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「死ぬまでにこれは観ろ!」 樋口真嗣(映画監督)×松崎健夫(映画評論家)【前編】
2019年9月4日「死ぬまでにこれは観ろ!」 樋口真嗣(映画監督)×松崎健夫(映画評論家)【前編】 アクションやドラマ、ホラーなど多彩なバリエーションに富み、S級からZ級までを揃えたラインナップで映画ファンの心を掴んできたキングレコードの「死ぬまでにこれは観ろ!」シリーズが今年で6年目を迎える。今年はブルーレイ93タイトル、DVD77タイトル、計170タイトルの洋画が揃う。そこで、長年同シリーズを購入、貢献してきたと自任する樋口真嗣監督と映画評論家の松崎健夫氏に、本シリーズの魅力を語っていただいた。 DVDを買うのはお布施のようなもの!? 松崎 このシリーズはご存じでした? 樋口 気になる作品が発売されるたびに買っていたらこのシリーズでした。ちなみに僕たちはコレクターじゃないですよ。帰依しているだけなので(笑)。並べといて「松崎さん、これ好きなんだ。分かってるね」みたいなことを示すもの。これは配信のプレイリストでは絶対分からない。あんなものに支配されてたまるかって、我々最後の世代の矜持です。 松崎 (笑)あがきですね。本当に自分が好きな作品に対して「私はちゃんとお金を払って所有しています」と、敬意を払っているところはあります。それにしてもDVD1900円、ブルーレイ2500円って安くないですか。 樋口 レーザーディスクでいくら使ったか分からない我々にすれば、この価格で高いと言っている奴がいたら、何を寝ぼけたこと言っているんだ!?と(笑)。 松崎 映画館に行ってパンフレットを買えばすぐこのくらいの金額になりますからね。しかも昔はビデオも1万5000~2万円していた。だから中高生の時は年に1本、選びに選んで買っていました。 樋口 神保町の三省堂書店の上階にAVコーナーがあって、確か2時間2000円くらいでビデオを借りて店内で観ることができました。そういう時代から我々はお布施を払い続けている。 松崎 「戦争のはらわた」(77)はメーカーを渡り歩いているので、変わるたびに買っています。画角や尺がちょっとずつ違う。それにしても「3枚買ったら1枚もらえる」ってあげすぎじゃないですか。 樋口 確か送られてくるんですよね。だから誰かにあげればいい。例えば、世代が違う後輩たちと飲んでいる時「あれ観てないのかよ」って言うのは簡単だけど、頭ごなしに言われたら普通は観ないですよね。それがある日、送られてきたら観ちゃうと思いませんか。ノブレス・オブリージュ、富を分配していく(笑)。そうすることで布教していくみたいなもの。「前話題になったこの作品、まだ観てないでしょ?」とか言って。好きな作品なら一人でも観た人を増やしたいから押し付ける(笑)。 松崎 映画の文化が広がる手法としてはいいですね。もらった1枚を人にあげて伝えるアイデアは素晴らしいと思います。 樋口 「死ぬまでにこれは観ろ!」を自分もやっていいんだみたいな。 たくさんある映画の中から何を勧め、選択するか 樋口 映画に関するシリーズのネーミングって「死ぬまでにこれは観ろ!」っぽいものも多いですね。 松崎 「観ずに死ねるか!」とか。 樋口 ハードディスクレコーダーで録ったものをブルーレイに焼くかどうか迷う映画ってありますよね。まぁいいやと消した瞬間、「俺はこの映画を多分一生観ないな」って気付くわけです。リモコンを操作している時に自分の人生の終わりを悟るという。それは否定したい。だとすると、ハードディスクレコーダーとかBD-Rじゃダメ。4Kテレビにした途端、画質の差が明らかになるし、ブルーレイを買っていつかは観なきゃ。 松崎 しかも旧作はどんどん増えていく。近年は年間1200本前後公開されているので10年で1万本近く。しかもパッケージは安く買えるし、レンタル店にもある、配信でも観られる。あまりにたくさんあって何を観たらいいか分からないって時に、今回のようにある程度キュレーションされているのは作品の観方として良いかなと思って。 例えば、お店によっては《厳選ホラー映画》のくくりで、「ファンハウス 惨劇の館」(81)「スペースバンパイア」(85)「悪魔のいけにえ2」(86)「マングラー」(95)と並べてディスプレーすれば、トビー・フーパーはホラー映画の人だと分かる。「ガーディアン/森は泣いている」(90)のウィリアム・フリードキンは刑事ものの「L.A.大捜査線/狼たちの街」(85)もラインナップに入っているし、「フレンチ・コネクション」(71)「エクソシスト」(73)を撮っていることをさらに知れば、ホラー映画の見え方も変わってくるかも。たくさんある中から勧めることが今必要なのかなと思います。配信系はまだお勧めが絞り切れていないし。 