【BS松竹東急】映画好きなら見逃せない! 今見てほしいこの3本!! —大スターや 巨匠監督の映画に 注目!

「拝啓天皇陛下様」

今月は大スターや巨匠監督の映画に注目。劇場版第一作から今年で55年を迎える、映画シリーズ「男はつらいよ」。その主演の渥美清は、昭和を代表する喜劇俳優だった。「男はつらいよ」以降は〝寅さん〞のイメージと一体化したが、今回はそれ以前の彼の代表作を放送。野村芳太郎監督による「拝啓天皇陛下様」(63)は、孤児で無学な主人公が軍隊に入って、仲間もいればただで食事にもありつける軍隊を天国だと思い、戦争が終わりそうになると、除隊は嫌だと天皇陛下に直訴の手紙を書く喜劇。軍隊を礼賛するように見えて、根は孤独な男の哀歓を滲ませながら、戦争と人間を映し出した作品である。渥美は上官のいびりも何のその。本来過酷な軍隊生活をエンジョイする主人公に扮し、この逆説的な反戦映画を見応えのあるものにしている。好評を受けて作られた姉妹編「続・拝啓天皇陛下様」(64)、「拝啓総理大臣様」(64)も併せて放送。また渥美の主演作では、瀬川昌治監督とのコンビで彼が鉄道員を演じたコメディ「喜劇・列車」シリーズ3作品(67〜68)、「男はつらいよ」の第6作(71)と、第30作(82)も登場する。

「炎の肖像」

その第30作「男はつらいよ・花も嵐も寅次郎」に出演した沢田研二は、1960年代のザ・タイガースのボーカルを経て、71 年にソロ歌手デビューしてからは、〝ジュリー〞の愛称で70〜80年代を駆け抜けたスーパースターだった。今回は彼が単独で初主演した「炎の肖像」(74)が登場。ここで彼はロック歌手の鈴木二郎を演じているが、後半の沢田のロックコンサートのシーンを含めて、虚実を融合させた異色作になっている。〝虚〞のドラマ部分では、公開当時話題になった大胆なラブシーンをはじめ、ロック歌手のスキャンダラスなプライベートをドラマとして描き、秋吉久美子や原田美枝子が彩りを添える。藤田敏八、加藤彰の日活ロマンポルノ監督コンビが演出にあたり、音楽は井上堯之と大野克夫という豪華な布陣。時代のカリスマだった、〝ジュリー〞の魅力が詰まった一本になっている。併せて、彼がストイックで妖しいテロリストを演じた森田芳光監督の「ときめきに死す」(84)。さらに急逝した志村けんの代役として主演した、山田洋次監督による映画への愛が込められた人間ドラマ「キネマの神様」(21)も放送される。

 

「八月の狂詩曲」

巨匠の映画では、黒澤明監督の「八月の狂詩曲」(91)がお目見え。長崎で暮らすお婆ちゃんと、4人の孫たちとのひと夏の触れ合いを中心に、原爆を体験したお婆ちゃんの心情を底辺に這わせ、「生きものの記録」(55)、「夢」(90)に連なる黒澤監督の反核の想いが映し出された作品だ。村瀬幸子扮するお婆ちゃんの甥役で、リチャード・ギアも出演。そのたどたどしくも誠実さが溢れる日本語のセリフも印象的だ。黒澤作品では他に、彼の遺作となった「まあだだよ」(93)も登場。こちらは作家・随筆家の内田百閒と彼の門下生たちとの触れ合いを描いた、人間讃歌になっている。門下生のひとりを演じた所ジョージが、軽さと柔らかさを感じさせて好演。デビュー作「姿三四郎」(43)や「赤ひげ」(65)など、黒澤監督には師弟関係を描いた作品が多いが、その集大成とも言える一篇だ。

 

文=金澤誠 制作=キネマ旬報社(「キネマ旬報」2024年8月号より転載)

 

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※よる8銀座シネマは『一番身近な映画館』、土曜ゴールデンシアターは『魂をゆさぶる映画』をコンセプトにノーカット、完全無料で年間300本以上の映画を放送。

■8/9[金] 夜8時
「八月の狂詩曲」
監督:黒澤明
出演:村瀬幸子、吉岡秀隆、大寶智子、鈴木美恵、伊嵜充則、リチャード・ギア ほか
© 1991 松竹株式会社

■8/19[月] 夜8時
「拝啓天皇陛下様」
監督:野村芳太郎
出演:渥美清、長門裕之、中村メイ子、左幸子、高千穂ひづる、藤山寛美 ほか
© 1963 松竹株式会社

■8/29[木]夜8時
「炎の肖像」 
監督:藤田敏八、加藤彰
出演:沢田研二、秋吉久美子、原田美枝子 ほか


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