写真家ナン・ゴールディンの闘争の記録。ヴェネチア映画祭金獅子賞「美と殺戮のすべて」

 

1970〜80年代にドラッグカルチャー、ゲイカルチャー、ポストパンク/ニューウェーブシーンなど過激と言われた対象を撮影し、一躍時代の寵児となった写真家ナン・ゴールディン。2023年にはイギリスの現代美術雑誌ArtReviewが“アート界で最も影響力のある人物”の1位に選出するなど、今日まで世界にインパクトを与えてきた。

そんなゴールディンの闘争を捉え、第79回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いたドキュメンタリー「美と殺戮のすべて」が、3月29日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、グランドシネマサンシャイン池袋ほかで全国公開される。メインビジュアルと写真が到着した。

 

 

2018年3月10日、ゴールディンは仲間たちとニューヨークのメトロポリタン美術館を訪れる。自作の展示や鑑賞のためではない。目的の展示スペースは、製薬会社を営む大富豪が多額を寄付したことでその名を冠された〈サックラー・ウィング〉。そこで彼女たちは〈オキシコンチン〉というラベルが貼られた薬品の容器を一斉に放り始めた。「サックラー家は人殺しの一族だ!」と声を上げながら……。

 

 

オキシコンチンはオピオイド鎮痛薬の一種であり、全米で50万人以上が死亡する原因になったとされる《合法的な麻薬》だ。ゴールディンはなぜ、巨大な資本家と戦う決意をしたのか。大切な人々との出会いと別れなど、アーティストである前に一人の人間として彼女が歩んできた道のりが明かされる。

 

 

監督は「シチズンフォー スノーデンの暴露」のローラ・ポイトラス。メインビジュアルには、ゴールディンが1978年にロンドンで撮影したセルフ・ポートレイトが使用されている。絶望を抱えながらもアートで世界を変えようとする切実な闘争に注目したい。

 

 

「美と殺戮のすべて」

監督・製作:ローラ・ポイトラス
出演・写真&スライドショー・製作:ナン・ゴールディン
2022年/アメリカ/英語/121分/16:9/5.1ch/字幕翻訳:北村広子
原題:ALL THE BEAUTY AND THE BLOODSHED/R15+/配給:クロックワークス
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公式サイト:https://klockworx-v.com/atbatb/