樋口 サムネイルがひどい。お勧めを見たところで、結局内容が伝わってこない。そうは言っても先ほどのリモコンの話じゃないですが、我々は番組表で選ぶじゃないですか。それは多分、子どもの頃から新聞のテレビ欄を見ているお蔭で、その番組がどんな内容かを察知する特殊な能力がある。 松崎 分かります! 何か匂いがしますよね。 樋口 そう。字だけで分かる。『ぴあ』のロードショー案内で、切手くらいの一枚の写真と解説だけで嗅ぎ分けた。恐らく今の子どもたちにも配信系のサムネイルから内容を嗅ぎ取る能力が備わるかもしれない(笑)。 紐づけて観ると映画はもっと楽しめる! 樋口 それにしてもこのシリーズのジャケット写真は封切時のポスターベースのものが多いですよね。70~80年代の映画配給会社が、なんとしてもこの映画を売ってやろうみたいな、〝売らんかな〟みたいな禍々しさがある。 松崎 ジャンルが違っても、売り切っちゃう強引さとか(笑)。 樋口 山師が作っている感じがしていいよね。今はアプルーバルを取らないとダメみたいなものばかり。「キラー・エリート」(75)は公開当時のビジュアルですね。「黒い牡牛」(56)もそうかな。このラインナップを見ると、スタジオ・システムが崩壊しかかった50年代後半から、1回立ち直るまでの20~30年くらいの作品が多いですね。混とんとした時代。語弊があるかもしれませんが、今だったら劇場公開されない作品も多い。しかもここに選ばれている映画だってごく一部。この俎上にも載らない映画ってたくさんあるわけです。 松崎 70年生まれの自分にとってはやはり80年代の中高生の時に観ていた映画が一番刺さります。 樋口 映画に飢えていたと言うか、映画なら何でも観ていた時代。 松崎 そうです、そうです。その頃の映画がやっぱり自分のベースになっていて。このシリーズの主な購入者が40~50代というのも、多分僕と同じ年代で10代の時に観た映画じゃないかなと思うんです。作品によってはパッケージ化されていなくて、長らく観られていなかったものもあります。 樋口 70~80年代の『ぴあ』に掲載されていた都内映画館のラインナップを観ているとクラクラします。「この2本立てでやってる!」みたいな。「こんな作品あったけど、結局パッケージ化されないままだな」という映画もあって。だから掘り出しタイトルはまだありそう。「ランブルフィッシュ」(83)ってパッケージ化されていました? 松崎 DVDだけ出ていました。昨年ブルーレイが発売されて今回が初廉価。「黒い牡牛」は昨年パッケージ化されたばかりだから初廉価は早いですよね。「黒い牡牛」は赤狩りで証言を拒否し逮捕されたダルトン・トランボが偽名で脚本を書き、ロバート・リッチ名義で原案を担当。アカデミー賞原案賞を受賞したけど、名乗り出ることができなった。「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(15)と紐づけると、いろんな作品を観る意味が出てきて面白いと思います。 例えば「IT/イット 〝それ〟が見えたら、終わり。」(17)の続篇が11月に公開されますが、第1作は高校生の入りが多かったんです。その子たちの中に感度のいい子がいて「(原作者の)スティーヴン・キングって聞いたことがある」と、これまで映画化された作品に手を広げ、「マングラー」まで辿り着ければ(笑)。 樋口 さらにスティーヴン・キング監督作「地獄のデビル・トラック」(86)まで辿り着いてほしいな。 (後編に続く…) ㊧樋口真嗣(ひぐち・しんじ)/1965年生まれ、東京都出身。高校卒業後、東宝撮影所特殊美術課特殊造形係に入る。同年、ガイナックスに参加。95年「ガメラ 大怪獣空中決戦」で特技監督を務め日本アカデミー賞特別賞を受賞。監督作は「ローレライ」(05)「日本沈没」(06)「隠し砦の三悪人」(08)「のぼうの城」(12)「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」シリーズ(15)「シン・ゴジラ」(16)など。21年公開「シン・ウルトラマン」が発表された。 ㊨松崎健夫(まつざき・たけお)/1970年生まれ、兵庫県出身。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻修了。テレビ、映画の現場を経て、映画専門の執筆業に転向。数多くのテレビ、ラジオ、ネット配信の情報番組に出演。本誌ほか、映画の劇場用パンフレットなどに多数寄稿。キネマ旬報ベスト・テン選考委員、田辺・弁慶映画祭審査員、京都国際映画祭クリエイターズ・ファクトリー部門審査員などを務める。共著『現代映画用語事典』(キネマ旬報社刊)ほか。 文=岡﨑優子/制作:キネマ旬報社(キネマ旬報9月上旬号より転載) 「死ぬまでにこれは観ろ!2019」キング洋画170連発! <観て損なし!ぜんぶ凄く面白い!>9月4日発売 ブルーレイ:各2500円+税 DVD:各1900円+税 発売・販売元/キングレコード © 2019 KING RECORD CO., LTD.ALL RIGHTS RESERVED. 詳細はこちらから↓ -
