「わたしのお医者さま」のストーリー

学校を出たばかりの新米医者サイモン(ダーク・ボガード)は先輩の娘を嫁におしつけられかけて閉口した。とうとう音をあげたサイモンは、貨物船ロータス号の船医になった。船員には新米のヤブ医者とみくびられ、ホッグ船長はドラ声でガナリたて、虫歯から神経衰弱まで診察するこの職場は楽ではなかった。ロータス号が南米のベロス港に入った。サイモンは仲間と一緒に上陸し、キャバレーでシャンソン歌手ヘレン(ブリジット・バルドー)を見染めた。が、ハメをはずしすぎて、その晩は豚箱泊りという始末。故国めざして帰航の途についたロータス号に、二人の船客が乗って来た。ヘレンと船会社専務の娘ミュリエルだった。女嫌いのホッグ船長は大むくれ、美人のヘレンに男ばかりの船内はどうやら荒模様。三十娘のミュリエルはホッグ船長の尻ばかり追いかけ、彼を悩ませた。ある日、船員の一人が盲腸になった。内科医のサイモンは、どうやら手術に成功した。今まで青二才と馬鹿にしていた船員たちも、彼を信頼するようになった。しかし、彼にとって一番うれしかったのはヘレンの賞讃だった。やがて二人の間には恋が芽ばえた。お医者とキャバレーの歌手という別世界の二人の前途は多難だった。一方、ホッグ船長はミュリエルの執拗さにたじたじだった。あげくの果てに酒を飲みすぎ、ウップン晴しに避難訓練をやって船内を驚かせた。おまけに階段から落ちて足を折った。ミュリエルの献身的な看護に、彼もしだいに軟化した。ロータス号がロンドンに着いた。船医をつづけるサイモンとヘレンの悲しい別れ。ひとり淋しく去って行くヘレン。その時、次の目的地での歌手に採用するという通知が、ヘレンのもとに届いた。喜びあうヘレンとサイモンは、かたくかたく抱きあうのだった。