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映画検定合格者が語る「映画の知識を活かした仕事術」
2019年9月12日映画検定合格者が語る「映画の知識を活かした仕事術」 1~3級の合格者名を劇場スクリーンで発表 ※全国のイオンシネマにて 1919年(大正8年)に創刊した映画雑誌「キネマ旬報」は今年で創刊100年を迎えた。それを記念して、休止していた「映画検定」を大きくリニューアル、ヴァージョンアップして9月から4級試験がスタートしている。 検定の難しさ、ポイントや、映画の知識があることが仕事をする上でどういう意味を持つのかなど、実際に受験して高難度の2級に合格した代官山蔦屋書店のシネマ・コンシェルジュ、吉川明利氏に話を伺った。 自分が得た映画の知識がどのくらいかを知りたかった 映画検定4級試験開催中!受験期間は9/30まで! (c)キネマ旬報社 私が映画検定を受験したのは第1回目で、2 級だけ受験しました。これまでに自分が得た映画の知識が純粋にどのくらいかを知りたかったので、勉強はしませんでした。一生懸命勉強して合格しようとするのは違うと思っていましたから(笑)。もちろん、受験するにあたって、改めて映画を観直したり、勉強して知識を得たりするのは良いことだと思います。ただ、合格したらそれでおしまい、映画は観ないとしたらそれこそ本末転倒ですよね。 受験して感じたのは、ただ映画を観るだけでは合格するのは難しいということ。1、2 級に合格するには、映画史は確実に知らないといけないでしょう。約120 年の映画史を辿ることで、映画会社、監督、そして作品という細部に深堀りしていくことができます。私はそのほかにも原作本や、プロデューサーなどの映画人の伝記を読んだりして、自然に映画の歴史が分かるようになりました。 映画の知識がなかったら自分の存在価値はない 各級の全合格者へ授与されるデジタル合格認定証 (c)キネマ旬報社 私はこの映画の知識がなかったら自分の存在価値はないですよ。今あるのはこの知識のおかげ。問い合わせに来られたお客様に、パソコンで調べずにすぐにお答えできたりすると、信頼してもらえてリピーターになっていただけたりしますし、「お薦めの作品がありますか」というお客様に作品を選んであげて、次回来店された時に「あの映画本当に良かったよ」と言ってもらえる。このお店への貢献、私の存在意義ってことになるのかな。一方で、すごく怖い行為ですけどね。映画の良し悪しは人それぞれですから。 まずは、今まで映画を観てきて得た知識が、どのくらいなのかを知るために受けてみたらどうでしょうか。受験して分かることもあると思うんですよね。自分のよく知っていること、好きな作品の傾向がはっきり分かるはずです。私自身、主に最近の作品から出題される4 級は、もしかしたら受かんないかもって思いましたよ。1 級合格者たちに、4級問題を出してみたらどうなんでしょう(笑)。 制作:キネマ旬報社 映画検定4級試験開催中!受験期間は9/30まで。申込み方法や映画ファン必見の合格者特典などは公式サイトからチェック! 「映画検定」公式サイトはこちら↓ -
レオ&ブラピ語る「家族のような絆で結ばれているんだ」『ワンハリ』インタビュー
2019年9月7日レオ&ブラピ語る「家族のような絆で結ばれているんだ」『ワンハリ』インタビュー ◎8月30日(金)より全国にて公開 意外かもしれないが、映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの初共演作である。現在のハリウッドにおける最大のスターである二人の共演を実現しうる監督は、タランティーノをおいてほかにいるだろうか? と思うのは筆者だけではないはず。 レオが演じるリック・ダルトンは、かつてテレビ西部劇で一世を風靡し、今は下り坂気味の元スター俳優。ブラッド・ピットは、彼のスタントダブルを務めるクリフ・ブースを演じる。レオがリックというキャラクターについて語る。 クエンティンの演出が大好きなんだ レオナルド・ディカプリオ(以下、レオ) 「リックは 60 年代後半のハリウッドに現れた新しい俳優の典型だ。マッチョでなく、女性的な面もあるタイプ。その彼が昔ながらのハリウッドの価値観のなかで、自分の将来に不安を感じているんだ。