切ない恋物語から40年前の名作まで 9月の「誰かに教えたくなるシネマ」
2019年8月30日毎月リリースされる未公開、単館系作品の中から、「観たら必ず誰かに教えたくなる」作品を厳選してご紹介。劇場で見逃した作品や隠れた名作が多く並ぶレンタル店だからこそ出会える良作、小規模公開ながらの傑作など、様々な掘り出し映画との出会いを映画専門家レビューと共に提供します! 過酷な運命を生きるふたりの愛の軌跡 映画『ビール・ストリートの恋人たち』 バップより8月21日リリース (C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved. 映画『ビール・ストリートの恋人たち』あらすじ 幼い頃から共に育ち、自然と愛を育んでいった19歳のティッシュと22歳のファニー。黒人が厳しい差別を受けている時代、苦労してふたりで住む家を見つけた彼らだが、その矢先、ファニーが無実の罪で逮捕されてしまう。 映画『ビール・ストリートの恋人たち』映画専門家レビュー 恋人が無実の罪で捕まり、さらに彼女は妊娠中という、なんとも過酷な状況から始まる本作。幼馴染みで自然と互いを意識し、徐々に距離を縮めていくふたりの恋物語が回想として挟まれ、その初々しさに癒されるものの、彼らが直面している厳しい現状を思うと胸が締め付けられる。そんな中決して諦めず、彼を励まし続けるティッシュの強さは、唯一この物語に希望を与えてくれる存在。めでたしとは言い難いが、ラストに映る彼らの“家族の風景”は美しく、幸せに満ちていた。 災害を呼ぶ家族、今度は大地震。 映画『THE QUAKE/ザ・クエイク』 インターフィルムより8月23日リリース (C)2018 FANTEFILM FIKSJON AS. ALL RIGHTS RESERVED 映画『THE QUAKE/ザ・クエイク』あらすじ ノルウェーのガイランゲルを襲った巨大津波から3年。地質学者のクリスチャンら家族は、オスロで生活していた。ある日知人の研究者が事故で亡くなり、クリスチャンは彼が残したデータから新たな地殻変動の予兆を察知する。 映画『THE QUAKE/ザ・クエイク』の映画専門家レビュー 巨大津波に巻き込まれたあのノルウェー人一家が、今度はM8の大地震に巻き込まれる! 前作『THE WAVE /ザ・ウェイブ』のさらに上を行く衝撃に開いた口が塞がらない。冒頭から予期せぬトンネル事故が起こり、残されたデータに引き寄せられるパパ。するとやっぱり……予想は大的中。49階というとんでもない高さで宙ぶらりんになった娘を、パパがまさかの方法で救出を試みるなど、目を疑う衝撃シーンのオンパレードで心臓バクバク。今作でも自責の念に駆られるパパの行く末が心配だ。 気鋭・藤井道人監督の最注目作 映画『光と血』 「光と血」製作委員会/オールイン エンタテインメントより8月25日リリース (C) 「光と血」製作委員会 映画『光と血』あらすじ いじめを受ける同級生に手を差し伸べる女子高生、恋人と婚約を果たした青年、仲の良い弟を持つ女性。それぞれのささやかな幸せはある日突然奪われ、絶望の淵に追い落とされた彼らの運命は加害者をも巻き込み交錯していく。 映画『光と血』の映画専門家レビュー 愛する人を奪われた者、罪に冒された者、罪を為した者……。ただ人並みに生きることすら困難な人たちが、それでも生きていく姿を圧倒的なリアリティで描いた本作。ほぼ無名の役者陣から、これ以上ないほどの演技を引き出した監督・藤井道人の恐るべき才能。嘘のない脚本を基にした嘘のない演技は、決してすべてでないが、憎むべき加害者に対しての共感さえも喚起させる。現実の悲しむべき事件・事故を重ねたテーマから、当事者たちの想いの一片を感じさせる意味でも価値ある秀作。 “人生“という名の荒野にて 映画『荒野にて』 ギャガより9月3日リリース (C) The Bureau Film Company Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2017 映画『荒野にて』あらすじ 父を失い、天涯孤独となった15歳のチャーリーは、可愛がっていた競争馬のピートを連れ、トラックで逃走する。しかし、トラックが故障し、ピートと共に荒野を歩いて叔母の住む街を目指すが、さらなる別れが訪れる。 映画『荒野にて』の映画専門家レビュー 決して豊かではないが、父とふたりで平和な日々を送っていた青年に突如訪れた別れ。目の前で大切な人を救えなかった悔しさと天涯孤独となってしまった寂しさが、まだ15歳の青年に重くのしかかる。