主人公が“見た目は子供、頭脳は大人”と聞くと、某大人気漫画＆アニメを連想するかもしれないが、同作とは全く異なる発想で作られたオランダのSFアクション・アドベンチャー映画「キャプテン・ノバ」。タイムトラベルの副作用で少女の姿に若返ってしまった未来からやって来たヒロインが、人類を救うため奔走する本作は、本国オランダの映画祭で多数の映画賞に輝き、日本でも1月に劇場公開されたばかりだが、そのDVDレンタルが、早くも2月22日よりスタートする。（※セルは3月3日）

タイムトラベルの副作用で20歳以上若返ってしまったヒロイン

物語の舞台となるのは、乾燥して荒れ果てた2050年の地球。壊滅的な環境災害により人類滅亡の危機が迫る中、戦闘機パイロットのノバは、環境破壊の最大の起点となったあるプロジェクトを止めるため、小型AIロボットのADDと共に過去へ遡る極秘任務に挑む。小型シャトルで宇宙のワームホールを潜り抜け、目指した2025年に辿り着くが着陸に失敗。なんとかアムステルダム郊外の森の中に不時着するも、ノバは気を失う。未確認物体の墜落は近隣でも目立ってしまい救急車が迫る中、いち早く駆け付けたのは3輪バギーに乗った15歳の少年ナスだった。ADDはナスに助けを求め、ナスは困惑しながらも近くの廃工場にノバとADDを匿う。しばらくしてノバは目覚めるが、彼女はタイムトラベルの副作用で遡った約25年分若返ってしまい、12歳の姿となっていた。やがてシャトルが発見され、国防省のルフトマイヤーは王立保安隊を率いてパイロットの捜索を開始。24時間以内にある人物に会うために捕まるわけにはいかないノバと、困っている彼女を見捨てることができないナスは、ルフトマイヤーの車を奪って逃走を図る……。

ひとりの女性が時を超え、未来の地球を救おうとする本作。タイムトラベルの副作用で若返ってしまった主人公のノバは、見た目は12歳の少女だが、中身は大人という状況の中、偶然出会った少年の力を借りて、極秘任務を果たそうと奮闘する。その過程では、オランダ国防省の王立保安隊の包囲網を潜り抜ける逃走劇や、ノバとナスを助けてくれる優しい老夫婦との出会い、荒唐無稽なノバの話を信じてくれたナスとの信頼関係なども交え、時にハラハラドキドキ、時にハートウォーミングな物語がオランダ・アムステルダムの美しい自然の中で展開する。

日本人にも親しみやすい設定のジュブナイルSF

監督は、チーフ監督を務めたオランダのTVシリーズで、国際エミー賞キッズ部門のキッズ・シリーズ賞を受賞しているモーリス・トルーボルスト。本作も、世界最大級の子ども向け映画・メディアの祭典であるアムステルダム開催の2021年シネキッド映画祭で最優秀長編映画賞など4部門を受賞したほか、オランダ映画祭、チルドレン・キノフェス、ブマ・ミュージック・イン・モーションなどの映画祭でも受賞やノミネートが相次ぎ、オランダ国内で高い評価を受けた。また、プロダクションデザイナーをNetflix作品「私の親友、アンネ・フランク」（21）のバーバラ・ウェストラが務め、オランダの一流スタッフによって制作されている。

荒廃した未来の地球を救うため過去に遡るという設定は、「ターミネーター」シリーズを連想させるかもしれないが、待ち受ける過酷な未来は環境破壊によるものだし、AIは仲間として描かれる。ノバとナスは武器を持った相手にも立ち向かうことになるが、ノバの持つ武器は撃たれた人物の動きを遅くするというもので血生臭さはなく、「ターミネーター」とは異なる展開を見せていく。また、オランダ映画なので全く影響は受けておらず物語も全く違うが、外見は少女で頭脳は大人というノバの設定は『名探偵コナン』のようだし、未来からノバを過去に送り出した人物こそノバが過去で探す人物で、遡った過去には過去のノバ自身も存在しているというタイムパラドックスは『ドラえもん』のようでもあり、日本人には親しみやすい設定といえる。ノバの相棒の小型AIロボットADDの存在も、SF性とユーモアを感じさせる。

中味は大人ながら少女となったヒロインと少年が、SF的設定の中で冒険を繰り広げるアクション・アドベンチャーの物語は、まさにジュブナイルSF。古い話だが70年代にNHKで放送されていた『少年ドラマシリーズ』のような味わいもあり、少年少女がワクワクして見ることができるはずだ。環境破壊への警鐘など現代的なSDGsのメッセージも込められており、子供と一緒に家族で安心して観られるファミリー映画としてお薦めしたい。

文＝天本伸一郎　制作＝キネマ旬報社