世代も境遇も違う男女三人×ネコ三匹の共同生活を描く「三日月とネコ」

「第1回anan猫マンガ大賞」で大賞を受賞したウオズミアミの漫画を実写化した映画「三日月とネコ」が、5月24日(金)から全国公開される。2016年4月に発生した熊本地震をきっかけに出会い、愛猫と共に共同生活をすることになった男女三人の“普通じゃない”けど、愛おしい日々を描き出す。

2023年に芸歴40年を迎えたベテラン俳優の安達祐実が書店員の灯(あかり)を、NHK連続テレビ小説「ウェルかめ」の倉科カナが精神科医の鹿乃子を、「ブラックナイトパレード」や「わたしの幸せな結婚」などに出演する渡邊圭祐がアパレルショップ店員の仁をそれぞれ等身大の魅力で好演。杉咲花主演作「市子」の脚本を務めた上村奈帆が、本作で商業映画の監督デビューを果たした。Homecomingsが書き下ろした主題歌「Moon Shaped」が物語に優しく寄り添う珠玉のヒューマン・ドラマだ。

 

もっふもふのネコが見つめる迷えるオトナ3人の日々

書店員の灯(44歳)と精神科医の鹿乃子(34歳)、“彼氏”と別れたばかりのアパレルショップ店員の仁(29歳)。性格も年齢もバラバラな三人の唯一の共通点は、ネコが好きということ。彼らは、それぞれ人生に不安を抱えながらも、お互いの苦手分野を補い合いながら暮らしている。夜に一緒にお菓子を食べながらTVドラマの続きを観たり、みんなの愛猫ミカヅキと一緒にそのままリビングで雑魚寝したり、フーとギーという二匹の保護ネコを迎え入れたり…。大きな事件は起きないけど、穏やかで何物にも代えがたい日々が過ぎていく。

そんな中、灯は「料理好き」という共通の趣味を持つ編集者の長浜一生(山中崇)に惹かれ、鹿乃子は推しの小説家・網田すみ江(小林聡美)と出会い、仁は客として訪れた牛丸つぐみ(石川瑠華)という不思議な魅力を持つ女性に一目惚れする。それぞれの新たな出会いが、三人の共同生活を少しずつ変えていく。果たして彼らが最後に選んだ“幸せのカタチ”とは……?

 

いつだって人生は“満ちる途中”

いくら歳を重ねても経験を積んでも、灯たちのように迷いながら生きているオトナは多いことだろう。本作には、そんな迷えるオトナたちの心をふっと軽くしてくれる名言がたくさん登場する。例えば、鹿乃子が夜空にぼうっと浮かぶ月を見上げながら言う「欠けているんじゃない、満ちる途中。きっと、人生なんてずーっとその繰り返しだと思うの」。

いつも何かが足りないと感じ、誰にも認められていないような孤独を感じる。でも、そう感じているのは自分だけじゃないかもしれない。いや、きっとそうだ。もっと肩の力を抜いて、ありのままの自分で生きたっていい。「チョウよ花よと自分を褒めそやすの。この世界を生きていく上でとても有意義なことよ」と、小説家の網田が言うように、もっともっと自分を甘やかして生きていこう。幸せのカタチは人それぞれ違っていい。そんなシンプルなメッセージは、生きづらさを感じながら日々を消化してばかりの現代人の心にきっと響くことだろう。

また、そんな人間たちを傍でそっと見守り続けるネコも本作には欠かせない存在だ。「ネコは孤独を埋めない。人に愛されて去っていくだけ」という灯のセリフには、家で一匹のネコと暮らしている筆者も深く頷いてしまった。ただただ、かわいい。気持ちが落ちている時もそうじゃない時も、家に帰ればいつでも会える存在がいるのは、思いのほか心強いものだ。

さらに、“飯テロ”とも言うべきおいしそうな料理の数々も忘れてはならない。ローストビーフにパエリア、餃子にからし蓮根、トマト鍋…灯が同居人のために作る料理は目にも鮮やかで否が応でも食欲を刺激する。心も身体も満たしてくれるたくさんの料理と、気の置けない仲間たち+ネコ。そんな幸せなひと時を、「三日月とネコ」でぜひ堪能してみてほしい。

 

文=原真利子 制作=キネマ旬報社

「三日月とネコ」
5月24日(金)より全国にて公開

2024年/日本/112分  


脚本・監督:上村奈帆 
原作:「三日月とネコ」ウオズミアミ(集英社マーガレットコミックス刊) 
主題歌:Homecomings「Moon Shaped」(PONY CANYON / IRORI Records)


出演:安達祐実、倉科カナ、渡邊圭祐
山中崇、石川瑠華
柾木玲弥、日高七海、小島藤子、川上麻衣子(特別出演)
小林聡美

配給:ギグリーボックス
©2024映画「三日月とネコ」製作委員会 ©ウオズミアミ/集英社
公式HP:https://mikazuki-movie.com/

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