そして救いを求めて伯母の元を目指す彼に、またしても悲しい別れが訪れるが、それでも力強く、自らの力で生き抜いていく姿には感服。思春期の繊細な感情を見事に体現した新生チャーリー・プラマーの圧巻の演技を始め、作品の持つ“静かだけど力強い空気感”にたっぷり浸れる1本です。 豪華キャストがイタリアで大暴れ! 映画『レイダース 欧州攻略』 アクセスエーより9月3日リリース (C) 2018 Block 2 Pictures Inc. All Rights Reserved. 映画『レイダース 欧州攻略』あらすじ 凄腕エージェントのリン・ザイフォンと美しき請負人チャオインは、長年のライバルで互いを意識し合う関係。“神の右手”と呼ばれる秘密集積回路チップが何者かに盗まれると、ふたりはCIAから要請を受けミラノへ向かう。 映画『レイダース 欧州攻略』の映画専門家レビュー 豪華アジアンスターたちが、イタリアを駆け巡る! そのロケ地の美しさに旅行気分で見られるアクション満載の痛快作。元EXO のクリス・ウーが衛星ミサイルも発動できる凄腕ハッカーを演じ、そのスタイルを活かしてアクションを惜しみなく披露。時折見せる怪訝そうな表情もまた最高。トニーを愛するライバル関係のティファニー・タンも美人で、ふたりのどきっとするラブシーンも見逃せない。超機密チップを盗んだ女の正体が明かされると、冒頭からの伏線がすっきり回収され、これまた爽快。 恐怖の報酬とはいったい何か 映画『恐怖の報酬 【オリジナル完全版】』 キングレコードより9月18日リリース Copyright©MCMLXXVII by FILM PROPERTIES INTERNATIONAL N.V. All rights reserved. 映画『恐怖の報酬 【オリジナル完全版】』あらすじ 南米のある国に流れ着いた4人の犯罪者たち。ジャングルの奥地にある油井施設で発生した火災の消火のため、消火用のニトログリセリンをトラックで運ぶことになった彼らは、衝突しながらも道なき道を進んでいくが……。 映画『恐怖の報酬 【オリジナル完全版】』の映画専門家レビュー 約40年前の作品なので、当然CGもなくすべてが本物。爆発炎上する油井、周りの施設も本物。本当に巻き込まれて大丈夫ですかっていう人もいたり、あらゆる意味で伝わってくる本物感に、異常に集中して見入ってしまう。さらに僅かな振動で爆発するニトロを積んだトラックが道なき道を走破していく様は絶えず緊張させられる。4人の男たちは汗と泥にまみれ、目だけをギラつかせて暑苦しいことこの上無く、否応なく彼らの地獄の道行きに引きずり込まれる感覚はもうアトラクションです。 ■前回の誰シネ(8月リリースタイトル)はこちらから -
『君の名は。』から3年 新海誠の新たなセカイとは?
2019年8月16日『君の名は。』から3年 新海誠の新たなセカイとは? ◎全国にて公開中 (C)2019「天気の子」製作委員会 前作『君の名は。』に続き、『天気の子』のプロデュースを務めたのは、川村元気。いまや日本屈指のヒットメーカーとして押しも押されもしない存在といえる彼が、今作で果たした役割とは? ワールドワイドな展開を目指して再びタッグを組んだ新海誠監督との共同作業、そして一筋縄ではいかない新海作品の魅力について、たっぷりと話を聞いた。 王道のエンタテインメントを入り口に (C)2019「天気の子」製作委員会 ―はじめに企画の経緯からうかがえるでしょうか。 川村元気(以下、川村) 『君の名は。』(2016年)が公開されて、僕らの想像をはるかに超えた世界的なヒットになり、各国の映画祭でも賞をいただいたりしていく中で、「次に何を作ろうか」という話はずっとしていたんです。宮崎駿監督作品で言えば、『もののけ姫』(1997年) のようなことが起きてしまったわけだから、次に狙うのは『千と千尋の神隠し』(2001年)。だとすると、次は新海誠の作家性が爆発したものだろうか、と個人的には思っていました。でも新海さんから出てきたのは、「王道のエンタテインメントをやってみたい」という言葉だったんです。 ―その後、プロットをまず新海監督が書かれた? 川村 はい、今のストーリーの原案のようなものを最初にいただきました。ただ、「王道のエンタテインメント」を入り口としながらも、結論としては「賛否両論」を呼ぶものになっているなと感じました。 ―製作報告会見でも、新海監督は「意見が分かれる映画」とコメントされていましたね。 川村 ただ、昨年末の制作発表会見ではまだ「ド真ん中のエンタテインメントをやる」と宣言していたんですよ。だから新海さんの中にも矛盾のある作品なんだと思います。ド真ん中の泣いて笑えて楽しい感動エンタテインメントも本音、結論が賛否分かれるだろうというのも本音。