「君恋し(1929)」のストーリー

ロスアンゼルスの界隈にダムダム弾という綽名を取ったブルックスという青年拳闘家があった。彼のマネジャーはカーリー・ブルームといい二人は仲の良いわりにお互いに我儘を張合って喧嘩ばかりしていた。ブルックスはレコード屋の娘セリア・フィールヅと恋に落ち、カーリーの反対を却けて彼女と結婚しニューヨークへ赴いた。そして有名なマネジャーのマッカーシーと契約してわずか数ケ月の間に相当な拳闘家を13人もノック・アウトしてしまった。当時ニューヨークの社交界で有名なソニア・バロンドフという外国婦人に懸想されたブルックスは彼女に弄ばれるとは知らず妻のセリアを疎んずるようになった。ソニアの情夫ヴェスパーはある時宴会でブルックスを泥酔せしめ、その乱痴気振りを秘かにセリアを呼んで目撃させた。連戦連勝の結果慢心し切っている上に酒と女とに身を持ち崩している良人の様に心を痛めたセリアは思い余って田舎へ帰ろうと決心した。しかしマネジャーのマッカーシーから選手権試合が済むまで待てと勧められたのでセリアは良人の眼につかぬところに身を匿すことになった。かくて中体量世界選手権試合の当日となった。しかし挑戦者たるブルックスはこの日意気揚らず勝利は選手権保持者マホニーのものだと思われた。マッカーシーはブルックスを励ましてセリアがラジオ放送を聞きながら彼の勝利を祈っていると告げた。ブルックスはこれに力を得て後半においては奮闘を続けて遂にマホニーをノックアウトして選手権を獲得することが出来た。しかしブルックスはボクシング選手としての名誉よりも妻の愛が大切と考えボクシング界を引退してセリアの希望通り以前のマネジャーのカーリー・ブルームと共同で運動具店を開くことになった。