「鬼姫競艶録」のストーリー

将軍吉宗と御三家筆頭の尾張城主宗春とは表面は親しかったが内心では互いに牽制し合っていた。江戸城大奥での二人の自慢話は、犬のことに及び、紀州の名犬日本丸と尾張の名犬鯱太郎を闘わせることになった。この話を聞いた尾張侯上屋敷は大騒ぎ。宗春は吉宗の手前、見得を切ったが、実は今から名犬を探さねばならなかったからだ。国表の星の巣谷に狼がいるところから宗春の娘綾姫が狼の子を求めに江戸を発つことになった。一方、吉宗は部下の馬場権蔵に尾張家の鉄砲製造の真偽を確かめさせるため、また村垣勢四郎に尾張家に鯱太郎なる犬がいるかどうかを調べさすため隠密として出発させた。星の巣谷で綾姫の一行は霧という娘から狼の子を得たが途中足を滑らし崖下に落ちた。それを通りかかった勢四郎が救った。しかし姫の一行の頭、将監は勢四郎を計って谷に落した。勢四郎は霞に救われ、旅を続けたが途中、犬神御殿の中で鉄砲が製造されているのを見た。名古屋城内では綾姫が狼の子・鯱太郎と戯れていたが父宗春は犬山城主成瀬鶴之輔と、彼と姫の婚儀を将軍が勧めていると話していた。しかし鶴之輔は名犬の勝負が済む迄はと受付けない。鶴之輔こと幻丸は、犬の勝負をめぐる両家の対立の虚に乗じ天下をとろうと企てていたのだ。彼は連発銃の詰った行李を旅芝居の品物として名古屋城下へ運ばせた。名古屋城に来た勢四郎は又十郎と変名、犬を馴らすことがうまいことから綾姫の許に住込むことができた。だが鯱太郎の訓練も終りの日、彼は姫に呼ばれ隠密であることを見破られた。そして姫の両家の確執を除こうという言葉に感激、協力を誓った。犬神御殿の正体と鶴之輔の陰謀を知った二人は、日本丸と鯱太郎対決の日、吉宗と宗春の前で一切を明らかにした。鶴之輔は捕えられた。吉宗から褒美に何でも所望せよといわれ、綾姫は勢四郎を頂きたいと述べ、やがて青空の下、二人は尾張への喜びの旅に就いた。