大自然の脅威に挑む男たちが熱い中国時代劇!硬派な本格大河ドラマ『康熙帝~大河を統べる王~』

そろそろ硬派な中国時代劇が見たいという、歴史ファン必見の大河ドラマ『康熙帝~大河を統べる王~』DVD-BOX2が2024年7月3日にリリース。描かれるのは氾濫をくり返す悠久の大河に挑む“治水”という難事業。胸キュンロマンスも天下の覇権を巡る大戦もないが、治水事業が地味だなんて思ったらとんでもない! 清の第4代康熙帝と、彼のもとで黄河の治水に取り組んだ、靳輔と陳潢という実在した男たちによる、超骨太な人間ドラマが熱い、近年稀にみる傑作。BOX1のストーリーをおさらいしながら、BOX2の見どころを紹介。そして8月リリース予定のBOX3への期待を膨らませていこう。

中国史上最高の名君と讃えられる清の第4代康熙帝の功績を影で支えた男たち

舞台は康熙帝15年。8歳で即位した康熙帝は、成長し、ようやく親政を開始するが、満州族の清はいまだ中国統一を果たせていなかった。南には呉三桂や鄭成功といった明の遺臣たちが抵抗勢力として残っており、内では大臣たちの権力争いや、官吏たちの汚職が横行するという内憂外患の状態。そんな康熙帝にとって最大の悩みの種が黄河の氾濫だった。

全長5464キロメートルもある黄河は、有史以来たびたび氾濫をくり返し、一度の洪水で数百キロも流れを変え、清の時代にはもっと南を流れていたという。一度洪水が起きれば、流域に暮らす人々の生活に大打撃を与えるが、川の流れが運ぶ土砂によって肥沃な農地が形成される恵みの川でもあり、歴代為政者にとって黄河の治水は至上命題なのだ。

そんな黄河の治水法に革新をもたらしたのが、靳輔と陳潢の2人。彼らが康熙帝直々に治水事業を任されたものの、汚職官僚たちから妨害を受けるというのがBOX1までの大筋。

BOX2では、汚職官僚の更迭に成功するも、まだまだ問題は山積み。康熙帝は呉三桂らによる三藩の乱や、鄭成功が立て籠もった台湾の鎮圧に心を砕くが、そこでも黄河が問題となる。南方に兵を送るにも兵糧を送るにも黄河を渡らなければならないが、氾濫によって思うように進まない。一方で漢族である靳輔と陳潢を快く思わない勢力は、わずかなミスでも2人を追い落とそうと陰謀を巡らせ、2人を重用する康熙帝にも非難の声が及ぶ。窮地に陥った靳輔と陳潢を守るべく後方支援する康熙帝と、治水工事にまい進しながら数々の問題に立ち向かう2人。治水事業は、中国統一という大事業の足がかりになっていくが、黄河は人々の思惑など関係なく、再び大洪水を引き起こす。


時にコミカルながらも水面下での攻防に緊迫する絶妙なキャスト

『王女未央-BIOU-』のルオ・ジン演じる康熙帝は、治水事業の他にも難題を抱えながら、着実に名君へと成長していく。そんなルオ・ジンと『鶴唳華亭~Legend of Love~』で父子役だったホァン・チーチョン演じる靳輔は、陳潢の才能を活かすべく教え導き、自分のことよりも治水の成功を優先。元バレエダンサーで映画『少年の君』などに出演していた新鋭イン・ファンは、「河神の転生者」と自称し、皇帝を前にしても自分の主張を曲げない治水の天才児・陳潢を精悍に演じる。

そんな3者の絆に亀裂を生じさせるのが宮廷の権力争い。康熙帝の重臣として史書にも名の残る索額図と納蘭明珠は、康熙帝の腹心として鎬を削るライバル。リャン・グァンホアとゴン・レイというベテラン俳優2人による、康熙帝を前にしてのかけあいは一見コミカル。しかし、権力強化のために索額図が靳輔たちを排除しようとすれば、納蘭明珠は援助する。治水事業を進めるには皇帝以外からの支持も必要なため、靳輔と陳潢は図らずも宮中の政争に巻き込まれていく。

また、陳潢と義兄弟の契りを交わしたルー・スーユー演じる高子奇と、ジャオ・チー演じる徐乾学の関係の変化にも注目。3人一緒に科挙を受けながら、唯一受かった徐乾学は索額図に操られ、才能を期待されながら落第した高子奇は、上手に立ち回って康熙帝の側近に収まる。同じく科挙に落第しながら、変わらず治水のことしか考えない陳潢と、組織に取り込まれてしまった2人とのすれ違いがもどかしくやるせない。

どうなる黄河の治水と康熙帝の中国統一。BOX3まで待てない気になる今後の展開

本作の魅力のひとつが、登場人物たちの複雑な人物像。工事費を横領するような汚職官吏であっても、家庭では良き夫・良き父親で、自分の既得権益や地位を守るために靳輔と陳潢に敵対する。立場や環境の違いで善にも悪にもなり得るという、人間の持つ弱さや葛藤もしっかり描いているのがポイント。中でも靳輔のライバルとなる于振甲は、母親思いで汚職や腐敗を嫌う真面目な官吏だ。ただ、都に護送される靳輔の清廉さを認めながらも、職務には絶対忠実という頑固なところがある。民を想う気持ち、治水にかける情熱は同じながら、治水の方法を巡って靳輔と陳潢と対立していってしまう。やがて、于振甲の頑なさが、靳輔と陳潢の進む道に大きな影を落とし、康熙帝の判断をも鈍らせる。

もちろん康熙帝自身にもこうした二面性はあり、名君ではあっても聖人君子ではない。心では同情していても、統治のためには非情な命令も下さなければならない、清濁併せ持つのが皇帝という存在なのだろう。朝廷内の権力争い、于振甲と靳輔の対立、陳潢と徐乾学、高子奇ら3人の運命、そして黄河の治水事業はどうなるのか? すべての問題が決着するであろうDVD-BOX3が待ち遠しくなる。

 

文=菊池昌彦 制作=キネマ旬報社


『康熙帝~大河を統べる王~』

●DVD-BOX2
7月3日発売(レンタル同時リリース)

DVD-BOX3/Blu-ray BOX3の詳細情報はこちら


★封入特典★
・ブックレット(8P)

※DVD-BOX:全3BOX/各17,600円(税込) 

●2022年/中国/全40話
●監督:チャン・ティン(張挺)
●出演:ルオ・ジン(羅晋)、ホァン・チーチョン(黄志忠)、イン・ファン(尹昉)、シー・メイチュアン(奚美娟)、リャン・グァンホア(梁冠華)、ゴン・レイ(公磊) ほか

●発売元:ポニーキャニオン/フォーカスピクチャーズ 販売元:ポニーキャニオン
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