう。 グランドシネマサンシャインの登場は、 映画ファンの流れを池袋に引き込む変化を及ぼした。「各線が発表している乗降客数によれば、2019年度の1日の平均乗降客数は新宿(約375万人)、池袋(約269万人)、と池袋は新宿の約7割です。しかし、新宿は3つのシネコン(TOHOシネマズ新宿、新宿バルト9、新宿ピカデリー)、その他を合わせて年間興収100億円、それに対して、池袋はグランドシネマサンシャインのオープン前は池袋全体で約30億円と3割しかなかったのです」と話すのは専務取締役の佐々木武彦さん。 池袋の東口エリアには池袋HUMAXシネマズ(全6スクリーン、全1464 席)がある上、今年7月3日にはTOHOシネマズ池袋(全10スクリーン、 1735席)がオープン。さらなるライバルの登場をどう見ているのか。佐々木 さんは「TOHOシネマズさんは業界最大手ですし、今回非常にいい劇場を作ら れ、これから競争していく相手としては大変な強敵であると思っております。た だ、新たな劇場の登場によって、池袋が他の街に対して競争力を持ち、お客さんが集まってくれるのは歓迎すべきことだと考えています。実際、7月以降、池袋全体の観客動員は新宿の5割を超える数字になっていると見ています。また、豊島区もグランドシネマサンシャインのあるサンシャイン通りの歩道を整備するなど今までサンシャイン60通りだけに集中していた、いわゆる線としての人の流れを、サンシャイン60通りと並行する通りや交差する通りの面として広げる考えを持っており、当館としてもその一翼を担っていきたいと考えています」と話す。 また、オープン当初から会員制度やネット予約環境の充実にも力を入れており、来場者の6割以上がネット予約だ。 森内さんは「うちを選んでくれる方は映画館の設備で選んでくださる方が多いと感じています。アニメファンからも上映のリクエストをいただいていますが、一番多いのは洋画ファンの方ですね。そんな中、コロナの影響でハリウッド大作が公開延期になっている現状には厳しい面もあります」と苦しい胸の内を明かす。 目下、大きな期待をかけているのは、 クリストファー・ノーラン監督のタイムサスペンス大作「TENET テネット」(9月18日公開)だ。同館では7月10日からノーラン監督の過去作4作を連続上映。「ダークナイト」(08年)のIMAXフルサイズ初の日本上映と「TENET テネット」のプロローグ上映が話題に。 「ダークナイト」は全国約100スクリーンで上映される中、全体の16%以上の興収を上げた。森内さんは「第2弾は『ダンケルク』、第3弾の『インセプション』は日本初の4DX上映もありますし、 IMAXはデジタルリマスター版となっています。普段はCSの映画チャンネルやストリーミングサービスで映画を見る方も、大スクリーンで映画館ならではの迫力を体験していただきたいですね」と話している。 日本初の「4DX Screen」 取材・文 = 平辻哲也 【グランドシネマサンシャイン公式HP】 1周年記念 プレゼントキャンペーン実施中 https://www.cinemasunshine.co.jp/theater/gdcs/ -
毎月リリースされる未公開、単館系作品の中から、「観たら必ず誰かに教えたくなる」作品を厳選してご紹介。劇場で見逃した作品や隠れた名作が多く並ぶレンタル店だからこそ出会える良作、小規模公開でありながら傑作といった、様々な掘り出し映画との出会いを映画専門家レビューと共に提供します! 疫病の原因は怪物だった!? 映画『ムルゲ 王朝の怪物』 インターフィルムより8月19日リリース (C) 2018 CINEGURU KIDARIENT & TAEWON ENTERTAINMENT. All Rights Reserved. 映画『ムルゲ 王朝の怪物』あらすじ 朝鮮・中宗22年。国に疫病が蔓延する中、仁王山に“物怪”(ムルゲ)が現れると噂が流れる。ムルゲに遭遇した人間は疫病にかかり悲惨な死を遂げることで民衆が恐怖に陥る中、11代中宗王の失権を目論む陰謀も動き出し……。 映画『ムルゲ 王朝の怪物』映画専門家レビュー 朝廷内の陰謀暴きと正体不明の巨大な怪物退治という2大クライシスに挑む武人を、キム・ミョンミンが華麗に表現。謎の疫病で人々は混乱に陥り、そのパニックを利用して権力を掌握しようとする者もあり、という“一番怖いのは人間”的展開に加え、雄叫びを上げながら全速力で追いかけてくるムルゲの姿が何ともおぞましい。次第に明かされるムルゲ生誕の秘密には切なくもゾっとさせられる。「パラサイト 半地下の家族」のチェ・ウシクの韓服姿と、韓国映画史上最もおぞましいモンスタービジュアルは必見。 前代未聞のチャレンジの行方は? 映画『ウディ・ハレルソン ロスト・イン・ロンドン』 トランスワールドアソシエイツより9月2日リリース (C) Lost in London, LLC 2017 映画『ウディ・ハレルソン ロスト・イン・ロンドン』あらすじ ロンドンで舞台に出演中のウディ・ハレルソンは、あるスキャンダルをめぐって妻に突き放される。仕方なくイランの王子を名乗る男とナイトクラブに向かうが、次々とトラブルを引き起こした挙げ句に警察に逮捕される。 