「火の驀走」のストーリー

平山オートショウ一座の紅一点、男勝りの妙技を示す花形野崎千恵は生れついてのオートバイ好きだが、いつしか同じ一座の花形スター佐々大二郎に心を寄せる様になっていた。東海道巡業のショーの一行が設営を開始した時、挨拶を無視したショー一行に対するいやがらせに、地元のテストドライバー達が重油をあたりにまき散らして走り去った。怒った大二郎は、オートバイで彼等を追跡し田島ドライバークラブに近づくや、正面ガラス張りの大扉をすれすれにかすめて同じく重油を叩きつけていった。折しもそこに居合わせていたオートバイ製作所の浜村社長は、大二郎の放れ業に感心し、直ちに彼を追って親しく自分の工場を案内した。田島ドライバークラブは暴力で一切を支配する悪人達の集りで、浜村も又少からぬ迷惑を受けていたのだ。彼は娘の紀子とその弟の清少年を大二郎に紹介した。愈々ショーが開始されたが、最大の呼び物は、二つの橋の中間に燃えさかる紅蓮の炎を、千恵をのせた大二郎が飛びこすという決死的な放れ業だった。しかし二人の仲を嫉妬する一座の西川は、田島にそそのかされて、大二郎の乗る車に手を入れた。それを知らずに大二郎がいつもの様にスタートして火を飛びこした瞬間、前輪は分解して四散した。ハッとした観客の前でしかし大二郎は後輪一つで見事にこの放れ業をやってのけた。だが千恵は、毎夜浜村社長の家へ行き紀子と会う大二郎に口惜しさを感じ、一方、紀子の恋人だった鹿島隆一も嫉妬に狂って大二郎を襲ったりした。様々の愛情と敵意に囲まれた大二郎も、ショー一座がこの土地を放れる前日、すべてを清算すべく四百キロのレースに栄冠をかけて挑むのであった。