加害者家族が背負い続ける葛藤「それでも私は Though I’m His Daughter」
- それでも私は Though I’m His Daughter , 長塚洋
- 2025年05月01日
「望むのは死刑ですか オウム“大執行”と私」の長塚洋監督がオウム真理教教祖・麻原彰晃の娘である松本麗華にカメラを向け、加害者家族として批判の目に晒されながらも懸命に生きる姿を捉えたドキュメンタリー「それでも私は Though I’m His Daughter」が、6月14日(土)より新宿K’s cinemaほか全国で順次公開される。メインビジュアルと著名人コメントが到着した。
麻原の逮捕時に麗華は12歳で、以来どこへ行っても父の名、事件の記憶、そして「お前はどう償うのか?」という問いがついて回った。「虫も殺すな」と説いた教団の信徒らによる凶行に衝撃を受け、また裁判中の父が言動に異常を来したため、彼が犯罪を命じたこともまだ受け入れ切れない。
父を治療して事実を話させてほしいと求め、識者らも賛同するが、間もなく死刑が執行される。社会が父の死を望んだと感じた麗華は打ちひしがれ、それでも人並みの生活を送ろうとするが、定職に就くことや銀行口座を作ることも拒まれる。国は麗華に対して教団の「幹部認定」をいまだ取り消さず、裁判で不当を訴えても棄却されてしまう──。
地下鉄サリン事件から今年で30年。加害者家族の葛藤の人生に目を向けたい。
〈著名人コメント〉
「麻原の娘」として生まれ、「アーチャリー」として全国に存在を知られる。
生まれてくる環境など誰も選べないのに、彼女の人生はあまりにも苦難に満ちている。
それでも、前を向いて生きる麗華さんの姿に、背筋が伸びる思いがした。
──雨宮処凛(作家・反貧困活動家)
ぼくには想像を絶する、
いつ終わるともしれぬ状況にいる彼女が
それでも懸命に生きている。
生きようとしている。
応援したい。と思った。
──田原総一朗(ジャーナリスト)
ただ1人の娘として、女性として生きたかっただろう。仕事をして恋をして、友達と笑い合う。
そんな当たり前の人生を奪われ、喪失と向き合い続けるのは被害者や被害者の家族だけではない。
──浜田敬子(ジャーナリスト・元AERA編集長)
言葉を選ぶ目元から伝わる悲しみ。穏やかに語る口元。そのギャップに胸が苦しくなる。12歳の頃からずっと、彼女の“生”は国や社会から拒絶されてきた。優しさを失わないために、何度、自分を殺したのだろうか。
──春名風花(女優・声優・アイドル)
彼女がなにした?
──村本大輔(ウーマンラッシュアワー)
彼女はとても脆い。そして圧倒的に強い。どちらかではない。どちらもある。つらいはずだ。嗚咽が聞こえる。吐息を感じる。でも彼女は前に進む。決して誇張ではなく、観ながら呼吸がうまくできなくなる。彼女がこれまで過ごした時間、現在、そしてこれからを思う。
多くの人に観てほしい。多くの人は観るべきだ。
──森達也(映画監督・作家)
〈監督メッセージ〉
「加害者家族」は事件の一方の当事者だと知っていても、その苦しみや自分の人生を生きたいという切実な願いに、私たちはどれだけ目を向けてきただろうか? 世に最も憎まれた死刑囚の親族という究極の身の上にある主人公を追いながら、ずっと自らに問い続けていた。加害者への罰を求めることはたやすいが、ではその家族にどう向き合うべきなのか。映画を通じて当事者の存在を感じ、問いを共有し、考え続けていただけたらと願う。
「それでも私は Though I’m His Daughter」
監督:長塚洋
撮影:長塚洋、木村浩之
編集:竹内由貴
整音:西島拓哉
アニメーション:竹原結
音楽:上畑正和
特別協力:「それでも私は」上映委員会
配給協力:きろくびと
製作・配給:Yo-Pro
2025年/日本/カラー/119分
©Yo-Pro
公式サイト:https://iamhisdaughter.net/