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略歴 / Brief history
【演劇界から映画界へ、3打数3安打のオスカー候補者】イギリス、ドーセット州の生まれ。シェフィールド大学を卒業後、シェフィールド・クルーシブル・シアターに入り舞台演出家となる。これまでに100本以上の舞台を手がけ、メトロ・シアター・カンパニー、ゲート・シアター、ロイヤル・コート・シアターの芸術監督を歴任。ロイヤル・ナショナル・シアターでの『夜の来訪者』(92)と『Machinal』(93)の演出によりローレンス・オリヴィエ賞を2年連続で受賞し、前者のブロードウェイ公演では1994年のトニー賞も獲得した。BBCテレビ、ラジオなどでも演出や製作手がけたのち、98年には初の短編映画「Eight」を発表して、翌99年のイギリス・アカデミー賞の短編映画賞にノミネートされる。2000年、シェフィールド時代からの知り合いであったリー・ホールが脚本を執筆した「リトル・ダンサー」で、長編監督デビュー。この処女作で、いきなり米アカデミー賞の監督賞を含む3部門にノミネートされたほか世界各国で40以上の賞に輝き、映画界で一躍その名を馳せる。この高評価を受け、ピュリッツァー賞を受賞したマイケル・カニンガムの小説を映画化する「めぐりあう時間たち」(02)の監督に抜擢され、この第2作も前作以上となるアカデミー賞9部門にノミネート。続く、ドイツのベルンハルト・シュリンクが95年に発表した『朗読者』の映画化「愛を読むひと」(08)は当初、映画化権を持っていたアンソニー・ミンゲラが監督する予定だったが、原作に惚れ込んだダルドリーの説得もあってミンゲラはプロデュースに回り、アカデミー賞主要5部門の候補となった。映画界で活躍する傍ら演劇活動にも情熱を注ぎ、02年にはオックスフォード大学セント・キャサリンズ・カレッジで現代演劇の客員教授をつとめた。【演劇・映画・文学を柔軟に行き交う】サム・メンデスと並び、イギリス演劇界から映画界に進出して双方で活躍する演出家のひとり。長編デビュー作の「リトル・ダンサー」から3作続けてアカデミー賞の監督賞・作品賞の候補となる快挙を得る。自身はまだ無冠であるが、役者たちから最高の演技を引き出し、「めぐりあう時間たち」のニコール・キッドマン、「愛を読むひと」のケイト・ウィンスレットにオスカーをもたらしている。「リトル・ダンサー」で見出したジェイミー・ベルは、現在も俳優として活躍中。文学を映像化する手腕も冴えており、「めぐりあう時間たち」「愛を読むひと」では脚本家のデイヴィッド・ヘアとコンビを組む。前者ではそれぞれに進行する3つの時代をリズムよく見せたうえ、映画ならではの表現でそれらをクライマックスで巧みに凝縮させた。後者では主人公の語りで年代順に進む原作を一旦解体し、ナレーションを省いて再構築した。09年には、自身の「リトル・ダンサー」をミュージカルに翻案した『ビリー・エリオット』の演出によりトニー賞を受賞。演劇・映画・文学を自在に飛び回ることで、新たな息吹を与えながら作品を生み出し続けている。
スティーヴン・ダルドリーの関連作品 / Related Work
作品情報を見る
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ビリー・エリオット ミュージカルライブ リトル・ダンサー
制作年: 2014映画「リトル・ダンサー」をベースにしたミュージカル公演は、2005年にロンドンでスタート。これまで5大陸で1000万人以上の観客を動員してきたこの公演の中から、2014年9月28日に世界各国にライブ配信したものが劇場で上映される。監督を務めるのは、オリジナル映画版と同じスティーヴン・ダルドリー。90点 -
トラッシュ! この街が輝く日まで
制作年: 2014「リトル・ダンサー」「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」のスティーヴン・ダルドリー監督が、「ラブ・アクチュアリー」「アバウト・タイム~愛おしい時間について~」の監督としても知られる脚本家リチャード・カーティスと組み、世間から見放された少年たちが世界を揺るがすような秘密が隠された財布をめぐり起こした奇跡を描いた冒険譚。オーディションで選ばれた3人の少年たちが躍動感あふれる生き生きとした演技を見せるほか、少年たちを優しく導く神父を「地獄の黙示録」のマーティン・シーンが、彼らに母親のように親身に接する女性を「ドラゴン・タトゥーの女」のルーニー・マーラが演じている。90点 -
ナショナル・シアター・ライヴ 2015 「スカイライト」
制作年: 2014イギリス国立劇場ロイヤル・ナショナル・シアターが、世界で上演された全ての舞台の中から特に注目に値する演目だけを選び、映画館で上映するプロジェクト“ナショナル・シアター・ライヴ”。収録した内容に手を加えず、劇場の臨場感そのままに味わえるよう制作されている。2015年シーズンの第4弾となる本作では、ローレンス・オリヴィエ賞に輝いた名匠デヴィッド・ヘアーの戯曲を、「リトル・ダンサー」のスティーヴン・ダルドリーが演出した3人芝居を収録。「17歳の肖像」のキャリー・マリガンと「アバウト・タイム~愛おしい時間について~」のビル・ナイがかつて不倫関係にあった二人に扮し、キャリーは舞台上で実際に調理しながら演技をしている。100点 -
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
制作年: 2011ジョナサン・サフラン・フォアの小説を「愛を読むひと」のスティーブン・ダルドリー監督が映画化。9.11同時多発テロで父を亡くした少年が、父の最後のメッセージを探すためニューヨークを駆け巡る様を描く。出演は、本作がデビューとなるトーマス・ホーン、「天使と悪魔」のトム・ハンクス、「しあわせの隠れ場所」のサンドラ・ブロック。82点 -
ナショナル・シアター・ライヴ 2014 「ザ・オーディエンス」
制作年: 2011イギリス演劇界の最高峰ロイヤル・ナショナル・シアターの舞台を映像化した“ナショナル・シアター・ライヴ”第3弾。「クィーン」でアカデミー賞主演女優賞を受賞したヘレン・ミレンが再びエリザベス2世に扮し、本来一般人には見る事のできない女王と国の歴代の総理大臣たちとの謁見を舞台に繰り広げるドラマ劇。エリザベス2世を描かせたら天下一のピーター・モーガンが脚本を手掛け、監督は「リトルダンサー」、「めぐり逢う時間」などの名匠スティーヴン・ダルドリー。