そうした二律背反した感情を不思議なバランスで保ち続けているところが、新海誠という人物の作家性なのかなと思っています。 最近は監督とプロデューサーとが逆転している (C)2019「天気の子」製作委員会 ―前作『君の名は。』をめぐっては、川村さんのプロデュース力が、個性的な作家である新海監督をメジャーに導いた、と語られがちでした。その噂のいくつかはすでに否定されていますが……。 川村 よく誤解した噂が流れていましたよね。『君の名は。』のラストは、もともと『秒速5センチメートル』(2007年)的なすれ違いだったのを川村が変えさせたものだ、みたいな(笑)。あれは新海さんが最初から決めていた展開です。むしろ最近は、新海さんのほうがエンタテイナーで、僕が小難しいことをやらせようとする側、つまり監督とプロデューサーとが逆転していると感じることが多いくらいです。 ―ただ川村さんが刺激を与えられた点というのも多々あったと思うのですが。 川村 そうかもしれません。ただ、『君の名は。』の取材のときに新海さんが「ここは川村さんが考えたアイディアです」と何度か仰ってましたが、僕自身は全然覚えていなくて(笑)。全員のアイディアが、スムージーのような状態になっているんですよ。ずっと一緒に考えてきたので、どれが誰の意見かはもうわからない。だから僕がやったとはっきり言える大きなことといえば、RADWIMPSと新海さんを出会わせたことくらいでしょうね。 変更の可能性も考えていた!? RADWIMPSの音楽 (C)2019「天気の子」製作委員会 ―今作も、RADWIMPSさんが、劇中歌と劇伴を含む全ての音楽を担当されています。 川村 もともとは変更の可能性も考えていました。けれども新海さんが(RADWIMPSの野田)洋次郎さんに、依頼ではなく感想を求める意味で脚本の初稿を送ったところ、返事として書き下ろしの曲が送られてきて(笑)。そうして届いた曲の一つが主題歌となった〈愛にできることはまだあるかい〉なんですが、それを聴いたとき、「これでこの映画は大丈夫だな」と感じました。タイトルからして驚きました。ずっとラブストーリーを描いてきた映画監督に対して、その言葉を投げかけるのかと。そこもまた矛盾があって面白いなと思いました。 またRADWIMPSの曲が上がると、それに触発される形で、主人公たちのセリフも変わっていきました。ミュージカル的な、面白いシナジーが働いたと思いますね。 ―新海監督、川村さん、RADWIMPSさんのほかに、今作のキーパーソンとなった方はいるのでしょうか? 川村 キャストの2人、醍醐虎汰朗くんと森七菜さんに救われたところがありますね。近年の大規模公開のアニメ映画では、有名俳優を主演に起用し宣伝効果を高めるのが一般的ですが、今作ではより役に合うことを重視したいと、2000人規模のオーディションから醍醐くんと森さんに決めました。結果的に、20代の俳優が演じる10代の安定感とは違う、ちょうど天気のようにコロコロと変わる不安定な、しかし実際の10代だからこそ出せる生々しい演技を録ることができました。 『天気の子』というタイトルについて (C)2019「天気の子」製作委員会 ―ちなみに『天気の子』というタイトルはどうやって決めましたか? 川村 新海さんと飲みながら決めました(笑)。はじめから「天気」は入れたいと、「天気雨の君」や「天気予報の恋人」などが候補にあがっていたんですが、「この作品は単純なラブストーリーなのか?」と考えたときに、そうではない気がしたんです。 まず『君の名は。』がヒットした結果、この映画は幸か不幸か、全世界へ向けて作らなければいけなくなった。そうなった以上、全世界の人にとって共通の切実なテーマを選ぼう、という中で新海さんから出てきたのが「天気」だった。天気は地球規模の巨大な現象で、これだけ科学技術が進んでも、人は天気に振り回されて生きている。それどころか、未だに天気予報すらろくに当てられないでいる。 だからそうしたユニバーサルなテーマに臨む以上、タイトルも「天気雨の君」や「天気予報の恋人」といった単にヒロインである(天野)陽菜を表すだけでなく、同時に、天気に振り回されながら、そこで生きるしかないわれわれ人類というものも示唆する、象徴性を持ったものにするべきだろうと。そうして新海さんと相談する中で出てきたのが『天気の子』でした。 記事の続きは『キネマ旬報』8月上旬号に掲載。今号では「新海誠の新たなセカイ『天気の子』」という巻頭特集をおこなった。本作で声優を務めた醍醐虎汰朗と森七菜の対談や新海監督を支えたスタッフ陣、RADWIMPS[音楽]、川村元気[プロデューサー]らに取材をおこなった。(敬称略) 川村元気(かわむら・げんき)/1979年生まれ。26歳で手掛けた『電車男』(2005年)を皮切りに、映画プロデューサーとして『告白』(2010年)、『モテキ』(2011年)など数々のヒット作を放つ。その傍ら、2012年に「世界から猫が消えたなら」で小説家デビュー。『ドラえもん のび太の宝島』(2018年)では脚本を務める。公開待機中の作品として『空の青さを知る人よ』『Last Letter』、脚本担当作『ドラえもん のび太の新恐竜』など。 取材・文=高瀬康司/制作:キネマ旬報社 『キネマ旬報』8月上旬号の詳細はこちらから↓ -
