「巌窟王(1928)」のストーリー
エルバ島に雌伏して虎視眈々たるナポレオンをめぐってフランス全土が陰謀と暗殺と復讐に血なまぐさく渦巻いた一八一五年。ファラオン丸の若い運転手エドモン・ダンテスがエルバ島に立ち寄ったのは、単に航海中死んだ船長の遺言を守ったのにすぎなかったが、平常彼の人望あるのを快く思わなかった水夫のカドルッスは彼がナポレオンから一書を託されて帰ったのを見逃しはしなかった。ダンテスを信頼していた船主のモレルは彼を次の船長に任命した。この進級は深く愛し合っているダンテスとメルセデスの結婚を早めたが、結婚の宴にあって幸福に酔っていた彼は突然乱入した捕吏に拉されて遠く孤島の土牢に幽閉される身となった。自分の罰せられる理由を発見するのに苦しんだダンテスは間もなく赦される日のあることを信じていた。が一年、二年、三年、五年--。その日はついに来なかった。絶望した彼は苦心惨憺して脱獄を計った。しかし抜け穴は同じ企ての途にあったファリア法師の牢へ通じたに過ぎない。ファリア法師は古い文献からモンテ・クリス島の秘宝の在所を知悉していたが企て半ばにして病み一切をダンテスに教えると怨みをのんで倒れた。その夜、彼は奇計を案じて遂に島を脱出した。間もなくパリに妖艶なギリシャの女エデを伴って現れ瞬く間に社交界の噂の中心となったモント・クリスト伯爵とは、モンテ・クリスト島に秘められた無限の財宝を得たエドモン・ダンテスだった。彼の超人的な努力は、自分を陥れたものがメルセデスを恋していたフェルナンと、自己の栄達のために法をまげた検事ヴィルフォールの奸策であることを探り出し、恩人モレルの子マキシミリアン中尉とヴィルフォールの娘ヴァランティーヌの悲恋を知った。しかも当時フェルナンは非道な裏切りによって莫大な富を盗みメルセデスを奪ってモルセール伯爵と名乗っており、ヴィルフォールまた検事総長の席にあって権勢をほしいままにしていたのである。復讐!復讐!敢然として奮い立ったダンテスの痛烈極まりない復讐の鉄槌は彼等の上に如何にして投げられたでうあろうか?