「キムの十字架」のストーリー

朝鮮半島の慶尚北道の村で育ったジェハとセファン兄弟の一家は、日本軍によって田畑を取り上げられ、きわめて貧しい生活を送っていた。その為、勉強好きな弟セファンは学校へも行けず悲しい思いをしていた。見かねた兄ジェハは、近所の少女ヨンスーに見てもらう。やがてセファンはヨンスーの案内で教会にも通うになるのだった。ところが、日本軍のキリスト教弾圧を恐れた家族はセファンの将来を心配し、彼を山向こうの鍛冶屋へ預ける。その頃、日本軍は密かに長野県松代に十三キロメートルにもおよぶ大本営地下壕を掘るために朝鮮の人々を強制的に連れ去っていた。そしてジェハも無理矢理連れていかれ、粗末な食事の上、昼夜兼行の辛く危険な作業を強制させられ、それによって数多くの仲間が傷ついていった。やがて戦争も終わり、やっと朝鮮に帰れると思った矢先、ジェハは幼いセファンもこの松代に連れて来られていたことを知る。必死にセファンを探すジェハだったが、セファンは同胞の身がわりとなって、すでに死んでいたのだった。ジェハは朝鮮へ帰国する仲間と別れ、再び壕の中に入っていった。その中で何日も岩を刻むジェハ。それは今も松代地下壕の中に輝いているキムの十字架だった。