ハリウッド文化のなかで生き延びられるだろうか? とね。そんな悩みを抱えながらも、どこか可笑しい人間を描くときのクエンティンの演出が僕は大好きなんだ」 レオとブラッド=リックとクリフの友情を印象づける息の合ったコミカルな演技は、今作の見どころのひとつだ。 二人は家族のような絆で結ばれているんだ 画像クレジット・キャプションを入れる レオ 「リックとクリフは、当時のハリウッドにはよくあった俳優と裏方のコンビだ。今はあまりないけどね。俳優というのは本来孤独な職業だと思う。だからこそ、裏方の制作関係者とは家族のような関係になるんだ。クリフはリックの沈んだ心を明るくしてくれる妻みたいな存在だ。二人はプロフェッショナルな関係だけれど、同時に家族のような絆で結ばれているんだ」 俳優として自信が持てず、ある映画の撮影中についにセットで泣き崩れるリック。今作でも屈指の名シーンと言えるだろう。 取材・文:高野裕子/制作:キネマ旬報社 記事の続きは『キネマ旬報』9月上旬号に掲載。今号では「タランティーノ、“聖林(ハリウッド)の闇”をぶっ飛ばす!」という『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の巻頭特集をおこなった。レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットやクエンティン・タランティーノ[監督・脚本]への取材記事はじめ、海野弘、畑名佳樹、吉田広明、鬼塚大輔らの寄稿記事を掲載している。(敬称略) 『キネマ旬報』9月上旬号の詳細はこちらから↓ -
ブラピ主演のSF映画など期待作が勢揃い‼ この秋見るべき新作映画10選
2019年9月6日ブラピ主演のSF映画など期待作が勢揃い‼ この秋見るべき新作映画10選 配給:20世紀フォックス映画 (c)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation まだ暑い日が続いていますが、気づけば9月。夜の寝苦しさは少し落ち着き、秋が少しずつ近づいてきている気がします。そしてこの夏は『天気の子』『トイ・ストーリー4』『ライオン・キング』などと注目作が相次いで公開され、映画館も賑わっていましたね。しかし、秋も負けないくらい面白い作品たちが沢山待機しています! 今回はそんな秋の新作映画の中から、特にお薦めしたい10本を厳選。各作品の見どころと共にご紹介します。ぜひ、チェックしてみてください。 【邦画編】 映画『記憶にございません!』 9/13公開 配給:東宝 (c)2019 フジテレビ 東宝 記憶喪失の総理大臣が世界を変える!? 三谷幸喜が10年以上温めていた企画を実現させたコメディ。国民から嫌われ、史上最低の支持率を叩き出した首相が、記憶喪失に陥って純朴で善良な男へ変貌したことによって巻き起こる騒動の数々を描く。主演の中井貴一を筆頭に、ディーン・フジオカ、佐藤浩市、草刈正雄といった豪華な面々が集結。クセありのキャラに扮した彼らの怪演がさらなる笑いを生む。 映画『アイネクライネナハトムジーク』 9/20公開 配給:ギャガ (c)2019「アイネクライネナハトムジーク」製作委員会 めぐり会いの連鎖が、奇跡を呼ぶ! 人気作家・伊坂幸太郎とミュージシャン・斉藤和義のコラボから生まれた小説集が原作のラブストーリー。仙台を舞台に、三浦春馬扮する“劇的な出会い”を待つ男と、思いがけない縁で彼とつながる人々が、奇跡を呼び起こす。伊坂からのラブコールを受けメガホンを執ったのは、『愛がなんだ』など恋愛群像劇の名手として注目を集める新鋭・今泉力哉。 映画『HELLO WORLD ハロー・ワールド』 9/20公開 配給:東宝 (c)2019「HELLO WORLD」製作委員会 日本を代表するクリエイターが集結 『ソードアート・オンライン』の伊藤智彦監督、『けいおん!』の堀口悠紀子、『正解するカド』の野﨑まどら日本を代表する才能が集結したオリジナル劇場アニメ。京都を舞台に、3ヵ月後に恋人になるという同級生の少女を救うため、10年後の未来の自分を名乗る青年と共に奔走する男子高校生の姿を描く、新機軸でハイスピードな青春SFラブストーリー。 