大人顔負けの表現力! 子供たちが想いを込めた「映画感想文」
2019年8月15日大人顔負けの表現力! 子供たちが想いを込めた「映画感想文」 (C)2018 スタジオ地図 「映画感想文コンクール 2019」応募受付中! 映画館を出ると、映画を見終わった人々が「面白かったね」「泣いちゃったね」などと語り合っている光景をよく目にしますが、このように誰かと“楽しさを共有できる”喜びというのは、まさに映画の醍醐味だと思います。その喜びを言葉で綴ることで、作品の魅力をさらに深め、子供たちの表現力や文章力を養う糧としてほしい、と願いを込めて始まった「映画感想文コンクール」。 毎年、全国から子供たちの個性溢れる感想文が多く寄せられます。そして今回は、9月13日(金)に迫った応募〆切を前に、過去の応募作文の中から「沢山の人に読んでほしい!」と感じた作文をキネマ旬報社がピックアップ。その作文のどんなところが心に響いたのか、推薦者のコメントを添えてご紹介します。是非、子供たちが感じた映画の魅力に触れてみてください! ※各作文は原文のまま掲載しています 題名「まもりたいちきゅう」 発売元・販売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン 鑑賞作品『風の谷のナウシカ』 (小学2年生 女の子) 『風の谷のナウシカ』を見て、はじめわたしは、これはむかしのお話だと思いました。村にビルなどがないし、ひとびとがランプなどをつかっていたからです。 まい日、あつい日がつづいています。テレビを見ても、今日もあついというニュースばかりです。そういうニュースを見るたびに、おとうさんとおかあさんが「ちきゅうはどうなるの」と、しんぱいそうに話しています。わたしたちがまい日れいぼうをつかったりすることで、これからどんどん、ちきゅうがあつくなると、人間がちきゅうにすむことができなくなるそうです。わたしは、人間がすむことができない、「ふかい」がひろがっていく、ナウシカのお話に、にているなあと思いました。 『風の谷のナウシカ』は、むかしのお話なのではなく、みらいのお話なのかもしれないと思い、すこしこわくなりました。わたしたちのちきゅうをまもりたいです。 ◆推薦者 コメント 子どもの頃に観た作品を大人になって改めて見て、やっとその作品のメッセージに気付くということがよくある。本作も私にとってそんな作品だっただけに、彼女が自分なりにしっかりそのメッセージを読み取り、かつ現代の環境問題に触れながら自身の考えを述べていることにとても感心した。そしてその考えを最終的に「ちきゅうをまもりたい」という意志としてアウトプットする思考も素晴らしい。この感想文から映画の見方や意義を再認識することができた。 題名「未来から来た妹」 発売元・販売元:バップ 鑑賞作品『未来のミライ』 (小学6年生 男の子) ぼくはひとりっ子だ。だから、もしあの時ぼくにも兄弟が生まれていたら、こんな感じだったのかなと思いながら映画を見ていた。 「あの時」とは、ぼくがくんちゃんと同じ4才の時だ。ぼくにも兄弟ができるかもしれないという出来事があった。でも、残念ながらぼくの兄弟は、ぼく達に会いに来てくれる事はなかった。今でもその話をすると、母はさみしそうな悲しい顔をする。前に一度だけ、もしあの時ぼくに兄弟が生まれていたら、男の子と女の子のどちらだったと思うか母に聞いた事がある。母は迷わず「女の子だったと思う。」と言った。ぼくもそう思っていた。なぜなら、生まれて来る日が祖母の誕生日と全く同じだったからだ。 ぼくの祖母は、映画のくんちゃんとは性別も歳も違うけど、みんなから「くんちゃん」と呼ばれている。祖母は、ぼくが4才の時に突然倒れた。発見があと少し遅ければ助からなかったかもしれなかったが、奇跡的に助かった。まわりのみんなは、ぼくの兄弟が祖母を守ってくれたんだと言っていた。それは、祖母が倒れる数ヶ月前にぼくの兄弟が天国に行ってしまっていたからだ。祖母は倒れた時の後遺症で、右手足に麻痺が残り、施設に入っている。でも車イスで脱走しようとするほど今は元気にしている。そう、映画のくんちゃんと同じで、ぼくの祖母のくんちゃんもやんちゃなのである。 ぼくは、映画を見終わった後、母に「ねぇおばあちゃんて、もしかしたら未来から来たぼくの妹なんじゃないかな。」と言った。母は一瞬驚いたような顔をしたが、ぼくの手を取り、「そうね、じゃあ明日歳を取った妹に会いに行きますか。」