封印されてきた伝説的レゲエ・ムービー「バビロン」、著名人コメント到着
- バビロン , フランコ・ロッソ , ブリンズリー・フォード , デニス・ボーヴェル , アスワド
- 2022年10月03日
1980年代のロンドンを舞台に、レゲエのリズムを支えに人種差別や偏見と闘う若者たちを描き、その衝撃的な内容から世界的に公開が見送られてきた「バビロン」(80)が、10月7日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほかで全国順次公開。著名人のコメントが到着した。
コメントは以下(50音順)。
杏レラト(黒人映画歴史家)
心を打たれる熱い余韻を与えてくれるエンディング。最強の高揚感だ。そこにたどり着くまでに描かれるのは、個性豊かな群像劇が語る青春、サウンドシステムを魅力的に奏でるブリンズリー・フォードのレゲエ、クリス・メンゲスのカメラが捉えた80年代サッチャー時代の社会派物語──、これら全てが新進気鋭の若手たちにより、94分にギュッと凝縮されている。ブルの心の叫びは、未来である今でも通用するもので、われわれの魂に響き続けるだろう。なぜ今までこの作品を知らなかったのか、それが一番の悔しさである。もっと早くに出会いたかった。
工藤 BigH 晴康(REGGAE / DUB club OPEN 店主“校長”)
アズワドの初来日は1984年。場所は後楽園ホール。その時のインタビューで、ブリンズレー・フォードが「バビロン」という映画で主演していることを知った。80年代初期のロンドンのサウンド・システム・カルチャー、そこに自らのアイデンティティを求めるカリブからの移民二世たちの物語、と言われても、理解するまでにかなりの時間がかかった。やがてサウンド・トラック盤がリリースされ、収録曲の多くがアズワドやデニス・ボヴェルによるものと判明。どうしても見たい、見なければならない映画として、日本での公開をレゲエ・ファンはずっと待ち望んでいたのだ。
約40年を経て、ついに日本初公開が決定されたちょうどその頃、ドラミー・ゼブの訃報が舞い込む。そして世界が混迷を続ける中、このタイミングでの公開が大きな意味を持つ映画だと思う。
Chozen Lee(レゲエアーティスト)
“ASWAD”の“Hey Jah Children”のベースラインから始まるストーリーは全編通してReggaeが鳴り響く。Dennis Bovellによるサウンド作りが素晴らしい。サウンドシステムカルチャーにフォーカスしながらもメッセージをしっかり伝えられる映画。
内容には触れられないが、ヘビーだった。時代が変われば常識も変わる。今私たちはかつての時代に生きてはいない。当たり前のようにあったここまで酷い差別を受けたこともなければ、したこともない。ただ、差別は今でもどの国にもある。憎しみから憎しみは簡単に生まれるし、伝染して広まるのも容易。世代を超えて受け継いでいくにはあまりに悲しい。忘れるのではなく、許すことが出来れば、憎しみを愛にフリップさせることは出来るのではないか。
観終わってしばらく考え込んだ。そこまで考えさせられる映画はそうない。話は戻るが、劇中ずっと音楽が素晴らしいので、是非劇場で観てほしい! 座ってるのが煩わしいほど、立ち観で揺れながら観たい映画。
ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
1980年のロンドン、すでに移民2世によるブリティッシュ・レゲェが確立された時期でしたが、それでもジャマイカ系の若者たちは日常的に根深い差別に直面しながら生活していたのです。サウンド・システムのDJとして活動する主人公とその仲間の非常に現実的な物語、すべてロケで撮影されたロンドンの風景、デニス・ボーヴェルのゴキゲンなサウンドトラック、見どころが多い力作です。
吉岡正晴(音楽ジャーナリスト/DJ)
DJにとってサウンド・システムは、もっとも重要な機材。7インチのレコードも、競い合って入手し、他の誰もがかけないような、そしてグッドなリズム、ヴァイヴをもった作品をかけるという点において、最大の武器。そんなDJやイヴェント主催者を軸に、1970年代後期のイギリス・ロンドンの移民居住地域におけるさまざまなあつれき、人種同士のぶつかり合いなどを描く音楽・カルチャー・作品。
当時のDJカルチャー、レゲエ・カルチャーの粗野で尖がって熱々しい熱気にあふれた空気が描かれた必見作がいよいよ40年の封印を解かれ日本上陸。
Rankin Taxi(レゲエ・ディージェイ)
異文化異人種に酷な南ロンドンで暴発しちゃうジャマイカ移民の悲しい物語り。女王の国葬観ましたか?横目でTV眺めてたけど兵隊さんたちが可愛い制服でたくさんいたけどアフリカン・ブラッドがいなくて「あーあ」と感じたのです。ラグビー・チームにはいるのにね。
遡ること60年前に独立したジャマイカからイギリスに移住した人々(の2世)のツラい話しです(1980年あたり)サウンドシステム鳴らして仲間とガンジャ吸って揺れて騒いで約束の地アフリカを切実に夢想して楽しんでただけなのに……その切実さが伝わってきました。
Warrior Chargeで踊るとき、ジャマイカとは違うテンションの高さが「オッ」 うまくいかないことばかりで暴力暴発しちゃうところ、後ろから羽交い締めして止めてくれる仲間が必要だよな、とか。暴力を排して理解と寛容の社会を築くのがどれだけ困難な世界か痛いほど今な話しです。
〈トークイベント開催〉
場所:ヒューマントラストシネマ渋谷
日時:10/7(金)18:45の回上映後
登壇者(予定):石井志津男さん(音楽プロデューサー)、石田昌隆さん(フォトグラファー)
Story
サウス・ロンドンに住む青年ブルーは、白人たちの度重なる嫌がらせに耐えながら、昼は整備士として働き、夜は仲間たちと結成したユニット〈アイタル・ライオン〉のDJとして活動している。街に居場所はないが、力強いレゲエのリズムこそが彼らのアイデンティティであり、音楽活動の拠点であるガレージだけがメンバーにとって唯一の“楽園”だった。サウンドシステム競技を勝ち抜き、強敵ジャー・シャカとの決勝戦を前に意気揚々とする彼らだったが、ある日、大切なガレージが何者かに荒らされ、ブルーはついに怒りを爆発させる……。
© 1980 National Film Trustee Company Ltd
配給:マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム
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