映画『蜜蜂と遠雷』 10/4公開 配給:東宝 (c)2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会 音楽の神様に愛されるのは、誰か? 史上初、直木賞と本屋大賞をW受賞した恩田陸の小説を、松岡茉優、松坂桃李、森崎ウィン、さらに新星・鈴鹿央士の共演で映画化。元天才少女、努力家、貴公子、異端児のピアニストら4人が、国際コンクールでの闘いで葛藤し、刺激し合い、覚醒していく。一線級ピアニストの演奏に彩られ、華麗にして壮絶、エモーショナルでドラマティックな物語が展開。 映画『空の青さを知る人よ』 10/11公開 配給:東宝 (c)2019 SORAAO PROJECT “あの花”“ここさけ”トリオが再タッグ 『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』の長井龍雪監督×脚本家・岡田麿里×キャラクターデザイン・田中将賀チームが再集結した青春ラブストーリー。埼玉県秩父市を舞台に、女子高生・あおいとその姉・ あかね、そして、あかねの元恋人・慎之介と“しんの”と名乗る過去からやって来た18歳の慎之介の不思議で少し切ない関係を描く。 映画『楽園』 10/18公開 配給:KADOKAWA (c) 2019「楽園」製作委員会 2つの事件で、3人の運命が絡み合う ベストセラー作家・吉田修一の「犯罪小説集」を、『64-ロクヨン-』の瀬々敬久監督により映画化。Y字路で起きた少女失踪事件をめぐり、容疑者として追いつめられていく青年、傷ついた被害者少女の親友、村八分で孤立する男が事件から12年の時を経て運命を交錯させる……。“楽園”を求めた末に突きつけられる驚愕の真実に、心をえぐられる衝撃作。 洋画編 映画『アド・アストラ』 9/20公開 配給:20世紀フォックス映画 (c)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation ブラッド・ピットが放つ壮大なSF物語 ブラッド・ピットが製作と主演を務めたスペースアドベンチャー。地球外生命体探索に出るも、地球から43億キロ離れた遥か彼方で行方不明になっていた父親が生存しているのを知った宇宙飛行士が、父をめぐる謎に迫っていく姿を見つめる。深淵で壮大なストーリーに加え、トミー・リー・ジョーンズ、リヴ・タイラー、ドナルド・サザーランドら豪華な共演陣も見もの。 映画『ジョーカー』 10/4公開 配給:ワーナー・ブラザース映画 (c) 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c)DC Comics 最恐の悪役、ジョーカーの誕生秘話! バットマンの宿敵として知られるDCコミックス屈指のヴィラン、ジョーカーが主人公の話題作。大都会の片隅で大道芸人をしながら人々に笑いをもたらしていた男、アーサー・フレックが、いかにして世に恐怖をもたらす巨悪となったのかを追う。ホアキン・フェニックスがジョーカーを熱演、共演のロバート・デ・ニーロとの演技合戦も気になるところ。 映画『イエスタデイ』 10/11公開 配給:東宝東和 (c)Universal Pictures あのビートルズが存在してなかったことに!? 『スラムドッグ$ミリオネア』のアカデミー賞監督ダニー・ボイル×『ラブ・アクチュアリー』のリチャード・カーティス脚本で贈る壮大な音楽ドラマ。もしもビートルズを知る人が、世界で自分ひとりになってしまったら!? というユニークな設定から展開していく物語が、彼らの名曲の数々と共に描かれる。人気アーティスト、エド・シーランも本人役で出演。 映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』 11/1公開 配給:ワーナー・ブラザース映画 (c) 2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 大人になった彼らに再び“IT”が襲いかかる 全世界興収777億円超を記録したスティーヴン・キング原作のホラー『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の続編。前作で子供たちの命を奪う異 形の“IT”を倒した少年少女たちが、27年ぶりに故郷の田舎町に集結して再び現れた彼との戦いに挑む。成長した主人公たちを、ジェームズ・マカヴォイやジェシカ・チャスティンら実力派が演じるのも話題に。 いかがでしたでしょうか。このほかにも『マレフィセント2』『アナと雪の女王2』といった大ヒット映画の続編や『ジョン・ウィック:パラベラム』『ターミネーター:ニュー・フェイト』など人気シリーズの最新作も続々と公開されます。ぜひ、この秋も映画館で沢山の作品に出会ってみてください! 制作:キネマ旬報社 -