と言ってにっこり笑った。 人の命は過去から未来へとつながっていくものだと思う。でもぼくは過去でも未来でもない今を生きている。だからこそ今を大切にそして楽しく生きて行こうと母の手を強くにぎりしめながら思った。 ◆推薦者 コメント この世に存在していたかもしれない自身の家族について、作品を通して現実と向き合う心の強さを冒頭から感じる。その妹と祖母の誕生日が奇跡的に同じことから、家族や血縁の連鎖は“尊い偶然”ですべて繋がっているという、その想像力の逞しさには拍手を送りたい。過去と未来が繋がるその永遠のループの中、前世と後世を通して鎖のように繋がった「個」が家族である、という本作のメッセージを十二分に理解した素晴らしい感想文だ。 題名「雨がはかせてくれた靴」 発売元:コミックス・ウェーブ・フィルム/販売元:東宝 期間限定サービスプライス版 DVD(2,300円+税)好評発売中 鑑賞作品『劇場アニメーション 言の葉の庭』 (中学3年生 女の子) 「夢は逃げない。逃げるのは自分。」講演会で講師の先生が熱弁されていた言葉に号泣するクラスメートもいた。それなりに感動したもののどこか冷めた気持ちでその言葉を聞いていた自分がいた。そもそも夢を持っていない私は逃げる必要なんてない。元々抱いていた焦りと空虚感が更に大きくなった気がした。 母はその日もこの映画を見ていた。これで何回目なのだろう。いつものように聞こえてくる雨の音と若い男子の少しかすれた声。そして、エンディング曲に続く。 「♪どしゃぶりでもかまわないと、ずぶぬれでもかまわないと。」 母が若い時から聴き続けている「レイン」と言う曲。母は感動的なラストシーンとこの曲が大好きでこの映画を見ているんだと言っていた。「この曲を作った千ちゃんは、五十歳手前でジャズピアノの学校に行ってね、今は夢をかなえてジャズピアニストになってるよ。」この話も何回も聞いた。が、その日に限っては「夢」という言葉が耳にさわって、母の話をスルーしてしまった。すると何を思ったか母は、 「もう一回初めから見るから一緒に見ようよ。」 と言ってきた。別に断る理由もなく、言われるがままに隣りに座り、流れる映像を見つめた。ちゃんと見るのは初めてだ。 四十六分で終わる短い映画。靴職人になる夢を持ちそのために少しずつ前に進みながらも自分が今いる状況に違和感を抱くタカオ、一方夢であったであろう教職にいながらも学校に行くのが辛く歩みを止めてしまったユキノ。二人が東屋で過ごす時間は、なぜか私に安らぎを与えてくれた。タカオは夢への思いを吐露しユキノは止まっていた一歩を歩き出す練習をその東屋でしていた。 「そんな時間があっていいんだよ。」 この映画が私にそう話しかけた気がする。私の心の鉛が取り除かれ、少し先の道にほのかな光が射しているのが見えた。 いつまで続くかわからない、無意味なようでそうでは無い時間を私は過ごす。この映画が私にはかせてくれた靴をはいて一歩一歩、つま先を前にして夢さがしのために歩いていきたい。そんなことを考えながら見ていると、また聴こえてきた。 「♪どしゃぶりでもかまわないと、ずぶぬれでもかまわないと。」 ◆推薦者 コメント 逃げるだけの夢さえ手にできずに、焦りと空虚感を抱いている少女が、本作を通じてある種の救いを得るという、映画のような話に引きつけられる。本作が彼女に与えた、いまの自分を肯定する力を靴に例え、これからの歩みがきっと明るいものになると想起させるところや、主題歌の歌詞で軽やかに締め括る表現。感想文としてだけでなく、ひとりの少女の成長譚としても読むことができる文章に、中学生の部でグランプリを受賞した双子の姉に負けない賞を贈りたい。 子供たちの感想文はいかがでしたでしょうか。 映画感想文とは、子供たちが映画を見て感じたことを、彼ら自身の言葉で自由に綴ることができる取り組みであり、子供たちの感性を活かし、養うものでもあります。そんな「映画」を題材にした学びの機会として、是非、多くの子供たちに映画感想文にチャレンジしてもらいたいと思っています。コンクールの応募方法など、詳しい情報は公式サイトに掲載していますのでご確認ください。皆さんのご参加を心よりお待ちしております! 制作:キネマ旬報社 今年の夏は、「映画感想文コンクール」に挑戦してみよう! 過去のグランプリ作文をはじめ、今年の開催概要は「映画感想文コンクール」で検索。 -
映画『天気の子』の舞台裏とは? 新海組を支えるスタッフが語る
