四方田犬彦での検索結果

人物
「四方田犬彦」を人物名に含む検索結果 1件)

記事
「四方田犬彦」の検索結果 5件)

  • 国際映画祭での華々しい実績を誇る、中国の気鋭映監督、ワン・ビン、ロウ・イエ、ジャ・ジャンクー。彼らの最新作がこの春、同時期に公開される。ワン・ビン「青春 -帰-(第2部)」「青春 -帰-(第3部)」は4/26(土)、ロウ・イエ「未完成の映画」は5/2(金)、ジャ・ジャンクー「新世紀ロマンティクス」は5/9(金)から、それぞれ上映スタート。 この3作品の公開にあわせて『キネマ旬報』電子版および4月18日発売の『キネマ旬報』5月号では、特集記事「中国映画作家3人が見た、いまの中国」を掲載している。   [caption id="attachment_49646" align="aligncenter" width="1024"] 「青春 -帰-(第2部)」© 2023 Gladys Glover - House on Fire - CS Production - ARTE France Cinéma - Les Films Fauves - Volya Films - WANG bing[/caption] 57歳のワン・ビン、60歳のロウ・イエ、54歳のジャ・ジャンクー。同世代の3人は改革開放後の中国、極端な格差社会が広がり表現が厳しく規制されている故国を、カメラの目でどのように見ているのか。 「青春」によって「一つの場所、一つの時代が浮かび上がる」とワン・ビンは主張する。「未完成の映画」が中国で公開される可能性はまったくないロウ・イエは、「この映画を完成させること自体が一つの成果だと考えられます。残るのは何か、私には分かりません」と嘆息する。そして「新世紀の最初の21年間を振り返ってみた」ジャ・ジャンクーは「どれだけ多くのことが忘れ去られたのか」気づいたそうだ。 それぞれのやり方で現代中国と向き合っている彼らの映画を、本特集では3人の映画のプロ、四方田犬彦、川口敦子、晏妮が批評している。 [caption id="attachment_49647" align="aligncenter" width="1024"] 「青春 -帰-(第3部)」 © 2023 Gladys Glover - House on Fire - CS Production - ARTE France Cinéma - Les Films Fauves - Volya Films - WANG bing[/caption] ワン・ビン「青春」は中国・織里(しょくり)で働く少年少女の群像を記録したドキュメンタリー。今回上映される第2部、第3部と2024年4月に公開された「青春 -春-」を合わせると、上映時間は実に9時間53分に及ぶ。思わずひるんでしまう程の超長尺だが、四方田犬彦は「(ワン・ビンは)ランズマンの「SHOAHショア」(ナチスによるホロコーストの全容に関係者の証言のみで迫ろうとした、全篇9時間27分の超大作。映画史における偉大な達成のひとつ)をいかにして乗り越えるかという問題意識から出発」していることを強調。「映画的持続こそが映画体験の本質であると考える作家の作品」と大絶賛する。そして川口敦子は「ただただ見続けることで、国と人、歴史的現在へのしぶとい批評の目を浮上させてしまう」ワン・ビンの映画力を称える。そして上海出身の晏妮は「止まることなく、一作ごとに目覚ましく進化していく」ワン・ビンの映像革新に目をみはっている。   [caption id="attachment_49648" align="aligncenter" width="1024"] 「未完成の映画」© Essential Films & YingFilms Pte. Ltd.[/caption] 新型コロナウイルスの感染爆発によって滞在先の武漢のホテルに閉じ込められた撮影クルーと俳優たちを、ドキュメンタリータッチで描いたロウ・イエ「未完成の映画」を四方田は「虚構と現実の間にはもはや境界などとうに消滅してしまったという残酷な認識を観客と共有しようと試みている」と評する。川口は「歴史的現在の切り取り方を断行する、その挑発性にロウの自恃が透けて見える」、晏妮は「国内でタブーとされたコロナ期間を真正面から「記録した」本作は、映画とはなにかを再考させる貴重な一本に違いない」と、その勇気を称えている。   [caption id="attachment_49649" align="aligncenter" width="1024"] 「新世紀ロマンティクス」© 2024 X stream Pictures All rights reserved[/caption] 「新世紀ロマンティクス」ではチャオ・タオ、ジャ・ジャンクーの妻で彼の映画のミューズが、恋人ビンとめまぐるしく変化する街に飲み込まれ翻弄され、出逢いと別れを繰り返す。でも、時間は戻らないからとにかく、前に向かって進むしかない。その彼女のまなざしの美しさに、四方田と川口は撃たれた。「ウイルス蔓延時に顔をマスクで隠した男女が、どのように偶然の再会を果たすことができるのか。女優は目と眉と額だけで勝負をする」(四方田)「その心を意志ある沈黙で体現し、今への怒り、悲しみの先にそれでもなお前を向く覚悟を腹の底から吐き出した「はっ」のたった一言に託し切る」 四方田犬彦、川口敦子、晏妮の作品評全文は、『キネマ旬報』電子版および4月18日発売の『キネマ旬報』5月号内の特集「中国映画作家3人が見た、いまの中国」で読むことができる。 文=キネマ旬報編集部 キネマ旬報 2025年5月号 No.1962 2025年4月18日(金)発売 (雑誌コード:02991-05) 定価1320円(税込) 【詳細・購入はコチラ】 ・Amazon ・KINEJUN ONLINE SHOP
  •   巨匠マノエル・ド・オリヴェイラの没後10年に合わせ、「アブラハム渓谷 完全版」「訪問、あるいは記憶、そして告白」「絶望の日」「カニバイシュ」「夜顔」の5作(うち3作は国内劇場初公開)を4Kスキャンを施したデジタルリマスター版で上映する〈オリヴェイラ2025 没後10年 マノエル・ド・オリヴェイラ特集〉が、4月18日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国で順次開催される。 このたびオリヴェイラを敬愛する俳優の柄本佑をトークゲストに迎えた「訪問、あるいは記憶、そして告白」の先行上映会を、4月2日(水)にBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下で行うことが決定。また、アザービジュアル、著名人コメント、本予告編が到着した。     〈コメント〉 2015年4月2日。マノエル・ド・オリヴェイラ監督が亡くなられたその日僕はポルトガルにいました。 ドヌーヴ主演で新作を撮影中というデマを吹き込まれていた僕は「散歩してたら撮影現場に出会したりして」なんてちょっと本気で思ってましたが当然お会いできるわけもなく。  その後縁あって監督のお墓参りをさせていただく機会に恵まれた時監督の棺を前にして「ついにお会いできた」と興奮し、これからも作品を通じて監督とお会いし続けると確信した次第です。  4月。監督作に再会する機会があります。僕は通い詰めます。大らかで、過激で、Hなマノエル・ド・オリヴェイラ監督が僕の1番好きな映画監督です。 ──柄本佑(俳優) ゆるりと流れるドウロ河、それを見下ろす葡萄園、北部特有の重厚な屋敷、オリヴェイラ監督の私的な記憶が詰まる自邸、奇天烈な悲喜劇オペラが繰り広げられる宮殿。瞬きするのも惜しい、ポルトガルの美が詰まった作品群。 ──木下眞穂(翻訳家) 何と言うか……凄すぎる。世界のどこかにはこんなのがあったのだ。 ──黒沢清(映画監督) ※「カニバイシュ」について──著書『映画はおそろしい』(青土社、2001)所収「あまりに無茶なオペラ」より抜粋 演技はドキュメンタリー、映像と音は別物、涙はグリセリン⋯⋯、「映画とは何か」があからさまになるほどに、その謎は深まる。『アブラハム渓谷』で奈落に落ち、『カニバイシュ』で昇天すべし。伝説的傑作のつるべ打ち! ──濱口竜介(映画監督) ポルトガルは小さな国で、映画の歴史は慎ましいものです。しかし、60年代、70年代、80年代、90年代から今に至るまで、我々全てのポルトガルの映画作家は、どこかで必ず、巨峰オリヴェイラと向き合わなければなりません。 ──ペドロ・コスタ(映画監督) ※2010年7月26日にアテネ・フランセ文化センターで行われた講演「砂漠の小さな花 ポルトガル映画史について」での発言より 多くの才能ある監督たちが「新約」の物語を撮ったのに対し、オリヴェイラだけは独り、「旧約聖書」の物語を撮った。人間の原罪と愚行を見つめつつも、その彼方にある無垢と智慧を描き続けた。 ──四方田犬彦(映画・比較文学研究家)   https://www.youtube.com/watch?v=HcLIkUKumoA   提供:キングレコード 配給・宣伝:プンクテ ▶︎ マノエル・ド・オリヴェイラ特集開催。国内劇場初公開3作を含む全5作を上映