映画ファンから映画評論家になれたきっかけは映画検定
2019年9月6日映画ファンから映画評論家になれたきっかけは映画検定 映画評論家・松崎健夫氏 (c)キネマ旬報社 1919年(大正8年)に創刊した映画雑誌「キネマ旬報」は今年で創刊100周年を迎えた。それを記念して、休止していた「映画検定」を大きくリニューアル、ヴァージョンアップして9月から4級試験がスタートしている。 今回、本検定の総合プロデューサーに就任したのは、「映画検定」1級合格をきっかけに、映画評論家への道を切り開いた松崎健夫氏。これまでの検定からバージョンアップした部分、映画検定の魅力、受験者へのメッセージを伺った。 映画検定をきっかけに映画評論家として仕事をすることに (c)キネマ旬報社 ─「映画検定」総合プロデューサーに就任されたご感想をお聞かせください。 光栄です! 僕は元々、「映画検定」を受ける側だったので、まさか開催する側で参加できるとは思ってもいなかったですし、実は、「映画検定」を受けたときは、まったく映画の仕事はしていない状態だったんですね。それが、「映画検定」を受けたことがきっかけになって、何と最終的に映画評論家という仕事にたどりついた──。あのとき「映画検定」を受けていなかったら今の自分はないと思いますし、もし受けていなかったら? なんて思うと、怖くて夜も眠れないです(笑)。僕にとって映画検定はそんな存在なので、今回の機会には本当に感謝 していますし、光栄に思っています。 受けるだけで知識が広がり、映画をより楽しむことができる 1~3級の合格者名を劇場スクリーンで発表 ※全国のイオンシネマにて ─「映画検定」の問題について詳しくお聞かせください。 まず、「クイズではない!」ということですね。「映画検定」は受けるだけで知識が広がり、映画をより楽しむことができるようになる、というのが非常に大事な部分になります。例えば4択問題があったとして、その選択肢が何故その4択なのか? ということに対して選択肢そのものにも意味を持たせるようにしていきます。そして解答した上で解説を読むとその意味が分かる、そういったかたちにしていきたいと思っています。ですので、問題を解いて解説を読むと、その作品自体のバックグラウンドだけでなく、その作品の周辺のことも分かってきます。 ひとつの情報を点で見ていたものが、線や面で見ていくことによって、 映画に対する考え方だけでなく映画を観るということに関しても広がりができる。つまり、自分が知っていることを確認する作業もできるし、知らないことを知る場にもなる。そこも意識していきたい点のひとつです。もちろん、各級によっても意図が変わってくるのですが、最終的には映画を楽しむということは観ることだけではないことも知ってもらいたい。映画制作の裏側や、映画を作る人たちがどういうことを映画史の中で実践し、そのことが今の作品にどういうふうに反映されているのかを知ることによって、単に映画を観て面白い、面白くないだけで判断するのでなくて、「こういう作られ方を映画ってされているんだ」ということに気付くきっかけにもなってくれればいいと考えています。 どんどん映画の知識もついて、映画史の流れも分かってくる 映画ファン必見の合格者特典も盛りだくさん! (c)キネマ旬報社 ─今回、初めて受験される方も多いと思いますが、そういった方に向けてのメッセージをお願いします。 前段でちょっと難しいことを言ってしまったかもしれませんが(笑)、最初はやはり自分がどれぐらい映画に詳しいんだろうということの指標になるといいんじゃないかと思っています。例えば今、レビューサイトなども多くあって、我々のようなプロが書いているものと、一般の映画ファンとして書いているものの境がほぼないと言われたりしています。