映画『ウディ・ハレルソン ロスト・イン・ロンドン』映画専門家レビュー 「ゾンビランド」シリーズの実力派俳優ウディ・ハレルソンが、ロンドンで逮捕された体験を自身の監督・製作・脚本・主演で映画化。しかも、108分の尺を1テイク、1カメラ、全米550の劇場に生中継というムチャすぎる撮影スタイルを敢行した代物だというから俄然興味津々に。本篇開始前に流れる短いドキュメンタリーでは、リハで失敗する様子や本番直前のロケ地で事故発生と遂行困難なムードが充満。だからこそ見入ってしまうし、ヘタなサスペンスよりもハラハラ! やたら豪華な共演者にも注目を! 今の世界を予見したゾンビ映画 映画『CURED キュアード』 キノフィルムズ、木下グループ/ハピネット・メディアマーケティングより9月2日リリース (C) Tilted Pictures Limited 2017 映画『CURED キュアード』あらすじ 人を凶暴化させるウイルスの感染爆発から6年後のアイルランド。発見された治療法により、隔離施設から社会復帰を果たした元感染者のセナンは、亡き兄の妻とその息子が住む家に落ち着くが、感染時の記憶に苦しんでいた。 映画『CURED キュアード』映画専門家レビュー 数あるゾンビ映画の中でも、感染から回復した者とその後の世界をリアルに描いた、極めてユニークな作品。いわゆるゾンビ化していた時の記憶が残っているという元感染者の苦悩や、差別的な環境、排除しようとする人々の恐怖や嫌悪といった群集心理がリアルに描かれる。亡き夫の弟で元感染者の男を受け入れようと努める、エレン・ペイジ演じる女性の、感情を押し殺した悲しげな姿が印象深い。アイルランドという舞台も象徴的な、3年前の製作当時、現在の分断された世界を予見したかのような秀作。 新世代のサイコパスママ爆誕! 映画『グレタ GRETA』 TCエンタテインメントより9月2日リリース (C) Widow Movie, LLC and Showbox 2018. All Rights Reserved. 映画『グレタ GRETA』あらすじ NYの高級レストランで働くフランシスは、地下鉄で誰かが置き忘れたバッグを見つけ、その持ち主である未亡人グレタの家を訪ねていく。年の離れた友人として仲を深めるふたりだったが、グレタの行動がおかしくなり……。 映画『グレタ GRETA』映画専門家レビュー 母親を失った心の寂しさを埋めるように、グレタと親密になっていくフランシスが行き着く地獄に戦慄。親切で無知で上品な未亡人像は作りもので、何人もの少女を同じ手法で招き入れ、家には秘密の監禁部屋がありと、完全なるサイコパス像を怪演するイザベル・ユペールに慄きながらも笑ってしまうほど。ストーキングの末、バイト先で豹変するグレタに驚きを隠せないクロエ・グレース・モレッツの顔面にも目が釘付け。キーパーソンとなるルームメイトのマイカ・モンローまで、キャスティングの妙が光る新世代サイコパス物語。 悪魔も気になるフォロワー数 映画『バトル・インフェルノ』 ニューセレクトより9月2日リリース (C) 2019 THE CLEANSING HOUR, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 映画『バトル・インフェルノ』あらすじ 悪魔祓いのヤラセ番組をネットで生配信する、神父役のマックスと構成のドリュー。ある日、ドリューの恋人を悪魔に取り憑かれた役に配信を始めるが、本物の悪魔が彼女を乗っ取る事態が発生。しかし番組は急激にバズり出す。 映画『バトル・インフェルノ』映画専門家レビュー 悪魔祓いのヤラセ番組を配信して稼ぐニセ神父たちの前に、本物の悪魔が本番中に降臨して地獄を味あわせる、というフォロワー数命のSNS世代に刺さる本作。金と女に目がない俗物のニセ神父が、本物の悪魔に痛い目にあう姿は気の毒に感じますが、中盤以降、そんな彼の告白から悪魔祓いをする経緯が明かされ、俄かに感情移入度が増していきます。いけ好かない彼らが本物の悪魔祓いに挑んでいく終盤は、手に汗握る興奮の展開。そしてバズりにバズった番組の結末は……さすが悪魔、エグいことしやがります。 今そこにある脅威を活写! 映画『コロナウイルス -感染者-』 トランスフォーマーより9月4日リリース (C) Applied Art Productions, LLC. All Rights Reserved. 映画『コロナウイルス -感染者-』あらすじ 妻とのヨーロッパ旅行を終えたブルースは、咳や発熱に悩まされるように。新型コロナウイルスではなく風邪だと言い張り、療養中の父親や娘の家族と会う。やがて陽性と診断されたブルースは、隔離生活を強いられるが……。 映画『コロナウイルス -感染者-』映画専門家レビュー 世界最速か? 新型コロナウイルス“COVID-19”を題材にした作品が登場! といっても、パンデミックで人類滅亡が迫るみたいな大風呂敷を広げたパニックにはあらず。陽性と診断された普通の中年男性とその家族の運命を見つめた内容になっており、家族への感染の危険、治療費用によって生じる経済的困窮、周囲の人々から向けられる偏見や差別といった感染以外の問題も描いていて、リアルな恐怖を抱かずにはいられなくなる。コロナ禍を生き抜くのに必要なものは何かにも迫った、全人類必見作! ■前回の誰シネはこちらから