  • イタリアの巨匠マルコ・ベロッキオ監督が、1978年に起きた〈アルド・モーロ元首相誘拐事件〉の全貌を340分の一大巨編として描き出した、「夜の外側 イタリアを震撼させた55日間」。日本でもキネマ旬報ベスト・テン外国映画第8位にランクインしたこの力作が、3月14日にBlu-rayがリリースされた。 〈アルド・モーロ元首相誘拐事件〉とは、どんな事件だったのか? 題材となった〈アルド・モーロ元首相誘拐事件〉を簡単に説明しよう。1960年代と70年代にイタリアの首相を務め、その後もキリスト教民主党の主要メンバーだったアルド・モーロが、1978年3月16日に極左の武装グループ『赤い旅団』によって誘拐された。『赤い旅団』はモーロを解放する条件として、獄中にあるグループの人間十数名の釈放を要求。教皇パウロ6世はモーロ救出のために身代金を用意し、政治家たちも『赤い旅団』の要求を吞むかどうかで協議を重ねるが、統一した方向性を見出せず、誘拐から55日後、モーロはローマ市内の車の荷台で射殺体として発見された。次期大統領の呼び声も高かった彼の死は、国内外に衝撃を与えた。 イタリア国内で支持された、テレビと映画のヒット作 この事件を描いた「夜の外側」は当初、6エピソードからなるテレビシリーズとして企画されたが、2022年のカンヌ国際映画祭カンヌ・プレミア部門で上映されたのち、イタリア国内では前篇、後篇に分けて劇場公開された。その後テレビ版が国営放送RAIで放送されて高視聴率を上げ、イタリア映画界最高の栄誉である第68回ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では17部門にノミネートされ、監督賞、主演男優賞、編集賞、メイクアップ賞を受賞している。 事件の全貌を、モーロに関わったさまざまな視点から描く! 物語は躍進著しい共産党との連立政権を実現させるべく、奔走するモーロ自身にスポットを当てた最初のエピソードに始まり、彼が誘拐されてからは、モーロを父のように慕い、彼の救出作戦で陣頭指揮を執るキリスト教民主党の内務大臣コッシーガを描く第2章、旧知の友であるモーロを救うべく200億リラの身代金を用意する教皇パウロ6世の苦悩を描いた第3章、モーロの誘拐には成功したものの、彼の処遇をどうするべきかで『赤い旅団』内部の意見が対立し、心が揺れ動いていくメンバーのアドリアーナ・ファランダにスポットを当てた第4章、誘拐事件以来マスコミに囲まれながら、政府に救出を働きかけるモーロの妻エレオノーラの胸中を描いた第5章、そして悲劇的な結末へと向かう最終章と、事件を様々な人物の視点から映し出していく。エレオノーラからは家族の目からのモーロが描かれ、コッシーガによって政治家としてのモーロの姿勢がわかり、政府を通さず教皇庁独自に『赤い旅団』と交渉を行おうとするパウロ6世の行動から、彼とモーロの絆の深さをうかがわせる。おそらく人間的にも魅力のあったモーロは、なぜ殺されなければならなかったのか。彼の死に至るプロセスを、マルコ・ベロッキオ監督はリアルに描き出している。 ベロッキオ監督は1965年に監督デビューし、2021年にはカンヌ国際映画祭で名誉パルム・ドール賞を受賞するなど、イタリアを代表する巨匠。その彼は2003年にも「夜よ、こんにちは」という、今回の事件を題材にした映画を作っている。たがこの時は、誘拐事件の間に起こった『赤い旅団』の内紛を、一人のメンバーを中心に描いたものだった。今回はもっと多角的な視点から事件の全貌に迫った形で、モーロの死には『赤い旅団』側の決定だけではなく、当時の首相であるジュリオ・アンドレオッティ率いる内閣の、『赤い旅団』の要求を拒否する強固な姿勢など、政治力を持つモーロを排除しようとする、政治家たちの駆け引きが関係していることがわかってくる。 モーロの精神性に迫った、主演俳優の好演が印象的 俳優陣では、事件の被害者であるモーロを演じたファブリツィオ・ジフーニが印象的。国のトップに立つ権力者というよりも、自分の弱さや悩みもさらけ出した人間性が表現されていて、事件の結末は分かっているのに助かってほしいと思わせる魅力的な人物になっている。