ただそれがどのくらいの指標で書いているのか、映画の知識がどのくらいあってのものなのか、ということが分からないので、映画検定の級を持っていることが分かれば、自身の書いたレビューの格付けにもなると思います。 今回はデジタル合格証ももらえるので、例えばSNSであげることで自慢できるというかアピールできるのもポイントのひとつじゃないかと思います。実は、自分もツイッターのプロフィール写真に入れてるんですけど、何コレって聞かれるので、目につくのは確かです(笑)。他にも、合格者特典として、映画祭の審査員になれたり、映画館のスクリーンで合格者の名前が上映されたり、映画雑誌「キネマ旬報」に合格者名が掲載されたりと、プレミアムな特典が盛り沢山。特に今回は、3級、4級の受験ハードルを下げていますので、とにかく多くの人にエントリーしてもらいたい。きっと受ければ受けるほど、上位の級を目指したくなるはずなので、そうしていくことで、どんどん映画の知識もついて、映画史の流れも分かってきて、さらには、映画理論、映画産業、映画制作の技術など、 貪欲に学んでいってもらって、1級合格という高いハードルを越えて、自分と同じように映画業界に入ってこられる人がいるといいなと思っています。 松崎健夫/映画評論家。テレビ・映画の撮影現場を経て、映画専門 の執筆業に転向。「ぷらすと」「japanぐる~ヴ」「ZIP!」などのテレビ・ラジオ・ネット配信番組に出演。映画の劇場用パンフレットなどに多数寄稿、 共著「現代映画用語事典」(キネマ旬報社刊)。 制作:キネマ旬報社 映画検定4級試験開催中!受験期間は9/30まで!申込み方法や映画ファン必見の合格者特典などは下記公式サイトから↓ -
「死ぬまでにこれは観ろ!」 樋口真嗣(映画監督)×松崎健夫(映画評論家)【後編】
2019年9月5日「死ぬまでにこれは観ろ!」 樋口真嗣(映画監督)×松崎健夫(映画評論家)【後編】 前編に続き、キングレコードの「死ぬまでにこれは観ろ!」シリーズを樋口真嗣、松崎健夫の両氏に語っていただいた。特撮を手掛ける樋口監督ならではの作品チョイスや、松崎氏の人生を狂わせた映画の話も登場する。 ※「死ぬまでにこれは観ろ!」シリーズとは・・・アクションやドラマ、ホラーなど多彩なバリエーションに富み、S級からZ級までを揃えた人気シリーズ。6年目を迎え、今年はブルーレイ93タイトル、DVD77タイトル、計170タイトルの洋画が揃う。 映画は人生を教えてくれる先生!? 松崎 このシリーズのマイベスト・テンに入る「恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ」(89)はそもそも好きな映画。これを劇場で観た時はまだ大学生になったくらいの頃で、夜な夜なジャズバーに入り浸ってピアノを弾くような生活をしたいと、辞めていたピアノを再び習い始めました(笑)。 樋口 人生を狂わせた映画ですね。 松崎 映画ってそういう影響を与えるんですよ。人生の先生。本作もおじさんと若い女の子の話だと思っていたのに、気付いたら彼らより僕の方が年上になっていた。 樋口 「スローターハウス5」(72)は不朽の名作としてのベスト? 松崎 「メッセージ」(16)を観た時、基本的には同じ話だと思って。ジョージ・ロイ・ヒルは「明日に向って撃て!」(69)「スティング」(73)の監督ですが、後の「ガープの世界」(82)で死生観みたいなものを描いていて。本作でもこの死生観を特撮も使わず、ほぼ編集で見せている。 樋口 実際にあるものだけでやっていますよね。 松崎 そんな中、SFを成立させられるのって凄いと思うんですよ。ただヒル監督はその後あまり撮れなかった。身体の調子も悪かったらしいですが、もっと作れる環境があったらさらに良い作品が観られたんじゃないかと。 樋口 そういう命みたいなものを削って込めている感じがしますね。 松崎 「スローターハウス5」は「インターステラー」(14)の映画の元にもなっているんじゃないかって考えるには凄くいい作品です。 樋口 これを今のメジャー・スタジオが巨大な予算で作ろうとしたらこんな作品ができるっていうのをクリストファー・ノーランがやっている感じがしますね。