チェコスロバキア最後の女性死刑囚を描く「私、オルガ・ヘプナロヴァー」
- 私、オルガ・ヘプナロヴァー , トマーシュ・ヴァインレプ , ペトル・カズダ , アダム・スィコラ , ミハリナ・オルシャニスカ , マリカ・ソポスカー , マルタ・マズレク , クラーラ・メリーシコヴァー , マルチン・ペフラート
- 2023年01月09日
23歳で絞首刑となったチェコスロバキア最後の女性死刑囚を描いた「私、オルガ・ヘプナロヴァー」が、4月29日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。ティザービジュアルとティザー予告が到着した。
銀行員の父と歯科医の母のもと、裕福な家庭に育ったオルガ・ヘプナロヴァーは、1973年7月10日、首都プラハで路面電車を待つ群衆へトラックで突っ込む。この事故で8人が死亡、12人が負傷した。
犯行前にオルガは新聞社に声明文を送っており、動機は自身を傷つけた人々と社会への復讐だと記している。両親の無関心と虐待、社会からの疎外といじめで追い込まれ、性的指向に悩む自らを「性的障害者」と呼んだ彼女は、酒とタバコに溺れ、女たちと次々に肌を重ねた。そして苦悩と疎外感を抱えたまま、精神状態を悪化させていった──。「復讐」を決行した彼女は、反省の色を見せることなく、1975年3月12日に処刑された。
原作本『Já, Olga Hepnarová』を、これが初長編となる新鋭トマーシュ・ヴァインレプとペトル・カズダ両監督がリアリスティックなタッチで映像化した本作。撮影監督に「エッセンシャル・キリング」の名手アダム・スィコラを迎え、7年を費やして完成させた。2016年ベルリン国際映画祭パノラマ部門でオープニングを飾り、2017年にはカルトの巨匠ジョン・ウォーターズ監督が年間ベスト映画の一本に挙げている。
オルガを演じたポーランドの若手実力派女優ミハリナ・オルシャニスカ(「ゆれる人魚」「マチルダ禁断の恋」)は、チェコ・アカデミー賞主演女優賞に輝いた。端正な容姿でオルガを虜にするイトカ役には、チェコのマリカ・ソポスカー。女友達のアレナ役には、「ゆれる人魚」でミハリナと姉妹役で共演したポーランドのマルタ・マズレク。さらに、我が子に嫌気が差している母親をチェコの名優クララ・メリスコバ、オルガが事件前に一緒に過ごすおしゃべりで酒好きな中年男ミラをチェコの重鎮マルティン・ペシュラットが演じている。
受賞歴
チェコ・アカデミー(チェコ・ライオン)賞2017 主演女優賞、助演女優賞、最優秀ポスター賞受賞
ミンスク国際映画祭2016 主演女優賞、監督賞受賞
ソフィア国際映画祭2016 監督賞受賞
サン・イン・ア・ネット・アワードスロバキア2017 監督賞受賞
タルコフスキー映画祭ゼルカロ2016 批評家賞受賞
ヴィルニュス国際映画祭2016 作品賞受賞
アートフィルム・フェスティバル2016最優秀女優賞
レビュー
何よりも「女性大量殺人犯」というキーワードが効いている。チャールズ・マンソン、バッファロー・ビル、女性を殺害することを好む無数の映画的サイコパス、そしてアンネシュ・ベーリング・ブレイビクとノルウェーの休暇島での狂気の行為など。しかし、映画も歴史も、多くの大量殺人犯や連続殺人犯、女性の連続殺人犯を知らなかった。この女性は誰なのか、なぜ罪を犯すに至ったのか、どこで人生が狂い始めたのか。この映画はそれを教えてくれる。
──Epd film
ミハリナ・オルシャニスカの演技、妖艶な存在感、神経質そうな目は、見るものを魅了し、彼女の強引さは、「少女ムシェット」、「イダ」、「ワンダ」といったほかの女性映画のそれを思い起こさせるものだった。
──Film de culte
生きる術を知らなかった......人間に滅ぼされた人間。
──Premiere
みんなの憎しみの対象に選ばれたオルガ。彼女の存在は時限爆弾だ。
──Variety
オルガは、怒りと虚無感に満ちたアウトサイダーであり、「タクシードライバー」のトラヴィス・ビクルのような精神異常行動をとる。大義のない凶悪犯。彼女は歩く絶望のようなものだった。
──The Hollywood Reporter
彼女のオルガ・ヘプナロヴァーは、(殺人的な)社会主義リアリズムのソースで更新・修正した「狂ったナタリー・ポートマン」のようなものとして我々の心に永遠に留まり続けることだろう。
──The Village Voice
完全に嫌われ者のキャラクターだが、カメラは彼女を見るのが好きだ。タバコを吸いながら、昔のフィルム・ノワールやフランスのヌーヴェルヴァーグに登場するファム・ファタールのようだ。
──Le jdd
冬枯れの白黒で撮影され、時代のディテールに富んでいるこの作品は、高い評価を受けた「イーダ」を思い起こさせるが、キャラクターとストーリーはこれ以上ないほど異なっている。「イーダ」は自分探しの旅をする女性を描いていたが、「私、オルガ・ヘプナロヴァー」は自己破滅への旅である。
──Liberation
人間にとって最も大切な感情、すなわち「愛」が欠けていて、それが彼女を殺人的な怪物にしたのだと感じた。勝者も敗者もない悲劇的で悲しい物語。
──The New York Times
フィルム・ノワールから受け継いだ図像で勝負しているのだ。レオンのナタリー・ポートマンを思わせる反乱的な髪型、「愛の嵐」のシャーロット・ランプリングを思わせる半開きのシャツなど、オルガの雰囲気は天使的でありながら毒々しくもある。
──Le Canard Enchaine
「私、オルガ・ヘプナロヴァー」
監督・脚本:トマーシュ・ヴァインレプ、ペトル・カズダ 原作:ロマン・ツィーレク
撮影:アダム・スィコラ 編集:ヴォイチェフ・フリッチ 美術:アレクサンドル・コザーク 衣装:アネタ・グルニャーコヴァー
出演:ミハリナ・オルシャニスカ、マリカ・ソポスカー、クラーラ・メリーシコヴァー、マルチン・ペフラート、マルタ・マズレク
2016年/チェコ・ポーランド・スロバキア・フランス/105分/B&W/5.1ch/1:1.85/DCP/原題:Já, Olga Hepnarová
日本語字幕:上條葉月 字幕監修:ペトル・ホリー 提供:クレプスキュール フィルム、シネマ・サクセション 配給:クレプスキュール フィルム
公式HP:http://olga.crepuscule-films.com/