東京藝大映画専攻 設立20年記念イベント開催。濱口竜介・瀬田なつき両監督ほか、修了生の全72作品を上映

日比野克彦東京藝術大学学長による「20th」のキービジュアル

 

日本初の国立映画教育機関、東京藝術大学大学院映像研究科の設立20年を記念したイベントが10月13日(日)から27日(日)まで、神奈川県東京藝術大学大学院映像研究科・馬車道校舎大視聴覚室で開催される。

上映されるのは、1期から20期までの代表作といえる全72作品(オムニバス3作品含む)。濱口竜介(「ドライブ・マイ・カー」)、瀬田なつき(「違国日記」)、五十嵐耕平(「SUPER HAPPY FOREVER」)、池田千尋(「君は放課後インソムニア」)、真利子哲也(「宮本から君へ」)、清原惟(「すべての夜を思いだす」)、山本英(「熱のあとに」)他の監督作品もラインナップされている。また一般公開された修了制作作品のほか、大学院の実習などで制作された未公開作も上映される。 

 

東京藝術大学大学院映像研究科における実習風景

 
東京藝術大学大学院映像研究科は2005年4月、ユーロスペース代表の堀越謙三氏を中心に設立された。モデルにしたのは、フランスの映画教育機関国立高等映像音響芸術学校(FEMIS)。映画専攻を監督、脚本、プロデュース、撮影照明、美術、サウンドデザイン、編集の7つの領域(コース)に分類し、映画のメインスタッフを担う人材を育てようとした。映像研究科映画専攻長の筒井武文教授(編集領域)いわく、目標は「規模は小さくても撮影所として機能させること。撮影という実践のなかで、自らが目指す映画を2年間のあいだに発見すること」。その成果として監督以外にも多数の優秀なスタッフを、映画の現場に送り出してきた。

濱口竜介監督「PASSION」
瀬田なつき監督「彼方からの手紙」

本イベントの目玉といえるのは、共に2期生である濱口と瀬田が在籍した2年間の全作品を紹介する特別プログラム。10月14日(月・祝)には濱口の「遊撃」「記憶の香り」「SOLARIS」「PASSION」、10月27日(日)には瀬田の「港の話」「dark horse」「彼方からの手紙」が上映される。入試の課題として出された「差別」をテーマにわずか半日で制作した短篇作品も含まれ、トークショーも行われる。その聞き手を務めることになる前出の筒井教授は、「『悪は存在しない』『違国日記』という、2024年の日本映画で突出した作品を公開した2人の、18年前を見てほしいと思っています」と語る。「特に、彼らの撮った全テイクを上映する入試の実技課題品は、興味深く感じてもらえるのではないでしょうか。与えられた“差別”というテーマに、半日の撮影でどう取り組んだか。入試当日以来、ふたりも見ていないわけですし、緊張しているようです。この作品を見ると、どう演出するか、どうOKを出すか、彼らの映画術が伝わってくると思います(瀬田さんが俳優の動きに合わせてキャメラをパンすると、隣で撮影していた濱口くんがフレーム・インするというハプニングも起きる!)」(筒井教授) 

期間中には上映と併せてシンポジウムも開催。「教員と卒業生による座談会」には磯見俊裕教授(美術領域)、長嶌寛幸教授(サウンドデザイン領域)が参加する。
「15日間連続上映という期間は、ちょっとした映画祭の規模です。これを無謀ととるか、英断ととるかは、人さまざまでしょうが、どの日も思いがけない出会いとなる作品が揃っていることは保証します。ちょっと遠出になるかもしれませんが、馬車道でお待ちしています。お気軽に、ご来場ください」(筒井教授)
 東京藝大映画専攻 20年の歩みを振り返る、貴重な機会となるだろう。

文・制作=キネマ旬報編集部

 

東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻 設立20年記念上映会
2024年10月13日(日)~27日(日)
神奈川県 東京藝術大学大学院映像研究科・馬車道校舎大視聴覚室
料金:無料

■特別プログラム:10月14日(月・祝)濱口竜介監督作品(5作品)
「遊撃」「記憶の香り」「SOLARIS」「PASSION」
※入試三次課題作品 テーマ:差別

■特別プログラム:10月27日(日) 瀬田なつき監督作品(4作品)
「港の話」「dark horse」「彼方からの手紙」
※入試三次課題作品 テーマ:差別
◆作品ラインナップやタイムテーブルは上映会公式サイトまで。