ファブリツィオは舞台をメインに活躍していて、2019年からモーロが誘拐・監禁中に書き残した書簡を舞台で朗読するプロジェクトを立ち上げ、その台本を元にした書籍まで出版している俳優。それだけにモーロの内面により深く入り込んで、役に挑んだことが見て取れる。 他にも政治家とマスコミに翻弄されながら夫の無事を祈るエレオノーラ役のマルゲリータ・ブイ、事件の終結から3カ月後の8月6日に病死したパウロ6世を、体力的に弱まりゆく身を持ちながら友のために献身的に尽くす教皇として見事に演じたトニ・セルヴィッロなど、俳優たちの名演が光る。勿論、キャラクターの心情にはフィクションも織り込まれているのだが、一つの事件をめぐって人は何を思い、どう行動したのかがよくわかる、まぎれもない力作。骨格は社会派ドラマだが、その中にイタリア人の愛と夢、権力と背信を映し出した見応え十分の一大巨編だ。特典映像の劇場予告編も併せて、巨匠ベロッキオの世界に浸ってほしい。 文=金澤誠 制作=キネマ旬報社 https://www.youtube.com/watch?v=newa1uA2KDs 『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』 ●3月14日(金)Blu-rayリリース ▶Blu-rayの詳細情報はこちら ●Blu-ray 価格:8,580円(税込) 【ディスク】<2枚> ★映像特典★  ・劇場予告編、メイキング ★封入特典★ ・解説ブックレット[執筆:四方田犬彦(映画誌・比較文学研修者)] ●2022年/イタリア/本編340分 ●監督・原案・脚本:マルコ・ベロッキオ ●出演:ファブリツィオ・ジフーニ、マルゲリータ・ブイ、トニ・セルヴィッロ、ファウスト・ルッソ・アレジ、ダニエーラ・マッラ、ファブリツィオ・コントリ、ジージョ・アルベルティ、ガブリエル・モンテージ、アウローラ・ペレス、ロレンツォ・ジョイエッリ、アントニオ・ピオヴァネッリ、パオロ・ピエロボン、ピエル・ジョルジョ・ベロッキオ ●発売・販売元:TCエンタテインメント 提供:ザジフィルムズ ©2022 The Apartment – Kavac Film – Arte France. All Rights Reserved.
  •   巨匠マルコ・ベロッキオがイタリアの元首相アルド・モーロの誘拐事件を題材に、フィクションを織り交ぜて壮大な人間模様を描き、第75回カンヌ国際映画祭カンヌ・プレミア部門に出品された巨編「夜の外側 イタリアを震撼させた55日間」が、8月9日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国で順次公開される。映画を構成する6エピソードよりそれぞれ印象的シーンを切り取ったポスタービジュアル6種(デザインは成瀬慧)、モーロが極左武装グループ〈赤い旅団〉に襲撃・誘拐されるシーンの映像、著名人のコメントが到着した。     1978年3月のある朝、戦後30年にわたりイタリアの政権を握ってきたキリスト教民主党の党首であり、5度の首相を経験したアルド・モーロが、極左武装グループ〈赤い旅団〉に襲撃・誘拐される──。 世界が注目したその日から55日間の真相が、アルド・モーロ自身、救出の陣頭指揮を執った内務大臣フランチェスコ・コッシーガ、モーロと旧知の教皇パウロ6世、赤い旅団メンバーのアドリアーナ・ファランダ、そしてモーロの妻エレオノーラの視点から描かれる。   https://www.youtube.com/watch?v=NyMRHQjpZ7E   〈コメント〉 この誘拐事件は良く覚えている ザ・ベストテンという番組がスタートしたその時に起きたからだ 340分という大作だ スクリーンを見詰めているうちに ふとドキュメンタリーだと錯覚してしまう 激しい動悸と暫しの思考に時を忘れる ──久米宏(フリーアナウンサー) 名作『夜よ、こんにちは』から約20年、 イタリア現代史最悪の誘拐事件に鬼才ベロッキオが再び向き合い撮り上げた超大作。 複数の登場人物の視点の交錯の果てに、何が待っているのか? 現実を土台とするフィクションの傑作。とにかく無類に面白い! ──佐々木敦(思考家) 何を過去の歴史から学んだか まるで私たちの国のざまを映した鏡ではないか。2015年、イスラエルのネタニヤフ首相との会談直後、当時の日本の首相が「テロリストとは交渉しない」と世界に公言し、まもなく人質となっていた邦人ジャーナリストが処刑された。「国家は不動でなければならぬ」。