2019年8月7日映画『天気の子』の舞台裏とは? 新海組を支えるスタッフが語る ◎全国にて公開中 (C)2019「天気の子」製作委員会 『雲のむこう、約束の場所』(2004年)以来、撮影や色彩設計として長年にわたり新海ワールドのビジュアルを支えてきたキーパーソン・三木陽子。今作では助監督として新海誠監督を全面的にサポート。さらにデジタル表現面での理想の追求に尽力するとともに、色彩設計として、「作品の世界観にあわせて、カットごとにキャラクターの色彩を決め込む作業」を担当している。セクションをまたいで新海を支える三木に、今作のデジタル表現を中心に話を聞いた。 ―助監督としてすぐ傍でサポートされてきた三木さんから見て、今作での新海監督のこだわりはどこでしょうか。 三木 映像面では「曇り」と「雨」の表現が挙げられると思います。基本はこれまでの延長線上ですが、「天候の調和が狂っていく時代」が舞台なため、曇りや雨のシーンがすごく多いんですね。そうした中で、どう映像的に華やかに見せるか、そして降り続ける雨をどう表現するかについては、試行錯誤を繰り返しました。一口に曇りや雨と言っても、時間帯ごとに色合いも変われば降り方も様々です。私も色彩設計として、美術監督の滝口(比呂志)さんと一緒にウンウン唸りながら作っていました。 「曇り」や「雨」の表現へのこだわり (C)2019「天気の子」製作委員会 ―曇りや雨の表現というと、『言の葉の庭』(2013年)が思い浮かびます。 三木 そうですね。特に『言の葉の庭』はフィニッシュワークも監督ご自身で手がけられていて、新海さんの映像面でのこだわり、目指す表現が詰め込まれた作品だと思います。今作でも、『言の葉の庭』を意識しながら詰めていったシーンがたくさんあります。 ―具体的にはどのようにアプローチしたのですか? 三木 まず雨粒の表現をより魅力的に見せるために専門的に取り組む、李(周美)さんを中心としたVFXチームを立ち上げています。また作画チームとも、雨を表現するうえでどうセル分けするか、どうダブラシ(多重露光)処理をするかといった技術的な相談を事前にさせていただきました。撮影監督の津田(涼介)さんとも、たくさん登場する透明傘の処理のバリエーションを作ったり、水滴も単に青系で塗るのではなく、奥にある背景の色味も反映された表現ができるよう調整を繰り返したりしました。 「監督主導で作るのではなく、スタッフに任せる」 (C)2019「天気の子」製作委員会 ―新海監督と言えば、アニメ業界では「撮影(デジタルコンポジット)」の作家として知られています。今作は『君の名は。』以上に撮影処理に力が入っているように感じました。 三木 新海さんは今作で、「監督主導で作るのではなく、まずはそれぞれのスタッフにお任せする」という挑戦をしています。その意味で、撮影監督の津田さんの色も強く出ているのかもしれません。 ―では三木さんの色はどこに出ているのでしょうか? 三木 色彩設計の部分ですね。これまでの新海さんの作品では、ご自身が配色のベースを決められていたのですが、今作ではビデオコンテをもとに、まずは私に作ってみてほしいと。 なので、美術監督の滝口さんによる背景美術を踏まえつつ、私がキャラクターの配色を決め、その両方を見て撮影監督の津田さんが撮影処理を作り込むという流れで、各スタッフが新海さんの目指す映像を想像しながら制作を進めていきました。なのでキャラクターには私の色が出ていると思います。 新海監督が今、若い人たちに一番伝えたいこと (C)2019「天気の子」製作委員会 ―三木さんから見た、新海さんの目指す映像とはどのようなものでしょうか。 三木 よく写実的と言われると思うのですが、私から見ると、新海さんの主観的な印象を画面に落とし込んだ映像のように感じます。たとえば光の当たり方一つとってもそうです。構図自体は写実的でも、順光のすぐ隣が逆光の色味になっていたりしますからね。だからスタッフにとっては、求める画を読み取るのが大変なんですが(笑)。 ―三木さんから見た本作の見どころを教えてください。 三木 まず最近の新海さんの作品は、キャラクターがどんどん魅力的になってきていると思います。特に今作は、登場人物も多く、年代の幅も広いので、これまでの作品とはまた違った魅力を感じていただけるのではないでしょうか。また今作のラストのメッセージは、新海さんが今、若い人たちに一番伝えたいことなんだろうなと感じています。私自身がすごく共感するメッセージでもあるので、みなさんに伝わるといいなと思いますね。 三木陽子(みき・ようこ)/1982年生まれ。CGデザイナーとしてぱちんこメーカー勤務を経て、フリーでゲームのキャラクターデザインや彩色、背景作成などを手掛ける。『雲のむこう、約束の場所』(2004年)以来、新海作品に欠かせないスタッフの1人として活躍。 取材・構成=高瀬康司/制作:キネマ旬報社 この記事は『キネマ旬報』8月上旬号に掲載。今号では「新海誠の新たなセカイ『天気の子』」という巻頭特集をおこなった。本作で声優を務めた醍醐虎汰朗と森七菜の対談や新海監督を支えたスタッフ陣、RADWIMPS[音楽]、川村元気[プロデューサー]らに取材をおこなった。(敬称略) 『キネマ旬報』8月上旬号の詳細はこちらから↓