エディ・マーフィが 久々の主演作で魅せる“ 深み”
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- 2020年05月18日
配信ムービー・ピックアップ・レビューその1
「ルディ・レイ・ムーア」
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エディ・マーフィが久々に主演作で魅せる”深み”
1970年代のロサンゼルス。 40代になってもいっこうに芽が出ないR&B歌手のルディ・ レイ・ムーアは、ホームレスの老人が喋るホラ話をパクってクラブで披露したところ 大ウケ。“ドールマイト”というペルソナを演じるスタンダップ・コメディアンとして人気を博すようになる。
自主製作の漫談アルバムもヒットして生活が安定してきたルディだったが、 彼には夢があった。カンフーで悪党を退治するピンプ(ポン引き)を描いたアクション映画に主演することだ!スポンサーがいなければ自腹で撮影すればいい。 口八丁で仲間たちを巻き込んだルディは、 一世一代の賭けに打ってでるのだが......。
エディ・マーフィ久々の主演作は実在の黒人コメディアン、ルディ・レイ・ムーアの伝記映画となった。ルディと異なり20歳そこそこでスターになったエディだが、脂が抜けて冴えない中年役が似合うように。
「こんな歳だけど一花咲かせたい」というルディに、第一線に返り咲きたいという自分の想いを投影した深みのある演技を披露してくれる。
そんなエディの復帰に、クリス・ロックや ウェズリー・スナイプス、マイク・エップスと いった友人たちに加えて、クレインやキーガン=マイケル・キー、タイタス・ バージェスといった今ノッてる中堅も参戦。黒人コメディアンたちからエディがいかにリスペクトされているかを痛感させられる。
脚本を手掛けたのは、「ラリー・フリント」(96)や「マン・オン・ザ・ムーン」(99)など、 奇人の伝記映画を作らせたら右に出る者がないスコット・アレクサンダーとラリー・カラゼウスキーのコンビ。劇中でスナイプス扮する実在の俳優ダーヴィル・マーティンがルディに「俺が『ローズマリーの赤ちゃん』で共演したジョン・カサヴェテスも私財を投じて映画を作った。お前も諦めるな」と励ますシーンは、彼らの出世作「エド・ウッド」 (94)における主人公とオーソン・ウェルズ の邂逅シーンの粋な本歌取りになっている。
監督は、「ハッスル&フロウ」(05)や「ブラック・スネーク・モーン」(06)で知られる鬼才クレイグ・ブリュワー。「フットルース 夢に向かって」(11)以来、長篇映画を撮れないでいた彼だが、泥臭くブルージーな作風は健在だ(白人だなんて到底信じられない )。 なおブリュワーの手腕を評価したエディは、今年公開予定「星の王子 ニューヨークへ行く」(88)の続篇の監督にブリュワーを指名している。
文=長谷川町蔵