「海の罠」のストーリー

売り出しのカメラマン柳瀬良はモデルの品田春美を連れて海に来た。ポーズをとった春美--砕ける波間に、彼女は水死人を見た。水難事務所は色めきたった。身元不明の水死人がこれで四人つづいた。海浜ホテルのテラスに戻った柳瀬は、遥かな沖合を眺めている美しい女にふと気づき思わずカメラを構えた。シャッターを切って顔を上げたとき女の姿はなく一癖ありげな男・草壁が立っていた。柳瀬は女の写真を“真昼の憂愁”と題して週刊誌に載せた。ある日、柳瀬のスタジオに、例の女森麗子が訪れ、すきを見て柳瀬の撮った自分の写真のネガを持帰った。その後、白崎という男が訪れ、麗子の居所を問いただしたが柳瀬は言わなかった。麗子にひかれた柳瀬は麗子の別荘を訪ね彼女が外国人貿易商の妻であることを知った。真夏の太陽の下で、麗子と柳瀬は結ばれた。二人が別荘へ戻ると麗子の夫ラウルが帰ってきていた。ラウルは貿易商を表向きに、ピサロという腹心を使い、罪なきフィリピン人の両親を殺した、五人の元日本兵を次々と消していた。今までの身元不明の水死人四人は、この二人の復讐の犠牲だった。残りの一人は、麗子が柳瀬のもとから持帰った写真に一緒に写っていた草壁だった。そんなある日、麗子の前に白崎が現れた。彼は麗子の前夫で、彼女の豪奢な生活を知って恐喝に来たのだ。翌日白崎は水死体となっていた。麗子が白崎を“草壁”と偽ってラウルに告げたからだった。こうしてラウルの復讐は終った。彼は、さらに麗子の情事の相手・柳瀬を殺そうとした。柳瀬を招き、彼に毒酒を出した。麗子は隙を見てラウルの杯と柳瀬の杯を取換えた。悶絶するラウル。そのとき庭から草壁が現われた。草壁と麗子は兄妹だった。草壁は柳瀬に拳銃をつきつけた。柳瀬は草壁に飛びかかった。もみ合う二人。気がつくと死んだはずのラウルが拳銃を構えて立っていた。草壁は射殺された。このときパトカーのサイレン。ラウルは麗子を車の中に押込み、逃亡をはかった。が、運転を誤り岩壁に激突、ラウルはこと切れた。かけつけた柳瀬に麗子は、変らぬ愛を告白して息たえた。