7年後、彼も自国で銃撃殺害された。過去は今・未来を考える糧だ。 ──金平茂紀(ジャーナリスト) これほど面白くていいのだろうか。 思わず戸惑うほどに面白い。 かつて実際に起きた悲劇を中心に据え、外側からの視線によってつくられた複数のドラマ。 1話、2話と進むうち、政治家たちの醜悪な顔とともに、人間の弱さ、狡さがこれでもかと炙り出される。 その仰々しく空虚なラストに呆然とする。 ──月永理絵(ライター、編集者) 監禁現場の外側に冷戦下のどすぐろい政治的現実がうごめく。その埒外で、人間どうしの憐れみの回復を求め、降りかかった受難を拒みつつも引き受ける、魂のうずきの実在感に震撼する。ベロッキオのライフワークたる、イタリア現代史シリーズの高峰をなす傑作! ──後藤岳史(映画ライター、編集者) スクリーンに釘付けになる緊迫の5時間半! そこに映し出されるのは「過去の歴史的大事件」ではなく、まぎれもなく現代へと続くベロッキオ監督の熱く静かな怒りと抵抗だ。 ──中村由紀子(Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下 番組編成) マルコ・ベロッキオの演出は、海千山千の政治家だろうが、武装した革命家だろうが、ローマ教皇でさえ一人のか弱い人間へと引きずり降ろす。タブーをものともしないその自在な剛腕が、再びイタリア史の《闇夜》に風穴を開けた。 ──岡田秀則(フィルムアーキビスト/国立映画アーカイブ主任研究員) 「こんな時にムッソリーニがいれば」 事態はぐらぐらと左右に傾き 彼らの顔色はだんだん悪くなっていく。 宗教にも、政治にも、組織にも ずるずる羽交い絞めにされて 彼らの表情はごりごり固まっていく。 私たちはその顔を見逃がさない。 映画は顔だ! やっぱり「映画は顔だ!」。 ──宮崎祐治(キネマ旬報連載「映画は顔だ!」イラストレーター) 虚実の境を確かな足どりで、しかし大いに揺れながら進む6時間。現実の出来事だから結果は知っているにも関わらず、この息詰まる面白さはなんだろう? サスペンスフルな画は美しくつつましやか。現実の不条理を見つめるその眼差しには、ベロッキオの業が色濃く滲んでいた。 ──銀粉蝶(俳優) いまだに謎が残る、イタリアのモーロ元首相誘拐事件。 人間と政治が複雑に絡み合う今こそ、心揺さぶる映像と物語を通して、「歴史」を学ぼうじゃないか。 ──竹田ダニエル(ライター・研究者) 1978年。ひとりの政治家の誘拐と殺人。 ローマ教皇から、全ての政党と家族を巻き込む。 いやイタリア中を揺るがす、政治における権力闘争と金。 マフィアの暗躍、更に大きな力が介入したかも。夜の闇と内と外。 マルコ・ベロッキオの情熱と理性が、我らの心に火をつける。 ──秦早穂子(映画評論家) これは悪と背信の叙事詩である。また愛と期待のメロドラマでもある。ベロッキオはつねに家庭と権力、夢と解放を描いてきた。要するに、イタリアのすべてを描いてきたといえる。 ──四方田犬彦(映画誌・比較文学研究家)   「夜の外側 イタリアを震撼させた55日間」 監督・原案・脚本:マルコ・ベロッキオ 原案:ジョヴァンニ・ビアンコーニ、ニコラ・ルズアルディ 原案・脚本:ステファノ・ビセス 脚本:ルドヴィカ・ランポルディ、ダヴィデ・セリーノ 撮影監督:フランチェスコ・ディ・ジャコモ 編集:フランチェスカ・カルヴェッリ 美術:アンドレア・カストリーナ 衣装:ダリア・カルヴェッリ 録音:ガエターノ・カリート 音楽:ファビオ・マッシモ・カポグロッソ 製作:ロレンツォ・ミエーリ、シモーネ・ガットーニ 出演:ファブリツィオ・ジフーニ、マルゲリータ・ブイ、トニ・セルヴィッロ、ファウスト・ルッソ・アレジ、ダニエーラ・マッラ 2022年/イタリア/イタリア語・英語/340分/カラー/1.85:1/5.1ch 原題:Esterno notte 英題:Exterior, Night 字幕翻訳:岡本太郎 映倫:区分G 後援:イタリア大使館 特別協力:イタリア文化会館 配給:ザジフィルムズ ©2022 The Apartment – Kavac Film – Arte France. All Rights Reserved. 公式サイト:https://www.zaziefilms.com/yorusoto
