“ヌーヴェル・ヴァーグの正統な後継者” クロード・ミレールの4作をHDリマスター版で上映する〈生誕80周年記念 クロード・ミレール映画祭〉が、9月23日(金・祝)より新宿シネマカリテ、角川シネマ有楽町ほかで全国順次開催。予告編が到着した。

 

 

〈映画が好きだった。映画狂だった。イングマール・ベルイマンとアルフレッド・ヒッチコックは特に好きだった。何度も何度も繰り返し観た。若きトリュフォーのようにすべてのシーンを暗記していた。いつも行きつけの映画館の案内嬢とは顔見知りにさえなった。彼にとって若き日々とは映画館の暗闇だった。〉と、映画評論家の梅本洋一氏がその人物像を語ったミレール(「見えない距離を踏破する―クロード・ミレールについて」季刊リュミエール21985―冬[筑摩書房]より)。

予告編では「なまいきシャルロット」の主題歌であるリッキ・エ・ポーヴェリ『Sarà perché ti amo』に乗せてシャルロット・ゲンズブールのさまざまな表情が切り取られ、またリノ・ヴァンチュラ、ミシェル・セロー、ロミー・シュナイダー、ロマーヌ・ボーランジェ、セシル・ドゥ・フランス、リュディヴィーヌ・サニエ、マチュー・アマルリックらも映し出される。

 

本特集に際して、映画批評家の須藤健太郎氏がコメントを寄せた。

クロード・ミレールはいつも「想像力」のあり方を問うてきた。主人公はつねに妄想を膨らませ、物語を紡ぐ。今回上映される4作品はその典型だろう。「勾留」の刑事も、「なまいきシャルロット」の少女も、「伴奏者」のピアニストも、「ある秘密」の語り手も、みな想像界の住人だ。しかし、空想は現実の対義語とは限らない。噓は真実を隠すのではない。扮装が本来の姿を示すこともある。セクシュアリティに焦点が当てられるのは、そこで身体とファンタスムとが交錯するからだ。クロード・ミレールの映画を見るときに試されるのは、われわれの想像力である。現実を、自分のありのままの欲望を見つめるには、想像力の鍛錬が必要なのだ。
──須藤健太郎(映画批評家)

 

〈上映作品〉

「なまいきシャルロット」(原題:L’EFFRONTEE)1985年/フランス/98分

「この町を出て自由になりたい」。反抗期真っ只中の少女は、町にやってきた同じ歳の天才ピアニストと出会い、外の世界を夢見る。カーソン・マッカラーズの小説『結婚式のメンバー』をもとに、多感で繊細な少女のひと夏を描いた思春期映画の傑作。本作でデビューしたシャルロット・ゲンズブールは、史上最年少の14歳でセザール賞新人女優賞を受賞。思春期特有のコンプレックスや苛立ちを抱える少女を瑞々しく好演した。

〈1986年セザール賞助演女優賞・新人女優賞/1985年ルイ・デリュック賞受賞〉
監督・脚本:クロード・ミレール
脚本:リュック・ベロー、ベルナール・ストラ、アニー・ミレール
撮影:ドミニク・シャピュイ
出演:シャルロット・ゲンズブール、ジャン=クロード・ブリアリ、ベルナデット・ラフォン
© TF1 FILMS PRODUCTION – MONTHYON FILMS – FRANCE 2 CINEMA

 

「勾留」(原題:GARDE A VUE)1981年/フランス/84分 ★日本劇場初公開

大晦日の夜、幼女連続レイプ殺人の容疑をかけられた公証人。決定的な証拠が見つからない中、彼が犯人だと信じて疑わない刑事は尋問を続けるが、事態は思わぬ方向へ……。リノ・ヴァンチュラ、ミシェル・セロー、ロミー・シュナイダーら名優が織りなす緊迫感あふれるサスペンス。セローはセザール賞主演男優賞を受賞。2000年に「アンダー・サスピション」としてリメイク。

〈1982年セザール賞主演男優・編集・助演男優・脚本賞/1981年モントリオール世界映画祭最優秀脚本賞受賞〉
監督・脚本:クロード・ミレール
脚本:ジャン・エルマン 台詞:ミシェル・オーディアール 撮影:ブリュノ・ニュイッテン
出演:リノ・ヴァンチュラ、ミシェル・セロー、ロミー・シュナイダー、ギイ・マルシャン
©1981 - TF1 FILMS PRODUCTIONS - TF1 DROITS AUDIOVISUELS

 

「伴奏者」(原題:L' ACCOMPAGNATRICE)1992年/フランス/110分

第二次大戦時、ドイツ占領下のパリで世界的オペラ歌手の伴奏者となった貧しい20歳のピアニスト。彼女はオペラ歌手への羨望と嫉妬を胸に秘めながらも仕事に励むが、時代は彼女たちに人生の選択を迫り……。大人になる寸前の女性の複雑な心の揺らぎを、大きな時代のうねりの中に描いた愛憎劇。原作はニーナ・ベルベーロワの同名小説。

〈1993年イスタンブール国際映画祭国際批評家連盟(FIPRESCI)賞・審査員特別賞/1993年ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞受賞〉
監督・脚本:クロード・ミレール
脚本:リュック・ベロー 撮影:イヴ・アレグロ
出演:ロマーヌ・ボーランジェ、リシャール・ボーランジェ、エレナ・サフォノヴァ、サミュエル・ラバルト、ベルナール・ヴェルレー
©1992 STUDIO CANAL - France 3 Cinéma

 

「ある秘密」(原題:UN SECRET)2007年/107分/フランス

あるユダヤ人家族。父親の愛情を感じられない病弱な少年は、両親に隠し事があると疑っている。第二次大戦を生き抜いた両親の秘密が、過去と現在を往来して紐解かれていく。フィリップ・グランベールの自伝的小説を原作とする、ミレール晩年期の最高傑作と評される重厚な人間ドラマ。セシル・ドゥ・フランス、リュディヴィーヌ・サニエ、マチュー・アマルリックら当時の若手実力派が顔を揃えた。

〈2008年セザール賞助演女優賞/2007年モントリオール世界映画祭最優秀作品賞/2008年ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞受賞〉
監督・脚本:クロード・ミレール
脚本:ナタリー・カルテル 撮影:ジェラール・ド・バティスタ
出演:セシル・ドゥ・フランス、リュディヴィーヌ・サニエ、マチュー・アマルリック
© UGC YM – FRANCE 3 CINEMA – INTEGRAL FILM
photo:Thierry Valletoux

 

公式サイト:https://claudemiller80.com/
主催・配給:ノーム

▶︎ 〈クロード・ミレール映画祭〉開催、「なまいきシャルロット」「勾留」などをHDリマスター版で!

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