ホームレスが問う尊厳。俊英ジュン・リー監督 × フランシス・ン主演「香港の流れ者たち」

 

香港の下町・深水埗(シャムスイポー)で2012年に起きた《通州街ホームレス荷物強制撤去事件》をもとに、俊英ジュン・リー監督がホームレスたちの過酷な運命を描き、2021年台湾アカデミー賞(金馬奨)や2022年香港アカデミー賞(金像奨)を席巻した社会派ヒューマンドラマ「香港の流れ者たち」が、12月16日(土)よりユーロスペースほかで全国順次公開。メインビジュアルと場面写真が到着した。

 

 

再開発に伴うホームレス排除を軸に、移民や貧困、薬物などさまざまな社会問題を浮き彫りにし、人間の尊厳を問いかける本作。キャストには「エグザイル/絆」のフランシス・ンをはじめ、ツェー・クワンホウ、ロレッタ・リー、特別出演のセシリア・イップといったベテランから、セシリア・チョイ、ウィル・オー、チュー・パクホンら若手まで、オールスターが集結した。

 

 

 

ジュン・リー監督コメント
深水埗のホームレスを初めて取材したのは、まだ大学生の頃だった。彼らは翡翠市場の前で野宿していた。同じテーブルに座って語り合い、彼らが今まで癒されたことのない心の傷、忘れられない痛みを抱えていることを知った。
その後、僕は一時香港を離れていたが、再び彼らを訪ねた時、木造の家はさらに密集し、囲いは高くなり、様々な人が行き来していた。部外者の僕が彼らと接触するのはますます難しくなっていた。僕は外部の要因によるその地域の激変ぶりを、あらゆる善意と敵意を含めて書き留めることにした。
多くの人は僕がこの映画を撮ることを知って、聞いてくる。彼らはなぜ路上で生活することになったか、ホームレスたちにはどんな過去があったかと。
この映画について、僕はそうした質問に答える必要がないと思う。なぜなら僕は彼らを非難したり、同情したりするつもりはないからだ。僕が関心を持っているのは、彼らの「現在」の生活と状態だ。彼らがどこから来て何をしたかに関係なく、自分の尊厳のために戦う権利があり、人間として扱われ、尊重されるべきだと信じている。

 

 

 

Story
出所して雑多かつ陰鬱な街・深水埗へ戻ったファイ。ラムじいがくれたクスリをさっそくキメて、皿洗いのチャン、ヤク中のダイセン、車椅子のランといったホームレス仲間と再会し、再び高架下で暮らし始める。ところがある晩、通告なしに現れた食物環境衛生署の職員により、住処も身分証明書も奪われてしまう。
新人ソーシャルワーカーのホーは、ファイたちのために裁判を起こし、政府に賠償と謝罪を要求。さらにベトナム難民であるラムじいの家族探しを手伝い、ファイの健康を心配して通院を勧めるなど、できる限りのサポートをしていく。
ファイはハーモニカを吹く失語症の青年に出会い、〈モク〉と名づける。一緒に小屋を建て、心を通わせる二人。建設中のマンションに忍び込み、見下ろした夜の街には、生活の息吹を感じさせる光の海が広がっていた。ファイはモクに静かに語りかける。
「深水埗は貧乏人が住む町だ。高級マンションを建てて、貧乏人はどこへ行く?」
政府から賠償金として2000香港ドルずつ受け取れることになり、喜ぶダイセンたち。ファイだけが、謝罪なしの賠償金は受け入れないと拒絶する。そして仲間たちは散り散りになり、ファイはひとり高架下に残る。彼らは冬を越せるのか……。

 

「香港の流れ者たち」

出演:フランシス・ン(吳鎮宇)、ツェー・クワンホウ(謝君豪)、ロレッタ・リー(李麗珍)、セシリア・チョイ(蔡思韵)、チュー・パクホン(朱栢康)、ベイビー・ボウ(寶珮如)、ウィル・オー(柯煒林)
監督:ジュン・リー(李駿碩)
プロデューサー:マニー・マン(文佩卿) 脚本:ジュン・リー(李駿碩) 撮影:レオン・ミンカイ(梁銘佳)/HKSC 美術・衣裳:アルバート・プーン(潘燚森) 編集:ヘイワード・マック(麥曦茵)、ジュン・リー(李駿碩) 音楽:ウォン・ヒンヤン(黃衍仁) サウンドデザイン:サイラス・タン(鄧學麟)
日本語字幕:小木曽三希子 宣伝デザイン:阿部宏史
配給:cinema drifters・大福 宣伝:大福
原題:濁水漂流 英題:Drifting
2021/香港/カラー/DCP/5.1ch/112分
©mm2 Studios Hong Kong
公式サイト:https://hknagaremono.wixsite.com/official