  •   巨匠マルコ・ベロッキオが、ユダヤ人少年エドガルド・モルターラを教会が連れ去ったという衝撃の実話を映画化。2023年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、ナストロ・ダルジェント賞で作品賞をはじめ7部門を受賞した「エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命」が、4月26日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、T・ジョイPRINCE品川ほかで全国公開される。青年期のエドガルドを演じたレオナルド・マルテーゼのメッセージ映像、著名人のコメントが到着した。   https://www.youtube.com/watch?v=WAzLyB3QOz4   〈コメント〉 幼少期に家族のもとから連れ去られ、信仰や人格を変容させられたエドガルド。取り戻そうとする家族と青年になったエドガルドとの確執は、植え付けられた信仰を巡る宗教カルトからの脱会トラブルを想起させる。幸せな家族を引き裂いたものの正体を描いた問題作。 ──鈴木エイト(ジャーナリスト・作家) 洗礼という儀式にすぎない行為が幼い子供とその家族の人生を歪ませていく物語。 観る人によっては混乱や怒りを覚えるかもしれません。 さらに残酷なのはその子供が宗教上の駒にされていく様です。 考え方次第で狂気が正義となってしまう現実を思い知らされる作品です。 ──惣領冬実(漫画家) 「あなたは神父となり、ローマ教会に人生を捧げるのだ」。時は 1858年。教皇法は「絶対もの」。ヘブライ人、7歳のエドガルド君に対しても。紡がれるのは宗教と世俗的な権力に汚された親の絶念、子供の無垢さ、親子思いの不撓不屈の物語だ。神の掟は母の涙の目前でさえ屈しないものなのか?魅惑的だが、残酷なイタリアを舞台にした夢中にさせる拉致事件。最後のフレームまで胸を膨らませる。 ──パントーフランチェスコ(慶應義塾大学病院精神神経科教室、精神科医) ユダヤ教徒だったナザレのイエスは、ユダヤ教を内部改革しようとしてユダヤ教守旧派の企みで処刑された。その後にイエスの弟子たちが広めたキリスト教は西欧社会の精神的インフラとなり、イエスを殺害したユダヤ人への差別や迫害はさらに激しくなった。この前提を知らないと現在の宗教地図が理解できなくなる。世俗と聖性、心の支えだけど危険。本作では信仰の二面性がこれでもかとばかりに描かれる。際どいテーマだ。正面から挑んだマルコ・ベロッキオの胆力には驚嘆する。 ──森達也(映画監督) ベロッキオはつねに社会に対し異議を唱えてきた監督である。子供が監禁され、母親が狂気へ向かう。いたるところに暴力がある。この世界は病気であり、歴史とは母親の悲しみなのだ。だが母親と違う神を信じるにいたった息子の悲しみを、誰が知ることだろう。 ──四方田犬彦(映画誌・比較文学) ある家族が強引に離ればなれにされ、永遠に引き裂かれてしまう悲劇の物語を丁寧に描きながら、同時に教会権力の衰退とイタリアという国の誕生につながる壮大な歴史をも見せてくる。このミクロとマクロを同時に描く離れ業こそ、ベロッキオ監督作品の醍醐味だ。 ──壺屋めり(イタリア美術史研究者) 約150年前の誘拐事件を描く本作は現代にも通じる多くの課題を突きつけている。信仰をめぐる戦争とカルト教団による洗脳は現在も続いているからだ。それに加えて、子どもの人格形成や親子のつながりとは何かという重い問いは見る者を揺さぶるに違いない。 ──信田さよ子(原宿カウンセリングセンター顧問・公認心理師)     Story 1858年、ボローニャのユダヤ人街で、教皇が派遣した兵士たちがモルターラ家に押し入る。何者かに洗礼を授かったとされる7歳の息子エドガルドをキリスト教徒として養育するため、連れ去りに来たのだ。取り乱したモルターラ夫妻は、息子を取り戻そうとあらゆる手を尽くす。そして世論と国際的なユダヤ人社会に支えられ、その闘いは政治的な局面へ突入。しかし教会とローマ教皇は揺らいだ権力を強化するため、エドガルドの返還に応じようとしなかった……。   © IBC MOVIE / KAVAC FILM / AD VITAM PRODUCTION / MATCH FACTORY PRODUCTIONS (2023) 配給:ファインフィルムズ ▶︎ マルコ・ベロッキオが衝撃の誘拐事件を映画化「エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命」

今日は映画何の日?

注目記事