時間軸の行程とか、ルールを破って新しく再構築する先駆けというか。映画の実験が許された時代なんですかね、あの頃って。確か本作は小説がある原作ですよね。 松崎 カート・ヴォネガット・.Jr.ですね。この頃は言ってもCGがない時代。アナログな手法しかないと考えた時、例えば「戦争のはらわた」のサム・ペキンパーはスローモーションを多用していますが、最初から想定して、編集時にスローになるように考えながらハイスピードで撮っている。樋口さんも特撮はやっぱりアナログの方がいいですか。 樋口 そういう限られた中でどう見せるか、みたいなものがあるわけですよ。自分が演出に入ったのも結局それなんですよね。自分でやった方が前後のカットはこうすべきだとか考えられるし、決められる。昔、10本ぐらいのテープから特撮部分を抜き出し1本のVHSにまとめたことがあるんですが、特撮部分は少ないんですよ。結局、そのリアクションを見せることで間の尺を稼ぎ、実は凄くそぎ落とされた中でやっている。「スター・ウォーズ」第1作も、見た感じの豊かさは物凄くある。その後、間の含めてのここが一つのシチュエーションだと気が付いた。 松崎 ワンシーンとかワンシチュエーションとか、その中で際立つカットがあればいい。 樋口 マネーショットとも言う。 松崎 マイケル・ジャクソンのムーンウォークも凄く観た気がするのに、1曲のうちの数秒。際立つショットのために前後のシーンがあるって考え方ですね。 2本立てに心躍った名画座ラインナップ 樋口 「L.A.大捜査線/狼たちの街」のパッケージは新しくなりました? 松崎 これも当時のチラシと同じだと思います。 樋口 「ロス爆発寸前」っていう煽り文句がいかにもその当時らしい。 松崎 場面写真をとって、コラージュしたような。 樋口 この頃「ブレードランナー」(82)ロスみたいなのがありましたね。ボロごけしたので名画座でもやらなくなった。その後しばらく、キービジュアルに銃を構えていたり、ロングコート着たりする画がよく使われた。むしろこの頃、ビデオのない時代は好きな映画が観られない枯渇感がある。その代償行為として他の映画を観ることで映画体験が広がっていく。そういう時の名画座の存在はありがたかった。しかも2本立て。 松崎 僕は「ストリート・オブ・ファイヤー」(84)を観ると、同時上映で「フラッシュダンス」(83)とか「フットルース」(84)がついてくるイメージがあります。 樋口 青春の香り。 松崎 「ストリート・オブ・ファイヤー」の映像も地面が濡れていて「ブレードランナー」っぽい。 樋口 そうなんです。地面が濡れていて逆光。あと望遠のショットでガシャガシャやるとか、シャープな編集とか。今度の字幕は凄くいいんですよ。歌詞まで字幕が付いていて、知っているくせにボロ泣きできる。今観るとリテラシー的にどうかっていうか、相当男尊女卑感が強いけど、女子と一緒に観にいったら、世代も違うけど大喜びしていました。この映画は不滅だなってくらい。 松崎 「刑事グラハム/凍りついた欲望」(86)のジャケットも「ブレードランナー」感ありますね。 樋口 こういう作品を入れるとお客さんが集まるんですよ。 松崎 まさにそう。東京国際ファンタスティック映画祭で上映されたんですが、映画雑誌に掲載されたスチール写真1枚で物凄く観たくなった。「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」(85)もそう。本当にみんなが観たかどうかは分からないけど、ミッキー・ロークとジョン・ローンは知っていた。そういう現象って今はあまりないですね。 樋口 「不思議惑星キン・ザ・ザ」(86)はミニシアター公開ができるようになった最初の頃の映画。そういった再評価の仕方みたいなものも含めて観るといいかも。 松崎 長らく観られなかったですしね。チープだって言われたらそれまでですが、最後は何度観ても感動しちゃう。最初に劇場で観た時は僕のリテラシーも高くなかったので、どのくらい長いんだって思いましたが、ずっと観ていったことで印象が変わりました。 あと、エロのパートで言うと、「エマニエル夫人」(74)のシルヴィア・クリステルが主演した「チャタレイ夫人の恋人」(82)が初廉価で入りました。当時、彼女が発禁された小説のチャタレイ夫人をやるという企画が斬新でよかった。 