映画好きなら見逃せない! 今見てほしいこの3本!! —ベテラン俳優による コメディ映画を堪能する

 

今月はコメディ3作品をピックアップする。シリーズ全5作品が一挙に放送される『プロゴルファー織部金次郎』(93〜98)は武田鉄矢が原作・脚本・主演と、第2作から第5作までの監督も担当した人情喜劇。プロゴルファーで17年間1勝もしていない織部金次郎が、下町の仲間の人情に包まれながら、勝利を目指していく。と言ってもこれはサクセスストーリーではなく、ギックリ腰になったり、トーナメントへの出場資金が底をついたりと毎回アクシデントが襲い、織部はなかなか勝利が摑めない。その勝者ではなく敗者の悪戦苦闘ぶりに、観客はもちろん、下町の仲間たちも心を動かされるコメディだ。また第1作には、霊になって試合中の織部を応援する大滝秀治扮するやくざの組長が登場し、スポーツものの枠をはみ出たファンタジーの色合いもある。出演者は金次郎の恋人・桜子に財前直見、彼女の兄に阿部寛、金次郎に肩入れするゲイバーの男に平田満(第3作からはコロッケ)など顔ぶれがバラエティに富んでいて、第2作からは堀内孝雄が毎回違った役でちょっと顔を出すなど、遊び心溢れるキャスティングも魅力だ。

「俺ら東京さ行ぐだ」(85)は、その後「釣りバカ日誌」シリーズをヒットさせる、栗山富夫の監督第2作。吉幾三が歌った同名ヒット曲をモチーフに、東京で働く息子の様子を見に田舎からやって来た、両親の3日間を描いている。公開当時の話題は、東京でカメラマン助手として働く息子役の新藤栄作とその恋人役の柏原芳恵。新藤は前年にNHK連続テレビ小説『心はいつもラムネ色』(84)の主演に抜擢されて注目を浴びた新人だったし、柏原はアイドルから女優へとシフトする途上にあった。その二人の初々しい演技も見ものだが、やはり映画としては植木等、林美智子に注目したい。二人はせっかく田舎から出てきたのに、仕事が忙しくて会うこともままならない息子の状況を心配して、田舎に連れ戻そうとする両親を演じている。特に植木は、同年に公開された「乱」(85)と「新・喜びも悲しみも幾年月」(86)で演技派俳優として脚光を浴びた時期。それだけにちょっと「東京物語」(53)の笠智衆を思わせる設定の父親を、味わい深く表現している。他にタクシーの運転手と本人役で、吉幾三も登場する。

 

「最高殊勲夫人」(59)は、増村保造監督によるホームコメディ。ある商事会社の営業部長と秘書が結婚し、これが同じ家のカップルとしては二組目で、二つの家には一人ずつ弟と妹が残っている。長女はこの際トリプルプレイで二人を結婚させようと画策し、当人の川口浩と若尾文子もやがて互いを意識していく。若尾文子のキュートな魅力が全開で、ハイテンポな川口とのセリフの掛け合いも絶妙。増村監督と脚本の白坂依志夫コンビが、「巨人と玩具」(58)に続いて放ったラブコメディの快作である。また若尾文子主演のコメディでは、吉村公三郎監督による「婚期」( 61)(6/19 [水] 夜8時)も登場。こちらでは京マチ子扮する兄の妻と、彼女をいびる若尾と野添ひとみの妹二人の戦いを軽やかに描いている。どちらも若尾文子のコメディエンヌとしての凄さが実感できる逸品だ。

 

文=金澤誠 制作=キネマ旬報社
(「キネマ旬報」2024年6月号より転載)

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※よる8銀座シネマは『一番身近な映画館』、土曜ゴールデンシアターは『魂をゆさぶる映画』をコンセプトにノーカット、完全無料で年間300本以上の映画を放送。

6/5[水] 夜8時
「プロゴルファー織部金次郎2 パーでいいんだ」
監督:武田鉄矢
出演:武田鉄矢、財前直見、阿部寛ほか
© 2005「織金2」製作委員会

■6/16[日] 昼12時6分
「俺ら東京さ行ぐだ」
監督:栗山富夫
出演:新藤栄作、柏原芳恵、植木等、吉幾三ほか
© 1985 松竹株式会社

6/18[火] 夜8時
「最高殊勲夫人」 
監督:増村保造
出演:若尾文子、川口浩、船越英二、近藤美恵子ほか
© 1959 角川映画

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