「ワンダー・アーム・ストーリー」のストーリー

マーティ・モルト(ジャド・ネルソン)は売れないスタンダップ・コメディアン、今日も今日とて場末のクラブで全く受けないギャグを恐る恐る繰り出している。親友のガス(ビル・パクストン)だけは彼の才能を高く買ってくれるが、粗暴で調子のいい男、どこまで本気か分からない。二人はゴミ収集で生計を立てながら、より良い生活を夢見ている……少なくともマーティは。そんなある日、マーティの背中に小さな突起が。藪医者スカリー(ジェームズ・カーン)は、ろくな治療もせず、高い治療費をふんだくってマーティを突き返すが、突起は見る見る内に大きくなり、やがて1本の腕となった。恋人ロザリータ(ララ・フリン・ボイル)は逃げてしまい、困惑するマーティをよそに、“第三の腕”と自分のアコーディオンを使って新しい芸ができると狂喜するガス。しかしマーティのギャグそのものが向上していない以上、芸は相変わらず受けなかった。ところが、どういうわけか芸能エージェントのクローム(ウェイン・ニュートン)だけは2人の芸を絶賛する。彼の力でテレビ出演にこじつける2人だが、そこでもう一つの奇跡が起きた。ハリウッドのスカウトマン、デルタ(ロブ・ロウ)がマーティに目をつけたのだ。夢にまで見た成功。しかしハリウッド行きの朝、目覚めて見ると、マーティの背中から“腕”は消え去っていた。ガスはマーティを裏切って、ただ1人ハリウッドに旅だって行く。失意のマーティ。恋人だったロザリータももうそばにいない。独りぼっちのマーティはとぼとぼと昔のステージに戻っていく。自分のたどった悲劇をぼそぼそと語り始めるマーティ。そこにかすかに起こる笑い。それがマーティのギャグが初めて受けた瞬間だった。