映画ファンに愛された作品とは? 樋口 松崎さんとかぶっていない作品で言うと、「ハワード・ザ・ダック 暗黒魔王の陰謀」(86)はマイベストに入りますね。ジョージ・ルーカスが迷走しまくって何をやってもダメだった時の作品。ちっともいい映画じゃないですが、いろんな意味で必要な映画というか。 松崎 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(85)の流れから、リー・トンプソン主演作ですもんね。 樋口 あと悪役のジェフリー・ジョーンズ。「フェリスはある朝突然に」(86)の校長先生。この頃、しょぼい悪役みたいなのを必ずやっていた。主人公のアヒルさえ目をつぶれば非常にいい映画です。 松崎 その後「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(14)にハワード・ザ・ダッグは出ています。 樋口 標本のように(笑)。実はマーベル・キャラクター。マーベル・シネマティック・ユニバースの先駆けという見方もできる。あと「スペースバンパイア」は映画ファンに愛されていますね。音楽のヘンリー・マンシーニも素晴らしい。これはトビー・フーパーとしては異色作。 松崎 SFものでイギリスが舞台ですからね。「スター・ウォーズ」(77)や「2001年宇宙の旅」(68)がエルストリー・スタジオで作られているから、イギリスでSFを撮る文脈にも意味がある。 樋口 特撮は「スター・ウォーズ」のジョン・ダイクストラがやっている。あと、「ウイラード」(71)と「ベン」(72)でネズミ映画祭もできます。当時から観られなかった「マッドボンバー」(72)も観たいですね。さすがに観てない作品があるなぁ。 松崎 「ハネムーン・キラーズ」(70)もいい映画だって言われながら観ていない。本当にあった話を元にして、悪い男とその男にたぶらかされた、外見あまりぱっとしない女性が犯罪を繰り返していく話。トリュフォーが凄く褒めたとか。今回購入します(笑)。 樋口「チェリー2000」(87)も観てないなぁ。 松崎 これは珍品ですね。あとDVDしか出ない「数に溺れて」(88)は意外と劇場で観るよりパッケージ向きだと思っていて。数字が画面の隅っこに1から順番にずっと出てくるんですが、変なところに入っているので、画面を止めないと分からなかったりするんです。ブルーレイはあまり一時停止に向いていないですよね。 樋口 「プロスペローの本」(91)もDVDだけですね。ラインナップを眺めるだけでも話は尽きない。 松崎 今後も続けてラインナップをさらに充実させてほしいですね。 ㊧樋口真嗣(ひぐち・しんじ)/1965年生まれ、東京都出身。高校卒業後、東宝撮影所特殊美術課特殊造形係に入る。同年、ガイナックスに参加。95年「ガメラ 大怪獣空中決戦」で特技監督を務め日本アカデミー賞特別賞を受賞。監督作は「ローレライ」(05)「日本沈没」(06)「隠し砦の三悪人」(08)「のぼうの城」(12)「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」シリーズ(15)「シン・ゴジラ」(16)など。21年公開「シン・ウルトラマン」が発表された。 ㊨松崎健夫(まつざき・たけお)/1970年生まれ、兵庫県出身。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻修了。テレビ、映画の現場を経て、映画専門の執筆業に転向。数多くのテレビ、ラジオ、ネット配信の情報番組に出演。本誌ほか、映画の劇場用パンフレットなどに多数寄稿。キネマ旬報ベスト・テン選考委員、田辺・弁慶映画祭審査員、京都国際映画祭クリエイターズ・ファクトリー部門審査員などを務める。共著『現代映画用語事典』(キネマ旬報社刊)ほか。 文=岡﨑優子/制作:キネマ旬報社(キネマ旬報9月上旬号より転載) 「死ぬまでにこれは観ろ!2019」キング洋画170連発! <観て損なし!ぜんぶ凄く面白い!>9月4日発売 ブルーレイ:各2500円+税 DVD:各1900円+税 発売・販売元/キングレコード © 2019 KING RECORD CO., LTD.ALL RIGHTS RESERVED. 詳細はこちらから↓