「最後の楽園」のストーリー

南太平洋の西の果て、英仏共同管理のニューヘブリデス諸島中の小島ペンテコースト。この島の男達の成人の儀式は、戦慄すべきものである。竹とツタで作られた三十五米の櫓の上から、地上すれすれに達する長さのツタを足首に結んで、男達は空中に身を投げるのである。恐怖を抱いたり、もしツタが切れたりすれば、それは死を意味する。地上で踊る女達がダイヴィングを勇気づける。そしてこれを仕とげた男だけが、妻を得ることが出来るのである。仏領トゥアモートゥ諸島は八十六のサンゴ島から成っている。住民たちは真珠貝をとって生活する。アテミはそこに住む少年である。彼は海が恐かった。これを心配した父親は、彼をカヌーに乗せて沖に出かけ、真珠貝を取る労働の苦しさや、自分の腕に鋭い歯を立てさせてとらえるウツボ漁や、六米もあるトラザメとの戦いを見せた。男達は、こうして生存のために闘っていかねばならぬのだ。アテミの心にも、いつしか生きるということの意味が解ってきた。このトゥアモートゥ諸島を西に進むと、仏領ソシエテ諸島がある。その中のある島に、若者テレイと、マエヴァという名の乙女の恋人同士がいた。島の単調さに耐えられなくなったテレイは、マエヴァの手をふりきってタヒチ島に出た。ゴーギャンの愛したタヒチ。そこで彼は鉱夫として働く。七月十四日の革命記念日がきて、白人の作った首都パペーテはカーニバルさわぎが始まる。しかし、白人の文化に毒された享楽の町は、結局彼には縁のない場所だった。一人ぼっちになった彼は、カヌーをこいで故郷に向った。マエヴァの待つなつかしい自分の島へ。彼の住む島の近くに、やはりソシエテ諸島に属する美しい島ボラ・ボラがある。漁の祭の日に婚約した若者マウルと乙女テウラの、美々しい婚約の儀式や結婚式の宴会。そして二人は手をとり合って海底に潜水する。サンゴの繁る海の底にあるティキの像に、二人はこの美しい楽園に生れた幸せを祈るのである。