「青いパパイヤの香り」のストーリー

1951年、平和な時代のサイゴンの一家に下働きの使用人として、あどけない10歳の少女ムイ(リュ・マン・サン)が雇われていく。その家庭は琵琶を弾く以外、何もしない父(トラン・ゴック・トゥルン)と家計を支え布地屋を営む母(トルゥオン・チー・ロック)、社会人となった長男チェン、中学生の次男ラム、小学生の三男坊ティンに祖母、そして長年この家に仕えている年寄りの女中ティー(グエン・アン・ホア)がいる。ティンはムイに朝が来ればまず葵を採り朝食の用意を始めることを教える。ティーはまたムイにこの家の一人娘トーが父の家でしている間に病死してしまったこと、それでも愚痴一つ言わない母について話して聞かせる。ある晩、長男の友人クェン(ヴァン・ホア・ホイ)が一家を訪れ、ムイは彼にひそかなあこがれを抱く。毎日を淡々と過ごす一家に再び暗い影が押し寄せる。トーの死以来、外出することのなかった父が家の有り金を全部持って出て行ってしまったのだ。祖母は母がいたらぬせいだと責め、涙を流す母をラムは、唇を噛みしめて見ていた。母は乏しい商いで細々と生活を支えた。ある夜遅く、帰宅した父が倒れているのをティーが発見する。父は命を断ち、それから10年が経つ。長男の嫁が来て、暇を出されたムイに母は自分の娘のために用意しておいた宝石とドレスを渡す。ムイは新進作曲家で長年憧れていたクェンの家に雇われる。そして彼もいつしかモダンな恋人よりムイに引かれるようになる。パパイヤの香りと共に美しく成長したムイはクェンの子を身ごもり幸せに暮らす。